近年の、昭和歌謡を再評価する機運も影響しているという。
「平成生まれのタレントが昭和歌謡を熱く語る、という番組も今は多いですよね。ひばりさんは “昭和歌謡の原点” ともいえる存在ですから、若いタレントを通じて昭和歌謡に興味を持つと、いずれ、ひばりさんにたどり着くことになります。たとえばYouTubeなら、昭和歌謡の動画を見ていると、レコメンド機能(おすすめ動画)で、ひばりさんの動画が出てくるわけです。
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2019年のNHK紅白歌合戦では『AI美空ひばり』が登場し、大きな話題になりましたが、それ以降も、ひばりさんの曲は毎年のように誰かがカバーして紅白で歌っています。そうしたところからも若者たちは、『過去の歌手だけど、アクティブな存在』として捉えているのかもしれません」
さらに重要なポイントは “画力(えぢから)” にあると、濱口氏は言う。
「たった一人で画面をもたせる圧倒的な存在感が、ひばりさんにはあります。ダンスをしたり、媚びた笑顔をふりまいたりはしませんが、ふとした表情や声色、目線だけで歌の世界を見事に表現しきっているんです。
これは、グループ活動が主流で、3分間の映像のうち5秒間しか映らないような、“口パクのアイドル” には真似できないことでしょう。“アクの強さ” と言い換えてもいいですね。そうした歌手が見当たらなくなった現在、ひばりさんの歌う姿は、若い世代にとってすごく新鮮に映っているはずです」
昭和から平成、令和へと時代は変わったが、“お嬢” は今も女王なのだ。