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天心 VS 武尊、メイウェザー VS 朝倉未来のPPVを続々生中継 ABEMA格闘ch・北野雄司が語る“格闘家への深い愛情”

Real Sound

--『格闘代理戦争』や『格闘DREAMERS』などのオリジナル番組の制作は、格闘技を見る人の間口を広げる狙いもあったのでしょうか。

北野:そうですね。視聴者属性を気にする部分もありますが……。やはり「格闘家たちの魅力を伝えたい」という気持ちが一番大きいです。彼らって、すごく魅力的で、僕たちとはまったく違う常識を持っているんですよ。少ない活動期間を生き抜こうとする切なさや、ある種の狂気に惹きつけられるというか。

--すごくわかります。

北野:それなのに、多くても3ヶ月に1回くらいしか試合をしないから、頻繁には彼らの生き様を見せることができない。「どうしたら、定期的に彼らの魅力を発信することができるんだろう?」と考えたことが、オリジナル番組を作ることになった最大の理由です。

--格闘系のYouTubeが盛り上がっているのも、ふだんの生き様を見られるという点が大きいのでしょうか。

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北野:そうですね。やはり、視聴者のみなさんは「日常のすぐ隣にある非日常を見たい」んでしょうね。武尊選手なんかもそうですけど、街を歩いている時はふつうのオシャレな若者なのに、ジムに入った瞬間、いきなりバンバン殴り合ったりするじゃないですか。

--ギャップがすごいですよね。

北野:そうなんですよ。「15分前までは、渋谷歩いてたのに!」って。その感じが、YouTubeとマッチしているんだと思います。ただ、その一方で、『朝倉未来にストリートファイトで勝ったら1000万円』が終わったらYouTubeの喧嘩自慢企画は減るといいなと思っていました。

--それはどうして?

北野:大多数の“喧嘩自慢企画”が思い切り殴ってないな、ということに、視聴者のみなさんが気付くだろうと。それまではYouTubeで「これはどうなんだろう?」と自分が思う動画があっても、コメント欄を見ると「すげえ!」となっていて。それはそれでいいんですけど、なんかなぁ……と思うところもあったので、ABEMAの番組としてリアルを追求したかった。朝倉選手と話した時に「この人は手を抜かないだろうし、圧倒的な凄みを見せてくれるだろう」と思ったんです。実際にこの番組以降は、わかりやすくクオリティの低い喧嘩自慢企画は減ってきているようにも感じます(笑)。

〈『THE MATCH 2022』の裏で、朝倉未来と交わした約束〉

--格闘技とネット中継といえば、今年の『THE MATCH 2022』はその象徴的なビッグマッチでした。ある意味、格闘技の主導権が、テレビからネットに移り変わった瞬間のような。

北野:『THE MATCH 2022』で時代が動いた、という認識はあります。でも、テレビから完全に主導権が移った、と言われると少し違和感があるんですよね。(那須川)天心選手も、武尊選手も、たくさん地上波のバラエティ番組に出ていたじゃないですか。むしろ、一般の方からの知名度をそっちで獲得してきたからこそ、これだけの注目が集まったともいえる。僕のなかでは、地上波に出ていた人たちが、インターネットでPPVをやって、売れたという認識なんです。

--言われてみれば……。

北野:だからこそ、今回『超RIZIN/RIZIN.38』で行われるフロイド・メイウェザー選手と朝倉選手の対決は、ネットから生まれたスターである朝倉選手と海外のスターであるメイウェザー選手という組み合わせとして、テレビからネットへ時代が移ったといえる象徴的な一戦になると思っています。海外ではローガン・ポールのようにYouTuberとして活躍しながら、ボクサーとしても大きな視聴数やPPVの売上を記録している例もあるので、日本でもそれに追随する実績が生まれることを期待しています。

--今回の『超RIZIN/RIZIN.38』をPPVで中継することは、どのようにして決まったのですか?

北野:事態が動き始めたのは、『THE MATCH 2022』の日なんです。お客さまが帰られたあとに、東京ドームの一塁側ベンチの裏に行ったら、朝倉選手がいたんですよ。2ヶ月ぶりくらいに話したんですが「僕も、今度メイウェザーとやることになりました。PPVたくさん売りたいです」と言われて。そこにRIZINのCEOである榊原信行さんも通りかかって、三人で「ぜひ!」と。そこから両社でのコンプライアンスチェックを含めた精査もしっかりとした上で、最終的な決定に至りました。

--あの熱狂の裏で、そんなことが!

北野:朝倉選手の目から、挑戦的なものを感じたので、一緒に仕事がしたいと思いました。おそらく彼も、『THE MATCH』に影響を受けたんじゃないかな。「負けないくらい、盛り上がろう」と言い合いました。

〈PPV文化を根付かせるためには、スターの誕生が必要不可欠〉

--YouTubeやオリジナル番組を見ていると、北野さんをはじめとした制作陣が「格闘技を、どのようにしてキャッチーに見せるか」にこだわっているように感じます。演出面で、気をつけていることなどはありますか?

北野:それぞれの選手が、本当に型にハマらない魅力を持っているんです。その、魅力をどう引き出すか。格闘技の番組に限らずですが、とくに意識をしていますね。

--番組を観ていても、選手一人ひとりへの愛情が伝わってきます。

北野:個性が豊かなので、むずかしさもありますけど……。たとえば、朝倉選手なんて、本当は喋らせたくないんですよ(笑)。来たる瞬間までは、黙っていてほしい。黙っているだけで、ダークな華やかさがあるので。だから、番組ではYouTubeとちがう印象を受けると思います。「いつ喋るのかな?」ってドキドキさせたいんですよね。口を開いたら、とにかくいいことを言ってくれるので。

--では、最後に。北野さんご自身が、今後力を入れていきたいことを教えてください。

北野:発表になったばかりですが、10月、11月、12月の『RIZIN』もABEMAで中継することが決定しました。『RIZIN』はある種のお祭り感……日本の伝統的にお祭りの日は常識はずれなことをしても良い、といった風潮があると思っていて、その本能的なものを掻き立てるなにかがあるように感じるんです。だからこそ特別に思えるし、風物詩的なものになったというか。そういったお祭りを盛り上げる一方で、ストイックに競技と向き合っている人たちをピックアップしたPPVもやりたいと思っていて、年間で12~3本のPPVを実施できれば理想的ですね。ジャンルは異なりますが、プロレスラーの武藤敬司さんが来年2月に引退興行をやることになっていて、会見で「PPVをやりたい」とお話しされていたことにすごく驚いて。格闘界でPPVが根付いていると実感したとともに、武藤さんが最後の花道でプロレスにもPPVを定着させようとされている姿勢にも感動しました。

--それは素晴らしい試みですね……。そうした形で大きな興行において有料のPPVがスタンダードになると、違法アップロードなども懸念点に上がってきますよね。対策は考えていらっしゃいますか?

北野:違法アップロードをされてしまうと、ビジネス的にも機会損失してしまうので、防いでいかなければなりません。それらに関しては、弊社と違法アップロード先にあたるプラットフォームの親会社との連携で、ますます厳しくしていくつもりです。みなさんにはお金を払って見ていただいていて、僕らもお金を払うのにふさわしいと思っていただけるPPVを実施しています。どれだけ大きな試合でも、終わったあとに番組スタッフたちが総出で違法アップロードの対策を黙々としている姿を見るのは悲しいので、そういった方が一人でも減ることを祈っています。それに、一瞬だけ切り抜かれてしまうと、格闘技の本質的な魅力が伝わらないのも虚しいんですよね。

--最終的に、いちばん損失があるのは選手ですし。

北野:そうなんです。なので、僕たちとしては会社を挙げて対策していくとともに、『THE MATCH 2022』で上手くいったように、配信事故なども発生せずに安心してお金を払えるプラットフォームであることを継続し、そのうえでオリジナル番組などでお金を払ってでも見たいと思わせるスターを次々に誕生させたいです。それらを含めて、今年と2023年の2年間は「格闘技ってこう見るんだよ」という形をアップデートしていく期間にしていきたいと考えています。

(取材=中村拓海/構成=菜本かな)

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