クロダイ 日本全国釣り行脚 （C）週刊実話
たまには過去のお話を
今回は、過去の思い出の釣行なんかを書かせていただこうかと思いまして。まぁ長い連載の中でそんな回があってもいいのではないかしらと…。もっとも、そんなに前の話というわけではありませんが。
昨年末、この連載でも書かせていただきました石川県七尾市は御祓川での夜釣りにて、順調にハゼが釣れて満足のうちに竿を納めた帰り道。道すがらに〝極めて妖しげなオーラ〟を醸し出す水路を通りました。
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幅はせいぜい5メートルほど。大きな食品工場のすぐ脇を流れる水路、というよりは完全なドブです。一般的な釣り人であれば目もくれないでしょうが、ワタクシとしては非常に惹かれるものがあります。エサも余っていることだし、試しにやってみるか…。
安物のセット竿にカレイ仕掛け、エサのアオイソメをたっぷり付けて水路に軽く投げ込みます。水深は1メートル前後で底質は予想通り軟らかめの泥底（ヘドロ？）です。
日本全国釣り行脚 （C）週刊実話
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しばらく待ってもアタリはなく、暇なのでもう1本竿を用意。こちらは胴突仕掛けで護岸の際に沈めます。やはりアタリはありません。でも、いいんです。人知れず夜のドブでアタリを待つ、この未知のドキドキがたまらんのです。
あくまで個人的 釣りへの雑感
かつて若い頃は「釣りは釣れてナンボ、釣れない釣りなんて釣りじゃない」などと鼻息の荒い頃もありましたが、オッサンになった現在、釣りはただ釣れればいいというものでもない、と思うようになりました。
むしろ、釣れなくてもいいんです。自分なりに考えて出会えたときの1尾の充実感。あるいは魚に出会えなかったときでも、自然（ドブ含む）の中で、遊びきった納得の清々しさ。時には悪天候で竿が出せなくとも、自然相手の遊びですからそれもまた一興。
昔と比べ、現在ではネットの普及により、釣り場や釣果の情報も格段に得やすくなりましたが、釣れている場所にやみくもに行って竿を出すだけでは、釣りの妙味を感じる上では、ちょっともったいないようにも思います。
そんなことを考えていると「ガシャンッ」という音とともに1本の竿が浮き、護岸の上でヤジロベエのようになりました。慌てて駆け寄り竿をつかむと、すでに魚は掛かっているようで右に左にと力強く走り回ります。
かなり力強い引きに糸を出して対応するうち、工場の照明に照らし出された魚体は長めで「スズキ？」と思うやいなや反転して再び水底へ。
