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趣里、伊原六花、蒼井優らの“プロ意識”に感服 『ブギウギ』に集った“優れた身体表現者”

Real Sound

『ブギウギ』写真提供=NHK

 放送中の朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)のショーがとにかく素晴らしい。

参考:『ブギウギ』スズ子が“スイングの女王”に 草彅剛演じる羽鳥との練習が成功を収めた理由

 第6週の30話のクライマックスで繰り広げられた「梅丸楽劇団(UGD)」の面々のパフォーマンスは圧巻だった。「ここまでのものが観られるなんて……」と、思いがけず涙が出たほどである。

 本作には主演の趣里を筆頭に、優れた身体表現者が集まっている。だからこそ実現できた名シーンだ。一般的な音楽番組のようにアップで表情を見せるばかりでなく、カメラが彼女らの全身を捉えることで一人ひとりのレベルの高さを証明した。見せ方によってはいくらでも誤魔化すことができるのだから、視聴者に“ホンモノ”を届けようとする作り手たちの心意気や、俳優たちのプロ意識に感服せずにはいられない。

 ヒロイン・スズ子を演じる趣里だけでなく、スズ子が尊敬する大和礼子役の蒼井優、ともにUGDで活躍する秋山美月役の伊原六花らはそれぞれのルーツに「バレエ」があり、秋山と組んで公演の主演を担う日本のトップダンサー・中山史郎役の小栗基裕はダンスパフォーマンスグループ「s**t kingz」のメンバーだ。

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 現役のプロダンサーである小栗の身体表現が素晴らしいのは当然だとして、趣里ら職業俳優陣があそこまで身体を扱えることには大きな感動がある。いくら幼少期から厳しいレッスンを受けていたとしても、現在の彼女たちは「俳優」なのだ。ダンサーの役ならダンスを習得しなければならないし、シンガーの役ならば歌を練習するのが彼女たちの仕事。『ブギウギ』への出演に際して猛練習をしたのだろう。しかしだからといって、かつての勘を取り戻せさえすれば、あれだけのパフォーマンスができるというわけでもないはずなのだ。

 たとえば、1年間だけ集中的にジムに通い詰めて肉体改造に成功したとして、ジム通いをスパッとやめてしまったらどうなるだろうか。中学時代に長距離走で全国クラスだった人間が、走るのをやめてしまったらどうなるだろうか。前者はそのうち元の体型に戻り、後者は少し走っただけで息切れするようになるはず。人間の身体を変化させた場合、何よりも難しいのはそれを維持することなのだ。そもそも、身体を変化させるためには運動だけでなく、食事などの生活面にも気を配らなければならない。踊りも同じ。一朝一夕にはいかない。趣里たちは俳優としてさまざまな役を演じながら、動ける身体の維持を行っているわけだ。

 現在開催中の「さいたま国際芸術祭」にて、ダンサーで振付家の倉田翠が手がけた『指揮者が出てきたら拍手をしてください』という作品が上演された。これは「かつてバレエをやっていた(やめた)」が公募条件のオーディションで選ばれた20名弱の出演者が、個々の身体に残る“バレエの記憶”とともに、現在のありのままの姿での踊りを披露するというもの。それぞれが異なる理由でバレエをやめ、いまの社会で生活を送っている。動きのキレやしなやかさ、開脚時に足がどこまで上がるのかはそれぞれ違う。バレエ経験のない筆者からすれば誰もがすごいのだが、決して“上手い”というわけではない。しかしそんなところにこそ、一人ひとりが生きてきた軌跡と日常が垣間見え、胸を打たれたのだ。

 彼ら彼女らの姿を目にしたからこそ、なおのこと身体を維持することの難しさを思い知った。『ブギウギ』で踊る面々は、相当な困難を乗り越えてあのステージに立っている。しかも趣里たちは個々の人生に加え、今作で演じる役の人生だけでなく、これまで演じてきた役の人生もが踊りに反映されることとなる。だからこそ、あんなにも魅力的なショーを作ることができるのだろう。

 2017年の日本高校ダンス部選手権にて一躍有名となった「バブリーダンス」のセンターを伊原が務めていたことは広く知られている。彼女が演じる秋山は華麗なタップを披露するUGDの男役。その身のこなしの凛々しさからは、彼女が男役をそれらしく演じているわけではなく、身体の細部の構造にまで意識を向けて踊っていることがよく分かる。たんなる模倣では、あのレベルのパフォーマンスには到達しないだろう。

 現役で世界的に活躍する小栗はもちろんのこと、日本舞踊の紫派藤間流の家元も務める藤間爽子も『ブギウギ』には出演しているので、とにかく贅沢である。UGD旗揚げ公演のショーを超えるものが、あといくつ観られるだろうか。

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