BANDAI SPIRITS「HG 1/144 ギャン」 (C)創通・サンライズ

【画像】これもいいものだ…! 「ギャン」の血統にあるモビルスーツをチェックする!(5枚)

第37話にのみ登場したモビルスーツ「ギャン」

 YMS-15(MS-15)「ギャン」は、『機動戦士ガンダム』第37話「テキサスの攻防」に登場したモビルスーツです。ジオン軍のマ・クベ大佐が搭乗し、優秀な近接攻撃能力を発揮して「ガンダム」を苦しめましたが、ニュータイプとして絶頂期を迎えたアムロ・レイには歯が立たず、2本のビームサーベルで挟み込むように切り裂かれて撃破されます。なおマ・クベ大佐は第18話「灼熱のアッザム・リーダー」で「アッザム」に搭乗しガンダムと交戦しており、敗れたものの生還した数少ないパイロットでもありましたが、2度目の生還はかないませんでした。

 西洋の甲冑を着込んだ騎士のような外観の「ギャン」は、登場回数こそ少ないものの、マ・クベの存在感も相まって、非常に印象的なモビルスーツです。作中ではマ・クベが「わたし用に開発していただいたMS」と語っていますが、のちに「ゲルググ」と次期主力機を争ったがコンペティションに敗れたという設定が付加されています。

 なお、富野喜幸総監督(現:富野由悠季)が描いたラフスケッチには、「#37用 やられモビルスーツ “ハクジ” マ・クベ用」と書かれており、当初から第37話用だったこと、元の名前は「ハクジ」であること、そして最初からマ・クベ専用機としてデザインされていたことがわかります。

 武装は、ジオン軍のモビルスーツとして初めてビームサーベルを装備し、そのシールドには宇宙機雷「ハイドボンブ」と小型の「ニードル・ミサイル」を備えました。シールドの射出口は10あるいは12か所とされており、装填数はハイドボンブが12基ないし25基、ニードル・ミサイルが56発ないし60発とされています。

 また「ギャン」の股間部分には、脚部の反応速度と駆動力を向上させる「流体パルスアクセラレーター」と呼ばれるユニットが装備されており、激しいステップを踏むことが出来るようになっています。さらにパイロットの技量を補う操縦システムを標準装備しており、白兵戦能力の向上が図られています。エースパイロットとしての描写が無いマ・クベが、一時的にとはいえアムロのガンダムと互角に戦えたのは、これらの装備のおかげといえるでしょう。



お値段4万円超、かつて抽選販売されたノリタケ製ボーンチャイナ。その名も「機動戦士ガンダム マ・クベの壺」 (C)創通・サンライズ

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コンセプトはのちのモビルスーツへ

 実戦においてマ・クベは、手始めに配下の「リック・ドム」を囮にして「ガンダム」をおびき出し、小惑星を爆破してそのシールドを破壊します。その後はニードル・ミサイルやハイドボンブ、ブービートラップを駆使して「ガンダム」にじわじわとダメージを与え、地上戦を行なえる「テキサス・コロニー」へと引き込みました。

 戦闘中にはシールドを「ガンダム」に切り裂かれていますが、このとき誘爆は起こっていません。すでに弾薬を使い切っていたのか誘爆を防ぐ何らかの機構が備わっていたのか定かではないものの、あの盾を見れば誰しも懸念するであろう事態は一応、避けられたようです。

 その後はビームサーベルでの斬り合いとなり一進一退の攻防が繰り広げられますが、実力と経験に勝るアムロが最終的には勝利しています。マ・クベが死に際に放った「おお……ウラガン、あの壺をキシリア様に届けてくれよ……あれは、いい物だ……!」という台詞は、マ・クベというキャラクターを端的に示した名セリフといえるでしょう。

 さて、「ギャン」についてですが、近接戦闘能力は優秀なものの、ビーム・ライフルを持たないため遠距離攻撃力に欠け、それが理由で「ゲルググ」とのコンペティションに敗れたとされています。現実問題として足場の無い宇宙空間では近接戦闘能力を活かしづらく、地球連邦軍の主力である「ジム」が装備する「ビームスプレーガン」や「ボール」が装備する「低反動キャノン砲」に対して著しい不利をこうむるため、当然の措置といえるでしょう。

 しかしながら機体性能そのものに対する評価は高く、ジオン軍の兵器開発計画「ペズン計画」では、「ギャン」と「ゲルググ」のコンセプトを組み込んだ「ガルバルディ」が開発されています。戦後は地球連邦軍に接収され改修型「ガルバルディβ」が開発されており、『機動戦士Zガンダム』でライラ・ミラ・ライラ大尉とその部下が搭乗しています。

『機動戦士ガンダムZZ』に登場した「R・ジャジャ」も「ギャン」の系譜を継ぐ機体とされており、「ギャン」は量産こそされなかったものの、一年戦争の中でも際立った優秀さを見せた機体としてマ・クベの名と共に記憶されているのではないでしょうか。