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「ちょっと映画を観て泣きたい気分」そんな時に全力でおすすめしたい『コーダ あいのうた』

キネマ旬報WEB

第94回アカデミー賞で作品賞を含む3部門に輝いた話題作!

2014年に製作されたフランス映画『エール!』のハリウッドリメイクとなる『コーダ あいのうた』。2021年のサンダンス映画祭でグランプリとなる審査員大賞をはじめ4冠を達成し、続く第94回アカデミー賞では作品賞、助演男優賞、脚色賞を獲得するなど、世界中の観客を感動の渦に巻き込んだ作品だ。

タイトルの【CODA(コーダ)】とは、“Child of Deaf Adults”の略で、ろうあ者の子供を意味する。本作の主人公、ルビー(エミリア・ジョーンズ)は、ろうあの両親(トロイ・コッツァー&マーリー・マリトン)と兄(ダニエル・デュラント)の3人と共に小さな港町で暮らしている高校生。早朝から家業の漁業を手伝い、それが終わればすぐ学校へ。日々、家族の“通訳係”として駆り出され、自分のことはいつも後回し。でも、実は彼女には、家族が知る由もない歌の才能と“夢”があった――。

TVシリーズ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」でいくつかの脚本を手掛けたシアン・ヘダーが監督&脚本を務め、オリジナルのストーリーを基に自身の故郷であるマサチューセッツ州を舞台にした物語を構築。また、音楽プロデューサーとして『ラ・ラ・ランド』や『ディア・エヴァン・ハンセン』のニコライ・バクスターが参加し、主人公の心情や成長を現す名曲の数々を選び抜いた。物語と映像、音楽が抜群の相乗効果を生む珠玉のヒューマン・ドラマとなっている。

“不協和音”だらけだった家族が共に悩み、励まし合いながら掴む未来

物語の始まりで描かれる家族は“不協和音”だ。これまでの生活を維持するために、互いを思いやりながらもどこかで違和感を抱き、我慢をしている。一見、うまく回っているように見える生活が、いかに不安定な土台の上に成り立っているか。その負担は、特に家族で唯一の健聴者であるルビーに重くのしかかる。自分がやるしかない、誰にも頼れない、しょうがない。家族も内心ではそれを気づいていながらも、生きるためにルビーを頼らざるを得ない。

しかし、ルビーが密かに片想いをしていたマイルズ(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)と同じ合唱クラブに入ったことで、彼女の運命は大きく動き出す。「(これまで)家族抜きで行動したことがない」と、顧問のV先生(エウヘニオ・デルベス)に打ち明けていたルビーが、家族から離れ、人前で歌う快感を知り、自分の“好き”を突きつめていく。

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しかし、彼女の歌声の素晴らしさを家族は知らない。知ることができない。そんな家族が学校で行われた秋のコンサートを訪れ、初めてルビーが大勢の前でマイルズと「You’re All I Need To Get By」を歌う姿を目の当たりにする場面。その後、自宅の前でルビーがたったひとりの父に向けて同曲を歌う場面。この一連の流れが非常に秀逸で、自然と涙がこぼれてしまう。

娘の声を聴くことはできないが、彼女の声を聴いた人々の反応を見れば、その声がいかに美しいのかがわかる。その喉に手を当てれば、振動で彼女の心の叫びが伝わってくる。次第に家族の“不協和音”は豊かな旋律を奏で始める。

主演のエミリア・ジョーンズの好演はもちろんだが、ぶっきらぼうで型破り、でも不器用ながら娘を心底愛している父フランクに扮したトロイ・コッツァーの名演が光り輝いている。コッツァーを含め、ルビーの家族を演じた3人は実際に耳が聴こえない俳優だ。その裏には「耳の聴こえない人の役があるのに、耳の聴こえない優秀な役者を起用しないというのは考えられなかった」という監督の強いこだわりがあったという。その監督の誠実さが、映画のクオリティを上げ、コッツァーにオスカーをもたらしたのは言うまでもないだろう。

きっと誰もが誰かに共感できる普遍的な家族の絆の物語
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