top_line

「エンタメウィーク」サービス終了のお知らせ

中村雅俊と言えば教師役!文豪・夏目漱石原作の映画「坊っちゃん」

HOMINIS

1973年に文学座附属演劇研究所に入所して以来、俳優として、歌手として、50年近くにわたって第一線で活躍してきたベテラン・中村雅俊。大学卒業直前の1974年には新人ながらにして、正義感の強い熱血教師を演じたテレビドラマ「われら青春!」の主演に大抜擢され、この作品で一気にブレイク。自身が歌う挿入歌「ふれあい」も100万枚を超える大ヒットを記録した。生徒と近い目線で一緒に悩み、ぶつかり、笑い合う等身大の熱血教師像は、多くの視聴者の支持を集めた。

坊っちゃんを演じる中村雅俊

(C)1977松竹株式会社

青春スターとして人気絶頂だった70年代当時、数多くのドラマ、映画に出演していた中村だが、その中でもデビュー作の「われら青春!」をはじめ、「青春ド真中!」「ゆうひが丘の総理大臣」など、”中村雅俊といえば教師役”というイメージを持つ人も多い。そんな彼が明治を舞台に、正義感あふれる教師を演じたのが1977年の映画「坊っちゃん」だ。

本作の原作は、言わずと知れた明治の文豪・夏目漱石の不朽の名作。物語は東京の物理学校を卒業後、中学の数学教師として四国の松山にやって来た”坊っちゃん”こと近藤大助が主人公だ。原作小説では「親譲りの無鉄砲で子どもの時から損ばかりしている」という書き出しが有名だが、その言葉通り、正義感あふれる坊っちゃんは松山で、ひと癖もふた癖もある教員や生徒たちと出会い、大騒動を繰り広げる。

(C)1977松竹株式会社

広告の後にも続きます

映画・ドラマ・アニメなど、過去に何度も映像化されてきた「坊っちゃん」だが、1977年版「坊っちゃん」は、松竹のドル箱シリーズ「男はつらいよ 寅次郎と殿様」の併映作品として公開。メガホンをとったのは、松竹のプログラムピクチャーという枠組みの中で、独自のユーモアセンスを織り交ぜた数多くの喜劇作品の傑作・怪作を発表してきた鬼才・前田陽一監督。漱石の「坊っちゃん」を「明治時代の青春痛快ユーモア小説」と評した前田監督は、そうしたテーマを念頭に躍動感あふれる演出で映画化。「主演の中村雅俊くんは、これまでの『坊っちゃん』たちの中でも最高のものとなるであろう」と手応えを感じていたようだ。

その前田監督の言葉通り、本作は中村雅俊という俳優が持つ明るさ、快活さ、さわやかさ、熱血漢な部分などを前面に押し出しており、まさに青春スター、中村雅俊ならではの青春活劇という趣となっている。冒頭、愛媛にやってきた坊っちゃんが、ひょんなことから山嵐(地井武男)とケンカを始めるという冒頭シーンから、クライマックスの乱闘シーン、そして青春そのものともいえるすがすがしくもさわやかなエンディングなど、坊っちゃんが生徒たちと一緒に青春を謳歌しているさまが描き出されており、思わず物語の世界にのめり込んでしまう。松山ロケがもたらす美しい風景もどこか懐かしさを感じさせる。

(C)1977松竹株式会社

また共演者も松坂慶子、地井武男、米倉斉加年、大滝秀治、など実力派キャストの競演も注目のポイントだ。マドンナ役の松坂は当時はまだ清純派女優として売り出していた時期で(一般的には本作の直後に放送されたドラマ「青春の門(第2部)自立編」や、映画『事件』などで清純派を脱皮したと言われている)、凛としたたたずまいが印象的。明治という時代背景の中にありながらも、自立した現代的な女性像としてマドンナを描き出したのも本作ならではの妙味である。

文=壬生智裕

 
   

ランキング(映画)

ジャンル