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原巨人の抱えるジレンマ【指揮官たちの秋】

ベースボールキング

◆ 10月連載:指揮官たちの秋

 今月8日からプロ野球はクライマックスシリーズ(以下CS)に突入する。セパ上位3球団の監督や選手は最後の調整に余念がない。

 一方で「敗者」の秋は早い。すでに今季限りの退団を決意した監督もいれば、屈辱を胸に来季の巻き返しを期す指揮官もいる。12球団の監督の中で日本一の椅子を掴むのはたった1人。激しい生存競争の中に身を置く「監督業」と言う職業にスポットを当てながら、それぞれの人間模様に迫ってみたい。


◆ 第1回:「勝利か育成か?」ペナント奪還が至上命題となった原巨人に突き付けられた課題

 巨人・原辰徳監督の“続投”が10月4日に球団から発表された。

 今年から新たに3年契約を結んでいるから既定路線ではあるが、現実はかなり厳しい状況だった。

 同日に行われた山口寿一オーナーへのシーズン報告では、原監督から「自分に慢心があった」と反省の言葉があったと言う。一部報道では8月下旬に進退伺まで出されていたことが明らかになっている。

「(私の中に)このまま終わってたまるかと言う新しい情熱と言うか、血液の中に燃えたぎるものが出てきた」と“原流”の表現で再出発を誓ったが、その決意を良しとした球団がラストチャンスを与えたような印象もある。

「育成と勝利」の目標を掲げて臨んだシーズンだった。

 これまで巨人のチーム作りと言えば、常勝の名のもとに、FAやトレードで他球団の大物選手を獲得して栄光を手にしてきた。だが、今季はFAも封印して若手の育成に方針転換。さらに原監督には次期指導者の育成と言う大きな宿題も課せられた。具体的には阿部慎之助、元木大介、桑田真澄ら各主要コーチから次の監督を見出そうとするものだ。しかし、結果はいずれも答えを出せぬまま終幕を迎えた。

 5年ぶりのBクラス転落に、原政権では初のCS逃し。ネット上では「原、辞めろ」のコールまで吹き荒れている。

 確かに「育成」の面では明るい兆しも見えてきた。

 新人最多タイの37セーブを上げて守護神の座を掴んだ大勢をはじめ、平内龍太、山﨑伊織、赤星優志らの若手8投手がプロ初勝利、1シーズンで1チームがこれだけの初勝利を記録するのは史上初の快挙となった。

 打撃に目を転じると、中田翔やグレゴリー・ポランコ、アダム・ウォーカーら外国人選手の活躍もあって20本塁打以上が5人と“空中戦”では強みも発揮した。だが、それでいてチーム成績では打率(.242)、防御率(3.69)共にリーグワーストである。

 若手投手が小さな花を咲かせ始めたが、大きな戦力までは育っていない。派手な一発攻勢は得意でも、バント、進塁打や犠牲フライなどのち密な野球は出来ずに“守乱”も目立つ。菅野智之、坂本勇人ら主力選手の故障離脱も痛かったが、この数字がBクラス転落の現実とチーム再建の難しさを物語っている。

 指揮官の続投と同時に早くもチーム改造が始まった。6日には村田修一一軍打撃兼内野守備コーチ、実松一成同バッテリーコーチなど6人の退団が発表された。今後、外部からの招請や、一、二軍の入れ替えなどが予想される。

 水面下では、2年ぶりのFA参戦も現実味を帯びている。今オフは西武の森友哉捕手や楽天の浅村栄斗、広島・西川龍馬選手、阪神・西勇輝投手ら大物の去就が注目されている。来季こそペナント奪還が至上命題となった原巨人が、指をくわえて見過ごすとは思えない。


 しかし、大物選手の獲得は再び、若手の出番を奪う事にもつながる。勝負の世界、甘いことも言っていられないのも当然だが、「育成と勝利」の看板を1年で下しては目先の勝利しか得られないのもまた確かだ。

 ヤクルトとオリックスのリーグ連覇にはそれなりの理由がある。監督の「辛抱」と「育成枠」の存在だ。

 ヤクルトでは昨年、高橋奎二投手や塩見泰隆選手が主力に成長。今季は長岡秀樹選手、内山壮真捕手らが台頭している。

 長岡には、キャンプの一軍帯同さえ迷うほど力不足を感じながら、高津臣吾監督はシーズンを通して起用し続けた。内山には試合中に何度も交代を考えたが、我慢したと言う。オリックスでも昨年の紅林弘太郎、宗佑磨選手らに続いて、今季は阿部翔太、宇田川優希投手らが急成長を遂げている。

 巨人と近い関係にある「スポーツ報知」では、今季の敗因を検証する記事の中で「足りなかったベンチの意思統一」(10月5日付)を挙げている。

 勝利のためには早めの投手交代も連投も必要な時がある、とする原監督と「もう少し、投げさせてあけたかった」と談話を残す桑田チーフ投手コーチとの意思疎通のズレがあったのではないか? という指摘だ。その記事には「叶わなかった育成と勝利」の見出しも躍っている。

 勝利のためには大型補強も辞さない構えの原巨人だが、若手の育成も怠ってはならない。「勝利か育成か?」になっては大きなジレンマを再び抱え込むことになる。

 来季には通算17年目を迎える原監督。もう、停滞は許されない勝負の年をどう乗り切っていくか? 突き付けられる課題は大きく、重い。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

 
   

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