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オープン戦無双の鈴木誠也はまだ本当の力を見せていない?心・技・体の充実で爆発の予感漂うメジャー3年目<SLUGGER>

THE DIGEST

オープン戦無双の鈴木誠也はまだ本当の力を見せていない?心・技・体の充実で爆発の予感漂うメジャー3年目<SLUGGER>(C)THE DIGEST
 その一球は、遥か高く舞い上がり、遥か遠くまで、飛んでいった――。

【PHOTO】MLBでも打ちまくる!シカゴ・カブスで奮闘する鈴木誠也を特集!

 3月25日の月曜日(現地)、アリゾナ州メサにあるカブスのスプリング・トレーニング本拠地=スローン・パークで行われたカーディナルス戦の五回、鈴木誠也が放った打球は、左翼の芝生席中段まで飛んでいった。

 まるでホームラン・バッターのような大きな弧。まさしく、アーチ。

「結果は後からついてくるものなので、とくに気にしてないです」と試合後の鈴木。文字通り、「ムッキムキ」の身体に、精悍な表情。メジャーリーガー、Seiya Suzukiはオープン戦15試合41打席で打率.495、6本塁打、12打点はいずれもチーム最多、つまり、三冠だった。ちなみに出塁率は.512、長打率1.081。OPSは驚異の1.593である。

 ただし、彼は記録に残らぬオープン戦の成績など1ミリも気にしていない。注意を払っているのは、自分の打撃をするためのプロセスであり、そこには隙がない。

「打席に入るまでの準備とか、入り方が良いから、こういう風な結果になっているんだと思います」

 とは言え、彼も人間だ。時には打席で打つべきではなかった球に手を出して凡退し、「頭に来たんで、ホームラン狙ってた」と次の打席で強引にバットを振ってしまうこともある。それはつまり、公式戦ではしないことをできる余裕が、今年のキャンプではあった証でもある。

 もちろん前述のように、オープン戦の好調など、公式戦には何の関係もない。だが、それでも今年の彼に期待してしまうのは、昨季前半戦、71試合で打率.259、7本塁打、28打点、OPS.747と苦しみ、後半に入って一時的にスタメンを外されるなど苦境に陥ったものの、67試合で打率.319、13本塁打、46打点、OPS.938と巻き返した姿を目撃したからかも知れない。 大谷翔平(ドジャース)関連のニュースの波に飲み込まれているがゆえ、去年後半からの鈴木の爆発を知らぬ人々は、「どうなってるの? 凄いやん!」と思って当然だが、今の彼は昨季終盤、特にチームがポストシーズン争いに絡んだ9月に月間打率.370、7本塁打、26打点、OPS1.119と圧倒的な打棒を発揮した状態の、延長線上にある。 

 そして、それは自主トレーニングからキャンプ、オープン戦へと続く時の流れの中で、「今以上」を望むアスリートの宿命を背負って試行錯誤を繰り返してきた果ての、確かな結果だ。

「年々、身体自体は強くなってきているんですけど、動きの面に関して、ちょっとぎこちないと言いますか、自分が思ったように身体が動かせてないなっていう感覚があった。今年で30歳にもなりますし、いろいろトレーニングの仕方だったり、工夫して変えていってる中で、オフシーズンを過ごした。今はそれが良い形になってでてきている」

 キャンプの練習風景で際立っていたのは、守備練習にしろ、走塁練習にしろ、彼の「ふとした動き」が、昨季の公式戦のそれよりもキレがあるように見えたことだろう。明らかに足が速くなったとか、見るからに肩が強くなったということではなく、守備での動き出しや走塁における一歩、一歩が力強く、鋭く見えてしまうのである。

「去年は走塁だったり、守備の方が、自分の思った通りの動きができなかったので、もう一回、そういうところを見直さないと、試合には出られないだろうなと思っていた。打撃だけではなく、守備、走塁に関してもしっかりやらないといけないなという感じだった」

 全体練習の前後、キャンプ施設で短い距離のダッシュを繰り返したり、軸足と体幹を連動させてメディシンボールを投げるトレーニングに打ち込む彼の姿があった。練習の合間に、走塁時の上半身の使い方や、リードとスタートのタイミングを測る姿が見られたのも、彼の意識が守りや走りにあったからだろう。「キャンプに入る前に決めていたのは、しっかりプランを持った中で、一日、一日を過ごしていくことでした。トレーニングにしてもそうですし、打席の中でのやりたいことだったりとか、日々の生活という中でしっかり、(このキャンプでは)プラン通りにできたなと思うので、そこは充実していた」

 打撃では、バットの出し方を変えてみたり、構えた時のグリップの位置を変えてみたりと、さまざまな工夫を凝らしてきて、2024年型のSeiya Suzukiを構築していった。

「試合に出て、打席の中でやりたいことをやるには、どう準備していけばできるのか。試合に入る前の準備だったり、やることを工夫して日々、変えたりとかしていたんで、いろいろ勉強になった。結果までの過程っていうのを自分で想像して、体調次第でこういうことやった方が良いとかもすごく、分かったところもあったんで、シーズンに向けて、いい準備ができたかなと思います」

 今年のオープン戦で目立ったのは、実は大きく弧を描いてフェンスを越えていく打球などではなく、どん詰まりのヒットである。昨年までなら、高く上がってヒットになるチャンスのなかった打球が、程良い角度で上がって、外野手の手前に落ちるのだ。

 パワーヒッター独特の軌道と言えば軌道なのだが、ホームランを打っても、「バットを振ったら当たった」と適当に答える彼が、「あっちの方が自分の中では良い打席だった」などと答えるのだから、そこには根拠がある。

 今年から指揮を取るクレイグ・カウンセル監督は、昨季までカブスと同じナショナル・リーグ中地区のライバル、ブルワーズの監督として、鈴木を見てきた人である。キャンプ終盤、鈴木のあまりの好調ぶりに、本来は「50打席前後」という主力選手のオープン戦の打席を、鈴木については「今からそんなに頑張らなくていい」とばかりに減らした。「去年の後半、どの球団もリーグ屈指の危険な打者として彼をマークしていた。今年はもっと警戒してくるだろう。それは強打者の宿命であって、投手と打者がお互いに相手を研究し続けるのが、ベースボールってものだ」

 ナ・リーグ中地区は、ポール・ゴールドシュミット一塁手やノーラン。アレナード三塁手、日本でもお馴染みのラーズ・ヌートバー外野手に、先発マイルズ・マイコラス投手といった役者を揃えるカーディナルスが優勝候補で、対抗馬はパワーもスピードも兼ね備えた若い中心選手を揃えたレッズと、カブスが対抗馬として挙げられている。

 鈴木はオープン戦で、日本でなら「3番打者」的な役割の打順「2番」に起用されてきたが、それはカブス打線が1番の(相手が右投手なら)イアン・ハップ、(左投手なら)ニコ・ホーナー、そして鈴木の後、3番に2019年のMVPで、昨季スランプから復活を遂げたコディー・ベリンジャー、そして4番クリスチャン・モレルという上位打線の可能性を見極めるためだろう。

 上位が安定すれば、昨季は上位を打った5番に入るダンズビー・スワンソンや、ヤン・ゴームズ、マイク・トークマンの下位打線にも厚みが出来る。そうなるとカブス打線は、昨季を上回る爆発力を持つようになる。

 そして、やはりそのカギを握るのは、「2番」に入る鈴木なのだと思う。

「自分に求められているものが、打つだけとか、走りだけではないので、全部の分野でしっかりやらないといけないっていうのもある。一番は自分の身体と相談しながら、フィジカル的にもなるべく落ちないように、準備の段階っていうのは凄く大切に、今シーズンはやっていきたい」

   もしも、あなたが野球=ベースボールが好きで、大谷や他の日本人選手の活躍に感化されて、メジャーリーグに注目するようになったのなら、今季の鈴木誠也は見逃さない方がいいだろう――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO

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