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『ONE PIECE FILM RED』アフレコ現場に潜入!谷口悟朗監督が語る”ガヤ”の重要性と新しい表現への挑戦

MOVIE WALKER PRESS

全世界累計発行部数4億9000万部を突破した尾田栄一郎の人気コミックを原作に、尾田自らが総合プロデューサーを務める『ONE PIECE FILM RED』が8月6日(土)についに公開する。

本作は、「ONE PIECE」シリーズらしいド迫力なバトルシーンはもちろん、音楽シーンも見どころとなっている。素性を隠したまま発信するその歌声は“別次元”と評されていた、歌姫ウタ。そんな彼女が初めて公の前に姿を現すライブが開催されることとなり、海賊や海軍、ルフィ率いる麦わらの一味と、ありとあらゆるファンが会場を埋め尽くす。いままさにその歌声が響きわたろうとするなか、ルフィの口から彼女が“シャンクスの娘”という衝撃の事実が明かされる。

「コードギアス」シリーズなどを手掛けてきた谷口悟朗が監督を務め、豪華アーティストが手掛ける楽曲なども話題となっている本作。今回MOVIE WALKER PRESS編集部がアフレコ体験に参加した。その収録時の様子を、谷口監督のインタビューと共にお届けする。

■「アニメーションは、情報の積み重ねによってできあがる」

2022年3月、編集部が訪れたのは、東映東京撮影所のある東京都練馬区大泉。同所内に併設されているポストプロダクション棟「東映デジタルセンター」でアフレコ体験は行われた。録音ブース内に案内されたあと、谷口監督から合図用のランプなどブース内の説明や、「明るく、楽しく、とにかく大きい声を出して」とアドバイスを受け、早速収録スタート。

アフレコしたのは、コンサート会場でのウタのライブシーン。最初に収録したのは、ウタの歌声が初めて聞こえる場面での観客の声だ。叫び声だけとはいえ、ブース内に映されるアフレコ用映像と台本から想像をして演技を行うため、谷口監督からの指示を表現することが難しい。 すでに収録を終えていたルフィやそのほかのキャラクターの声からイメージを掴みアフレコを行った。

その後も、ウタの煽りに対して「U・T・A」とコールするシーンなどを収録するも、理想的な声など到底出せず、叫び声ひとつのなかでも、声優の表現力の豊かさを感じた。本番になるとブース内が無音状態となり、緊張感が包まれるなかで叫び声を出すという、”異空間”での出来事に苦戦しながらもアフレコ体験は終了。収録後、谷口監督にアフレコの出来栄えを尋ねると、初めての経験であったことを踏まえ、「最初の収録テストから次第にだんだん開放されていって、社会人の方の、なにかを守るために割り切る感じが効いていてよかったです」と微笑んでくれた。

普段私たちが作品を観るうえで、”ガヤ”の存在を意識することは少ないだろう。収録後のインタビューで谷口監督は、高校生のころに観た『男はつらいよ』(69)で、画面に映っていない人物や環境音が生活感を出していることに気づいたと話し、”ガヤ”の重要性について語る。「アニメーションというのは、情報の積み重ねによってできあがるので、”ガヤ”による生活音といったベースとなる情報がないと、基本的に成立しないし、説得力を持たないのだと思うのですよ。だから、テレビアニメで初めて監督をした『無限のリヴァイアス』の時も、”ガヤ”用のセリフを別に作ったりしました」。

■「『ONE PIECE』の”お約束”を見直すために、いまに至るまでの過程を理解していった」

「ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック」で監督デビューを果たした谷口監督。再び「ONE PIECE」を監督することに対しては、「テレビアニメの『ONE PIECE』だけでも、1000話を超えるほど長い期間やっています。その間にスタッフが入れ替わったりして、いつの間にか、『ONE PIECE』はこうやって作るのだという、”お約束”のようなものが出来上がっていました。ところがその”お約束”を組織内にいる人は、自分たちがつないできたものですから崩すのが難しい。その”お約束”が『いまの時代の作り方とあっていないではないか』など、見直しをするために外部から私が呼ばれたのでしょう」と、シリーズの新しい可能性について想いを語る。

「見直す分野というのは多岐にわたります。もちろん声優さんや音響、キャラクターデザインなど、残すべきところもある。しかし、それ以外の分野に関しては、内容に合わせて変更する余地がある」と話す谷口監督は、本作のメガホンをとることが決まってすぐに、ルフィ役の田中真弓に挨拶をしたという。「レギュラーの役者さんのところにこちらから飛び込んでいかないと、”お約束”の見直しは難しいですからね。メインのキャラクターたちは、役者さんたちが時間をかけて培ってきたもの。すでにできあがっているものを利用させてもらって、そこをいかに発展させていくかが大事になってきます。だから、基礎がつくられた過程を理解し、受け入れたうえで、ほかのキャラクターたちのバランス調整を行いました」。

■「群像劇を少年マンガでやっていることが最大の魅力」

本作で大きく見直しを行ったのが、”組織”に対する捉え方だと話す。「今回の海軍には事務的なところが必要でした。例えば伝達役を行っている海軍兵は、伝達としての業務の部分に集中してほしい。『うおおおお!』と突っ込んでいかないでほしい。だから本作では、海軍も”組織”であると考えました。黄猿もいくら自由に生きているように見えるとはいえ、天竜人とかの意思があって、それを受けた海軍の方針があったうえで存在しているので、そこは組織人としての枠でやりますという形です。これはテレビアニメの『ONE PIECE』を否定しているのではなく、本作のこれまでの表現では伝えづらい部分を、お客さんにわかりやすく伝えるため、ということです」と、いままでにはなかった「ONE PIECE」の表現への挑戦を話した。

最後に谷口監督にとっての「ONE PIECE」の魅力について尋ねると、バックグラウンドのあるキャラクター像だと話す。「ルフィや麦わらの一味を立たせるために、キャラクターたちが存在しているのではなくて、それぞれにしっかり過去があり、哲学や信念があります。だからこそ、推しのキャラクターもできるだろうし、物語に入っていきやすくなる。あと主人公以外のキャラクターにも、読んでいくための手がかりがあることがポイントだと思います。これは群像劇の基本中の基本で、横山光輝先生の『三国志』などがわかりやすいでしょうか。決められたチームのなかだけで動くものとは違う、そういった群像劇を少年マンガでやっていることが、魅力なんだと思います」。

公開日が目前に迫った本作。実際にウタのライブ会場に訪れたかのような臨場感あふれるシーンの数々は、画面に映っていない”ガヤ”にまでこだわりぬいているからこそ作り出しているのだろう。そして「監督は『ONE PIECE』を自由にするための装置」と語った谷口監督の、並々ならぬシリーズへの理解が、”お約束”を崩すことができたのだ。「ONE PIECE」という作品を信じ、新しい表現へ挑戦をした本作を、ぜひ劇場で目撃してほしい。

取材・文/編集部
 
   

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