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観光インフルエンサーになった「ヴィーナス」…伊政府キャンペーンが大不評の訳

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 パヴィア大学のマッテオ・フローラ教授によると、キャンペーンのウェブサイトでは、イタリア南部の港町であるブリンディジが自動翻訳の結果、「トースト」と英語辞書の定義のまま訳された。

 フローラ氏は「クリエイティビティをどうこう言うのはやめておきましょう。キャンペーンを好きな人も嫌いな人もいるでしょうし。しかし技術面では……問題が雪崩を起こしている状況です」と話す。

 たとえば、ドメインを確保していなかった点。これにより誰でも素材を入手できてしまうため、それを使ってキャンペーンを模造することも可能になってしまった。

 キャンペーンのクリエイティブチームは、バーチャル版ヴィーナスを作りあげるのに人工知能ではなく「人間のクリエイティビティという知能」を採用している。フローラ氏は問題のキャンペーンについて、無駄な資金を使っているとも指摘した上で、AIを使えば20ユーロの費用であっという間に同様のキャンペーンが用意できてしまうことを示した。同氏がソーシャルメディアにアップした投稿は、数千人にシェアされている。

 このキャンペーンはうわべだけボッティチェリの名作に似せたキャラクターを採用したことで、「15世紀に描かれたオリジナル版の美と神秘性を大きく損ねた」と美術史家からも厳しい批判を受けている。

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 ローマ・ラ・サピエンツァ大学で美術史の教鞭を執るマッシモ・モレッティ氏は「これではボッティチェリもきっと喜ばないでしょう」と話す。

 マーケティングの専門家は、どのような場合も「ヴィーナスの誕生」のようなアイコニックな画像を使うときには、文化的なところで人の気に障るリスクは覚悟しなければならないと指摘する。

 ペース大学ルービン・ビジネス・スクールでマーケティングを教えるラリー・チャグリス氏は「歴史的なものに手を加えようとすればするほど非難の声は大きくなるでしょう。『文化を変えるつもりか。それは我々の歴史の一部なのだから、つまり我々が我々であることを変えようとしているのではないか』という声が上がるようになるのです」と説明している。

 ローマに住む高校生のリカルド・ロドリゴ氏は「ボッティチェリのヴィーナスは芸術品なので、そのような使い方をするのは好きではありません。Z世代を楽しませるためにソーシャルフレンドリーなものにしたのでしょうけど……手を加えることなくそのままの状態でも使用できるのですから、必要なかったと思います」と話す。

 「ヴィーナスの誕生」を所蔵するウフィツィ美術館は、キャンペーンに関するコメントは出していない。

 しかしキャンペーンの制作側としては、どのような報道も喜ばしい報道だ。

 ENITのジェリニック氏は「とてもバイラルになりました。ウェブユーザーに息吹を与えてもらっているのです。ソーシャル・コミュニケーションの観点から、それは興味深いことだと思います。私たちのキャンペーンは、批評家らが認めたくないほど魅力的なのです」と語る。

 観光局によると、広告掲示板のほか、空港や鉄道のディスプレイを使ってキャンペーンを拡大する見込みだ。

By TRISHA THOMAS and WYATTE GRANTHAM-PHILIPS Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

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2023年5月23日

提供元: NewSphere

 
   

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