『シャア・アズナブル ぴあ 特別編』表紙(ぴあ)

【画像】「ザクII」から「サザビー」まで シャアの搭乗機ズラリ(8枚)

年少者に(それと知らずとはいえ)面と向かって「馬鹿」とまで…

「ガンダム」シリーズの主要キャラであるシャア・アズナブルは、物語の内外を問わずそのカリスマ性や存在感を遺憾なく発揮する一方、劇中ではずいぶんと辛辣な言葉を浴びせられてもきました。「シャアめっちゃ傷ついたと思う」「口に出して言われるとグサッときてそう」といった声も聞かれます。そうした、シャアに向けられた「どぎついセリフ」を集めてみました。

ララァ「どいてください、邪魔です」

『機動戦士ガンダム』においてシャアは、地球連邦軍から「赤い彗星」の名で恐れられるジオン公国の士官として、そして主人公アムロ・レイのライバルとして活躍します。しかし、物語のなかで「ニュータイプ」なる存在が語られ始めたあたりから、風向きが少々おかしくなっていきます。詳細は省きますが、そのニュータイプとしての能力において、アムロには差をつけられていきました。

 そうしたなか第40話において、シャアが見出したニュータイプの少女、ララァ・スンが、モビルアーマー「エルメス」を駆りアムロと「ガンダム」の前に立ちはだかります。戦闘を繰り広げつつもアムロとララァは意識を共鳴させ、そしてシャアは戦闘に加わっていながら蚊帳の外へ置かれてしまいました。ララァは、最初こそ「退いてください、危険です」とシャアに対する気遣いを見せるものの、次には上掲の「大佐、どいてください、邪魔です」と口にします。

 のちにシャアは、ララァのことを「私の母になってくれるかもしれなかった女性だ」と述べており、つまりそのように想っている相手から邪魔者扱いされたわけです。これについては「ジオンの中でも指折りのスーパーエースなのに邪魔扱いって」「ララァに言われるとキツイよね」といった声が見られました。

カミーユ「組織にひとりで対抗しようとして敗れた馬鹿な人」

 続く『機動戦士Zガンダム』において、シャアはクワトロ・バジーナと名乗り、身分を隠して地球連邦軍のいち派閥である、スペースノイド(宇宙居住者)を中心とした「エゥーゴ」に参加します。

 そうしたなか、なりゆきでエゥーゴに身を置いていた本編の主人公であるカミーユ・ビダンが、自らの目の前で両親を失う事態に見舞われました。本編第5話にて、荒れるカミーユに対し前を向けと諭すクワトロ、しかしカミーユは聞く耳をもちません。やがて「目の前で二度も親を殺された僕に、何かを言える権利を持つ人なんていやしませんよ」と言い放つカミーユに対し、親を殺されその仇討ちの経験があるクワトロことシャアは、「シャア・アズナブルという人のことを知っているかな」と、自らその名前を持ち出します。

 これに対するカミーユの返しは、「尊敬してますよ、あの人は両親の苦労を一身に背負って、ザビ家を倒そうとした人ですから」としつつ、上掲のセリフ「でも、組織にひとりで対抗しようとして敗れた馬鹿な人です」というものでした。「敗れた」の意味はわかりませんが、さておき未成年の若者にこのように言われてしまうのは、大人としてかなりキツいものがあるでしょう。自ら持ち出した名前、という点でもキツさ倍増です。さすがにキツいと判断されたか、劇場版(『新訳Z』)では、シャアの名前を出すのはその場に同席していたエマに変更されています。

 なおカミーユからは、のちの第13話において「そんな大人、修正してやる!」と鉄拳制裁をくらっています。場合により名前や立場を使い分けるクワトロことシャアの態度に憤ってのものでした。ネット上では「修正パンチ」などという呼称で知られるシーンで、「殴られた本人は嬉しそう」「なんだか満足感ありそうな顔してない?」という声も聞かれます。



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アムロの毒舌というか皮肉もたいがいのものじゃない?

アムロ「人身御供の家系かもな」

 その後、『Z』第37話にて、エゥーゴがティターンズを逆転するターニングポイントとなった、クワトロことシャアによる「ダカール会議での演説」が描かれます。詳細は省きますが、かつてのライバルであるアムロにも背を押されて、自らがジオン共和国の創始者であるジオン・ズム・ダイクンの遺児と明かしつつ、ティターンズの非道を世界に訴えたのでした。それまでのティターンズ有利な情勢を完全にひっくり返す大勝利です。

 その後、もはや身分を隠せなくなったシャアは、これで自由を失ったと自嘲します。そのシャアに対しアムロは「地球に居残った人々を宇宙(そら)に上げようというのだ。こんな大仕事にひとりやふたりの人身御供(ひとみごくう)はいるよ」と、なかなかにストレートなもの言いをします。そしてシャアの「私は人身御供か?」に対し、「人身御供の家系かもな」と、味方になっても容赦のない冗談を返し、そしてふたりは勝利の杯を重ねるのでした。

アムロ「なんて器量の小さい」

 このように『Z』では祝杯を交わしたふたりでしたが、その6年後には再びモビルスーツに搭乗し、互いに銃口を向け合うことになります。

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』におけるアムロは、これまでもずっとそうでしたが、シャアに対しさらに容赦がありません。冒頭、「私、シャア・アズナブルが(地球に住む人間を)粛清しようというのだ、アムロ」というシャアに対し、アムロは「エゴだよ、それは」とバッサリです。終盤の、ララァや、本編で登場したニュータイプの少女、クェス・パラヤ(クェス・エア)をめぐるふたりの口論においても「情けない奴」「なんて器量の小さい」などと、アムロは歯に衣着せぬもの言いでした。また面と向かっての発言ではありませんが、「人の死にのった世直ししかできないのがシャアだ」とも。

 シャア配下のパイロットであるギュネイ・ガスに至っては、これも面と向かっての発言ではないものの、ララァにとりつかれているだの、そのララァをアムロに取られたからこの戦争を始めただの、ロリコンだのと言いたい放題です。シャアに対しクェスをめぐって嫉妬心を燃やしているとはいえ、仮にも自らの属する軍の総帥をここまで悪しざまに言うとなると、彼個人のみならずそうした見方が周囲にもあるのではないか、と疑わしくなるというものでしょう。

 なお、シャアの副官的立場で愛人でもあるナナイも、冗談めかしてとはいえ「大佐はあのアムロを見返したいために、今度の作戦を思いついたのでしょう?」などと口にしています。実際のところそうなのかもしれませんが、少しシャアが気の毒になるというものです。