「頭を下げたり伸ばしたりする際、首の椎間板のクッションが傷むことによって、大きなGがかかり首がグラグラし、脊髄という神経を圧迫することがあります。レーサーであれば、無意識にGに対抗するように首に力が入ります。その首への負担は、頸椎症性脊髄症の原因のひとつとなりえます」
ふだんの生活では、どのような自覚症状があるのだろうか。
「軽症であれば、手のしびれがある程度です。重度になれば、巧緻運動障害といい、手指の動きがぎこちなくなります。 ボタンの掛けはずしや字を書くこと、箸を使うことがうまくできなくなるなどの症状があります。悪化すると、下肢の脱力感が進行し、歩行障害や排尿や排便の障害が起きることもあります」
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近藤も、ライブ中にマイクを落としそうになることがあったというが、一般的にはどのような治療や手術をおこなうのか。
「軽度の症状であれば、首に負担がかからないように生活し、投薬やリハビリテーションすれば改善が見込まれます。ただ、加齢や仕事の関係上、悪化していく方もいます。症状が重度の場合、脊椎の手術になります。手術時間は、術式によって違いますが、2時間程度のことが多いです」
一般的には「大きな手術に分類される」と亀田院長。手術後で心配なのが後遺症だ。すぐにふだんの生活に戻れるのだろうか。
「個人差はありますが、通常は普通の生活に戻れます。痛みは残りにくいものの、しびれなどが残存する場合があります。悪化した状態で手術のタイミングが遅れると、手術しても改善が乏しく、後遺症が残ってしまいます。
もし近藤さんが、レースのときにのみ痛みやしびれで困っているのであれば、手術をすれば改善すると思います。はっきりした発症数は不明ですが、ときどき外来に患者さんがいらっしゃいますので、珍しくはないという印象です。手術に至るのは、10万人に数人といわれています」
近藤が退院するのは5月18日の予定。20日のレース復帰戦で、元気に回復した姿を見せてほしい。
取材協力・吉澤恵理(医療ライター)