
マイケル・B・ジョーダンが主演と監督を務めた『クリード 過去の逆襲』が公開された。本作は、シルヴェスター・スタローン主演の伝説的作品『ロッキー』サーガを引き継いだ『クリード』シリーズの3作目にあたる。これで『ロッキー』と『クリード』は両シリーズを合計すると9本制作されたことになる(再編集版の『ロッキーVSドラゴ』を除く)。
参考:『クリード 過去の逆襲』は“地元の悪いツレの逆襲”!? マイケル・B・ジョーダン監督の功績
この9作を並べてみると、驚くほど同じパターンを繰り返しながら、同じメッセージを伝えていることがよくわかる。シリーズで初めてスタローンが出演しなかった『クリード 過去の逆襲』も例外ではない。それが一体何かを解き明かしてみたい。
『クリード 過去の逆襲』は、世界チャンピオンになった“アポロの息子”アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)の前に、刑務所から出所したばかりの幼なじみ、デイム(ジョナサン・メジャース)が立ちはだかるという物語だ。
ネタバレを避けるため詳述はしないが、これまで『ロッキー』シリーズを繰り返し観てきた人なら、本作にたくさんの『ロッキー』シリーズの要素が含まれていることがわかるだろう。「ハングリーな無名選手の抜擢」や「過去のライバルの協力」「敗北からの復活」などのストーリー展開もそうだが、重要なのは物語の核の部分、いわば“魂”の部分だ。
広告の後にも続きます
『ロッキー』は負け犬(アンダードッグ)の復活の物語である。しがない三流ボクサーのロッキー・バルボア(ヴェスター・シルスタローン)は、華々しい世界チャンピオンのアポロ・クリード(カール・ウェザース)に抜擢されてタイトルマッチに挑むことになる。
ロッキーは予想に反して15ラウンドを戦い抜き、一夜にしてヒーローになった。忘れられていたアメリカンドリームの復活に、物語の中の観客と同様、映画館の観客も熱狂した。だが、ロッキーにとって大切だったのは、自分が負け犬ではないと証明することだった。決戦の前、ロッキーはエイドリアン(タリア・シャイア)の前で本音を吐露する。
「たとえ脳天を割られたって平気だ。最後まで持ちゃ、それでいい。みんな途中でノックアウトされてるんだ。15ラウンド戦って、ゴングが鳴ってもまだ立っていられたら、ただそれだけで俺は満足だ。ゴロツキじゃないってことを証明できる」
自分のために戦うことの大事さはシリーズを通して何度も語られている。『ロッキー3』は、闘争心をどう回復するかという物語だった。世界チャンピオンとなったロッキーが我が世の春を謳歌しているところへ、ハングリーな挑戦者、クラバー・ヤング(ミスター・T)が現れる。
クラバーに敗れ、老トレーナーのミッキー(バージェス・メレディス)も失い、しょげかえるロッキーに喝を入れたのはエイドリアンだった。
「今こそあなたはやらなきゃいけないのよ。それはミッキーのためでもない。ファンのためでもない。タイトルやお金や私のためでもない。自分のため、自分自身のためだわ」