「リーダー、上に立つ者が仕事をすれば、批判があって当然だ。世の中は、常に賛否両論ある。しかし、リスクを恐れて仕事をしないというのは、最低と言わざるを得ない」
没後30年を迎えた希代の政治家、田中角栄。金権、金脈の権化、派閥政治の象徴といった批判を浴びながらも、角栄は「国民への奉仕」として政治家に絶対的な成果を求めていた。
【関連】田中角栄の事件史外伝『人生の岐路――“角栄流”乗り切り方の極意』Part7~政治評論家・小林吉弥 ほか
そんな角栄の魅力に迫り、その政治手腕と圧倒的な「人間力」を分かりやすいエピソード満載で紹介した『甦れ 田中角栄 人が動く、人を動かす 誰でも分かる「リーダー学」入門』(小社刊=定価:本体1600円+消費税)が発売された。
本書は、政治評論家・小林吉弥氏による『週刊実話』誌上の人気連載(2021年10月〜2022年10月)に加筆修正を施したもの。多くの日本人が愛してやまない天才政治家の素顔に触れながら、保守から革新、世界の要人から雪国の庶民まで、すべての人を惹きつける「角栄流」の極意が明らかになる。
「角栄節」に見る発想の豊かさ
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「意表を突く」という言葉がある。皆が当然と考えているとき、まったく違った言動で関心を惹きつけてしまう。これも、大きな発想の転換の一つと言える。
そこで「角栄節」として絶対の人気を誇った演説、スピーチ、あるいは発言の中から、そうした例証を抜粋、網羅してみることにする。思わずニコリとしてしまうもの、なるほどと感心せざるを得ないもの、例え話のうまさなど、誰もがこの「角栄節」に取り込まれてしまうのである。
「皆さんッ、新潟には雪がある。豪雪、困るねぇ。しかし、雪は水だ。水は生活の基本だ。つまり雪は資源、いや財産ということなんです!」
「東京で酔っ払って道路で寝転んでいても、パトカーが来て保護してくれる。しかし、北海道の山奥でそんなことをしていたら、熊に襲われるのがオチだ。それなのに、住民税は北海道のほうが高い。そういう格差はなくそうじゃねぇですか。
まぁ、北海道の鉄道は100年赤字だ。100年かかって赤字でも、鉄道を築いてから、たった4万の人口が560万になった。北海道から鉄道をはずしてごらんなさい。熊だけになってしまう。それが、日本列島改造計画ということなんであります」
「総理大臣には強いリーダーシップをなんていう人がいるが、そんなもんは必要ないんです。ありすぎると、かえってよくない。他人の言うことをよく聞くほうがいいんですよ。そういったことからすると、鈴木善幸クンはなかなかのもんです。鈴木クンは、じつは田中派だなんて書いてあるが、これは間違いだ。私が、鈴木派ということなんであります!」