――はい。
佐藤 ウィキペディアにもありますよ。
――現実に、この時代に存在していることが驚愕であります。では、日本の岸田首相はどうなんでしょう?
佐藤 家産国家ですよ。秘書官を務めていた彼の息子の行動を思い出してください。典型的な家産国家スタイルです。内閣が組閣されると、首相官邸の階段で記念の集合写真を撮ります。
――はい。民主主義政治の象徴的な写真です。
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佐藤 あの場所で親族と友人を集めて記念写真を撮ったんですよ。これはまさに、家産国家的な発想としか言えません。岸田政権は家産国家的な特徴を持ち、それが平気でできるのは、国家権力を私物だと思っているからです。
――それはまずいのでは……。
佐藤 自民党の派閥が政治資金で集めたものを公(おおやけ)のお金とは思わず、私物化している。今この日本で起きている得体の知れない政治資金問題は、家産国家というキーワードを入れると簡単に解けるわけです。
――確かに。だいたい二世、三世が政治家になっていますからね。
佐藤 だから、職業としての政治ではなく、家業としての政治になっているんです。
――近代政治が霧散して、中世になってしまっているのですか?
佐藤 それはそうですが、良い点もあります。物事は早く決まりますよね。
――確かに、自民党派閥はどんどん解散しています。すると、岸田首相が家産国家ならば、米国と今後も上手くやって行けるわけですか?
佐藤 バイデンさんともうまくやっています。トラさんとならばもっと上手くやっていけるかもしれません。もっとも、家長同士の相性が悪いと、急にか関係が悪化するリスクもあります。
――ロシアは家産国家なんですか?
佐藤 典型的な家産国家です。みなプーチンの家来で、公務員なんかいないじゃないですか。この前の露大統領選挙だって、対立候補だった3人をクレムリンに呼んで、プーチンとこんな会話を交わしています。
プーチン『君たちも良く戦ってくれたな』
対立候補1『国家の為に一生懸命やりました』
対立候補2『大統領をお支えしようと思ってました』
対立候補3『選挙に参加でき、大統領の応援が出来て本当に嬉しかったです』
と、会合でのこんな会話が大統領のホームページに掲載されています。
――そして支持率87%。
佐藤 さらに、『本当に民主的な選挙だからこんな3人も出られるんだ』という発言もありました。
――素晴らしい家産国家であります!
佐藤 家産国家はドイツ語だと『Patrimonialstaat』です。世襲財産の(パトリモニアル)国家(スタート)となります。
――難しそうであります。
佐藤 日本大百科全書によると、
【中世の領主国家のように、国家は領主の私的世襲財産であるとみる政治共同体。ここでは、領土や領民は領主の私有物、財政は領主の私的収入、戦争は領主の私事とみなされ、その支配は絶対的であり、領民の自由はほとんど認められない】
と説明されています。
――中世の話と思いきや、21世紀の今、まさにその家産国家が地球上を跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しています。
佐藤 昔に戻ったんです。
――しかし、それならフランス革命や産業革命、ロシア革命はなんのためにあったのでしょうか。
佐藤 だから、民主主義や平等という概念の賞味期限が切れたのかもしれません。中世領主の領民は土地に拘束された農奴ですからね。
――すると今ならば、労働者ではなく「労奴」。
佐藤 そうですね。なので、家産国家の下で皆は従い、その中で幸せに生きていきましょう、ということになります。
――労奴は嫌であります。その領主様の岸田首相は、4月10日にバイデン家産国家領主様のいる米国へ行きます。それも国賓待遇です。家と家の付き合いだからでしょうか?
佐藤 日本としてはやるべきことをやりましたからね。
――何をしたんですか?
佐藤 日本で作ったパトリオット対空ミサイルを米国に輸出しました。なので、国賓として呼んで、議会で演説もさせてくれます。
日本は払うものを払っているから、米国からの要求はありません。なので、気楽に行ってくる感じですが、タイミングがよくないと思っているかもしれないです。
――タイミングとは?
佐藤 トラさんが見ています。今は、トラさん一本でいかないといけません。
――岸田首相領主様が、米国国賓待遇、議会演説を家産国家大領主候補のトラさんがどう見ているかが一番重要なんですか?
佐藤 そうです。
――すると、岸田首相は、議会演説の後にバイデン米大統領を裏切って、トラさんに会いに行く可能性はありますか?
佐藤 それは有り得ません。というより会えません。
――今、トラさんに会える日本の政治家はいないのですか?
佐藤 いませんね。
――すると、『今トラ』になっている現状でトラさん対策を立てる術が、日本にはないのですか?
佐藤 現時点ではありません。
次回へ続く。次回の配信は2024年4月12日(金)予定です。
取材・文/小峯隆生