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11月22日(いい夫婦の日)に観たい映画!『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』 貴重な“余白”の時間を描く

BANGER!!!

我々日本人にとっては、ニューヨークに住むなんて夢のような話に思えるが、ニューヨークに普通に住んでいる人には夢とばかりは言っていられないだろう。『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』(2014年)は、そんな夢の我が家を手放そうとする夫婦が直面した、てんやわんやの現実を描いた映画だ。

熟年夫婦が住みなれた我が家を売りに出すとき

画家のアレックス(モーガン・フリーマン)と元教師のルース(ダイアン・キートン)は、黒人と白人の結婚がまだ白眼視されていた時代に結婚し、様々な困難を二人で乗り越えてきた仲むつまじい夫婦。ブルックリンのアパートの5階に住んでいるが、老いて足腰が弱ってきた夫を心配し、妻はエレベーター付きのアパートに買い換えようと提案する。

不動産業をやっている姪のリリー(シンシア・ニクソン)があれこれ世話を焼いてくれ、新聞に広告を出して、いよいよオープンハウスを開くことになる。下見にやってきた人々に我が家をあれこれ評価されるうちに、この家に住んだ40年の歳月が蘇ってきて……。

監督のリチャード・ロンクレインは46年イギリス生まれ。30年代のイギリスに時代を移したイアン・マッケラン主演の『リチャード三世』(1995年)や、キルステン・ダンストとポール・ベタニーが恋に落ちるテニス選手を演じた『ウィンブルドン』(2004年)などで知られる。原題の“5 Flights Up”とは“5階上”(flightは階と階との間の階段のこと)という意味。

主演はアカデミー賞ノミネート5回、助演男優賞受賞の名優モーガン・フリーマンと、魅力的な熟年女性を演じたら右の出る者のいないダイアン・キートン。姪のリリーを演じたのは『セックス・アンド・ザ・シティ』(1998年ほか)のミランダ役で有名な舞台女優のシンシア・ニクソンである。

人生における貴重な“余白の時間”を描いた映画

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年老いて、それまで慣れ親しんだ家を離れなければならないときは誰にでも来るだろう。映画の主人公であるカーヴァー夫妻は、病気で入院するとか、施設に移るとかいう切実な理由ではなく、夫の足腰が弱ってきたからという、比較的余裕のある理由で引っ越しを考え始める。老いと死を象徴するのは彼らの愛犬であって、彼ら自身ではないところが甘いと言えば甘い。でも、この映画の目的は老いの現実を描くことではなく、長年助け合いながら生きてきて、今、人生の秋を迎えた夫婦の円熟の時間を描くことにある。死は間近に迫ってきたものの、まだしばらくはこのまま生活を続けられる余裕がある、そんなゆとりが映画の持ち味でもある。

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