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「スピン/spin」尾形龍太郎 編集長インタビュー「書き手のプラットフォームのような媒体を目指す」

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 河出書房新社が2022年9月に創刊した「スピン/spin」は、ユニークな雑誌だ。同社が創業140周年を迎える2026年をゴールとするカウントダウン企画であり、小説、エッセイなどを中心にオールジャンルをあつかう16号限定の季刊誌である。紙の専門商社・株式会社竹尾とのコラボにより、毎号、表紙と目次に異なる紙を使用し、「紙の過去・現在・未来を考える」プロジェクトも進めている。同誌は、どのように立ち上がり、なにを目指すのか。(円堂都司昭/11月8日取材・構成)

■J文学の盛り上がりの後半を経験

――尾形さんが河出書房新社に入社したのは……。

尾形:1998年に営業部の募集で入社しました。学生時代から出版社に入りたいとは思っていたんですが、編集の仕事がよくわからなかったので、むしろ好きな本を読者に届ける広報の仕事がやりたかったんです(河出は営業部に広報があります)。

――1998年というと、河出書房がJ文学をプッシュしていた時期ですよね。

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尾形:そうですね。ただ、その言葉を聞いたのは、河出に入ってからです(笑)。僕は1999年の6月に編集部に異動になりました。希望を出していたわけではなく、突然の異動でした。配属は「文藝」編集部で、当時の編集長は阿部晴政。その下で1年間、いわゆる編集雑務をこなす日々でした。それから吉田久恭、高木れい子と二人の編集長の下で編集者の基本を学びました。結局2018年末に離れるまで20年近く、ずっと「文藝」編集部にいました。

――2014年から2018年までは同誌編集長をやられて、その期間の文藝賞からは李龍徳、山下紘加、町屋良平、若竹千佐子など現在も活躍する作家たちがデビューしました。

尾形:嬉しいことですね。もちろん新人賞ですから、「文藝」という文芸誌を守ってきた歴々の編集部の尽力があってこそです。さらにいえば、作家が応募してくれたおかげなわけで、私の代でも話題となる新人作家を送り出すことができて運がよかったと思います。その時期にデビューいただいた文藝賞作家はいまでも気になり、作品を追いかけて読んでしまいますね(笑)。

 文藝賞でいえば、白岩玄さん(2004年に『野ブタ。をプロデュース』でデビュー。同時受賞は山崎ナオコーラさんの『人のセックスを笑うな』)の担当ができたことは大きな出来事でした。その後、青山七恵さん(2005年に『窓の灯』で文藝賞を受賞。2007年に『ひとり日和』で第136回芥川を受賞)や磯﨑憲一郎さん(2007年『肝心の子供』で文芸賞を受賞)を続けて担当したことで、新聞記者の方などとお会いすることが増え、文芸編集者として顔が広がっていきました。

 文藝編集部時代には、新人作家はもちろん、藤沢周さん、柳美里さん、辻原登さん、保坂和志さん、高橋源一郎さん、恩田陸さん、いしいしんじさんなど、多くの作家に支えられました。楽しくはありましたが、知らないことだらけでトラブル続きの日々。毎日が勉強という感じでしたね。

 そんな中でも、自分で手紙を書いて執筆を依頼した中村文則さんに『掏摸』(2009年)をいただけたのが、「文藝」時代の大きな出来事だったかもしれません。

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