麻辣拌(マーラーバン:málàbàn)という軽食をご存知でしょうか?
X(旧Twitter)で80C(ハオチー)のアカウントをはじめ、中国の食をチェックしている方は、見覚えがあるかもしれませんね。
四川発祥の「麻辣烫」は日本でも時々見かけますが、中国には汁なし麻辣烫も。それは遼寧省発祥の「麻辣拌」。好きな具材を茹でて、ニンニク、葱、唐辛子、山椒、ゴマに熱い油をいれ、醤油、塩、オイスターソース、砂糖、麻酱(ゴマをすりつぶしたペースト状のもの)を入れて和えれば完成。(編集D) pic.twitter.com/V4APme1q54
— 人民中国雑誌社 (@PeopleChina) January 5, 2022
【G.W.ウチ中華】壹传食「麻辣拌」購入価格550円
汁なしマーラータンことマーラーバンのインスタント商品。ジャガイモ、昆布、タケノコ、キクラゲ、スパム、粉皮、乾燥湯葉と具だくさんなうえに、即席麺まで。歯ごたえの良い具が多く、食べ応えがある。調味ダレは辛味の中にも甘味もある。 pic.twitter.com/u90iQkNFdv— 80C[ハオチー]中華料理がわかるWEBメディア (@80Cjp) May 5, 2023
それぞれの投稿が記しているように、麻辣拌(マーラーバン)=汁なし麻辣燙(マーラータン)という例えがイメージしやすいでしょう。しかし、これが四川料理でも、麻辣味でもないのです。
麻辣拌(マーラーバン)の発祥と由来
花椒の痺れと唐辛子の辛さが特徴の麻辣(マーラー)といえば、四川省を代表する味覚のひとつ。その字を使っているということは、麻辣拌(マーラーバン)も四川発祥…?
そう思いきや、麻辣拌の発祥の地は、四川省から遙か遠く、東北地方の遼寧省撫順(抚顺:フーシュン)。省都・瀋陽の東に位置し、市境を吉林省と接する都市なのです。
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では、なぜ麻辣拌(マーラーバン)は撫順で生まれたのでしょうか。そこには、料理がつくられた時代背景と、寒冷地である東北の気候が関係しています。
時を遡ること30余年、1990年代の撫順は、国有企業改革と、露天掘りをしていた炭鉱の枯渇による石炭業衰退の影響が相まって、多くの労働者が下崗(シャーガン:xiàgǎng:下岗)、つまり契約はあっても職のない状態に陥りました。
そんな折、撫順に四川名物の麻辣烫が到来します。麻辣味のスープにたっぷり具が入ったこの軽食はボリューム満点。刺激的な味わいで、安価でお腹いっぱい食べられるとあって、人気はみるみる急上昇!
そこで仕事のない労働者たちはブームに便乗し、麻辣燙の専門店を次々と開業します。しかし、同業者はすぐに増え、競争は激化するばかり。そこで、ある夫婦は考えたのです。
「東北の寒冷地暮らしに合わせて、油、塩、刺激をしっかり効かせた調味がよいのでは?」
「スープは味わいを薄めるから無くして、濃厚なタレで具を混ぜればよいのでは?」
これを麻辣拌(マーラーバン)として売り出したところ大当たり。麻辣拌は多くの人々を魅了し、撫順グルメの代表格となった…というわけです。