過去にプロ野球で、外国人ピッチャーが審判に向かってボールを投げつけたケースがありました。こうしたケースは、試合による投球ではなく、憎しみで審判を傷つける意図があったと解釈されるので、もし相手がけがをした場合、正当業務行為として免責されずに、民事責任と刑事責任の両方を負う可能性があります」
Q.バッターがデッドボールで大けがをしたとします。その場合、ピッチャーに賠償を請求することは可能なのでしょうか。それとも、請求しても認められないケースが一般的なのでしょうか。
牧野さん「バッターが大けがをして、その後、ピッチャーに損害賠償を請求したとしても、先述のように正当業務行為として、ピッチャーの違法性が阻却されます。そのため、バッターは民事の損害賠償請求が認められないでしょう」
Q.野球の試合中に発生したデッドボールがきっかけで裁判に発展した事例について、教えてください。
牧野さん「デッドボールがきっかけで、裁判に発展したケースは見当たりませんでした。故意に相手にけがをさせてしまった場合は裁判に発展する可能性がありますが、そのような悪質性があったとしても、投手が本当にけがをさせる意図があったかどうかを証明することは難しいでしょう。
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また、野球のデッドボールは、原則として正当業務行為が認められてピッチャーが法的責任を負わないケースが多く、裁判に発展しないのではないかと思われます。
一方、試合中の乱闘によって負傷者が出た場合、暴力をふるった本人の暴力行為が、実際に動画などで確認されると、傷害罪が成立する可能性はあります。試合中の乱闘は正当業務行為に該当しないので、違法性は阻却されません」