『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』DVD(バンダイビジュアル)

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全力を出せない理由がある?

 アムロ・レイとシャア・アズナブル。アニメ史でも屈指の人気キャラクターが決着をつけるとして話題になった劇場版アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』。

 宇宙世紀0093年を舞台としたこの作品ですが、登場する機体は多くありません。地球連邦軍は、vガンダム、リ・ガズィ、ジェガン、ジムIII、ネオ・ジオン軍はモビルアーマーを含めても、サザビー、ヤクト・ドーガ、ギラ・ドーガ、αアジールだけです。

 このうち、多数登場するのはジェガン&ジムIIIとギラ・ドーガだけですから、機種統一が図られているとも言えますが、0093年時点でも新鋭量産機であるはずのジェダ、ザクIV、ガザGといった機体は登場しません。

 地球連邦(ロンド・ベル)、ネオ・ジオン(アクシズ)とも、0087~0088年を舞台とした『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ガンダムZZ』や、宇宙世紀0090年が舞台の『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』、宇宙世紀0092年を舞台とした『機動戦士ムーンガンダム』では、多種多様なモビルスーツを実戦投入しています。

 そして宇宙世紀0096年を舞台とした『機動戦士ガンダムUC』に、ザクIIIやガルスJ、バウといった0088年ごろの機体が多数登場することから、これらの機体が0093年に退役していたわけでもありません。

 その理由を「作画が面倒だから」「後発作品の後付設定なので」と考えるのは「作品の考察」ではありませんので「なぜ両軍がさまざまな機体を投入できなかったのか」考えてみたいと思います。

 地球連邦軍については、シャアの反乱に危機感を持ち、対応しようとしていた部隊が、ロンド・ベル隊のみ、と言っていいほど「限定戦力しか投入できなかった」政治環境が原因ではないかと思われます。

 地球連邦軍の高官は、ニュータイプの反乱を恐れてガンダム系モビルスーツ使用を制限したくらいですから、ロンド・ベル隊にできるだけ高性能な機体を渡したくなかったのでしょうか。

 普通に考えるなら、ロンド・ベル隊に必要な戦力を渡さないことは、コロニー落としをはじめとするネオ・ジオン側の軍事行動への対応能力を引き下げるだけで「ニュータイプの反乱」以前に、連邦政府がネオ・ジオンに打倒されかねないリスク案件です。

 実際、0088年にネオ・ジオンのハマーンは、コロニー落としを成功させて、連邦政府への政治的交渉を成功させていますから、シャアが同様の戦術を取ることは容易に想像できたはずです。

 アムロが「ガンダムを回してもらえない」と『ムーンガンダム』で発言していますが、彼の所属するロンド・ベル隊には、どう見てもガンダム系のシータプラスやリガズィード、リ・ガズィが配備されていますから、これは「ロンド・ベルに戦力を渡さない」ではなく「アムロ個人に、できるだけガンダムを渡したくない」が正しいのではないでしょうか。

 一年戦争の英雄であるアムロの名声は、名機ガンダムと結びついていますから、地球連邦首脳は「アムロがガンダムで戦果をより挙げて、政治家に転身する」に結びつく、アムロへの政治的注目が集まるような助力を、できるだけしたくなかったのでしょう。



ネオ・ジオン総帥、シャア・アズナブルが搭乗し、主人公アムロを追い詰めた「サザビー」。画像は「RG 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア サザビー 1/144スケール 色分け済みプラモデル」(BANDAI SPIRITS)

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一方のジオン軍の事情は?

 また『逆襲のシャア』でのロンド・ベル隊が、全ての戦力をアクシズ落とし阻止に向けていたとは思えません。ネオ・ジオン軍は偽装降伏艦隊をルナツーに向かわせ、真の狙いがアクシズ落としであることへの発覚を防ごうとしていました。

 ロンド・ベル隊の一部は、降伏したネオ・ジオン艦隊への監視・警戒任務に向かい、新鋭機ジェガンを搭載した主力をブライトが率いて、アクシズ落とし阻止に向かったとも考えられます。また、ブライトはこの戦いで核ミサイルを使用しています。0093年に南極条約が生きているかは不明ですが、場合によっては、責任を問われないことです。

 こうしたこともあり、自分と志を同じくする一部の部隊のみを率いて、アクシズ落下に向かったけど、地球連邦軍の一部部隊(ジムIII)もブライトに同調して、途中参戦したということだと思われます。

 一方、ネオ・ジオンはどうなのでしょうか。ネオ・ジオン側が一枚岩でないことは『ムーンガンダム』で、リュース・クランゲル少佐が独立勢力のように描かれていたり『ZZ』でも、ハマーンとグレミーが内乱になったりと、度々描かれています。

 そもそも、『ムーンガンダム』『逆襲のシャア』では、シャアとミネバという二枚看板でもあり、ジオン共和国という敵とも味方とも取れる勢力もあります。シャアとしては「部下は多くとも、信用できる兵力は一部」だったのではないでしょうか。

 実際、ジュドーが搭乗するZZガンダムと、性能に劣るリゲルグで渡りあったニュータイプのイリア・パゾムですら、アクシズ攻防戦には登場していません(今後『ムーンガンダム』内で、イリアが戦死するのかもしれませんが)。ニュータイプ兵士であった、エルピー・プルも多数クローンがいて、生き残っているはずですが、これらも参加していないのです。

 シャアは、ロンデニオンで勧誘した、ニュータイプの少女クェスを、いきなりパイロットにしているくらい人材不足ですが、部下たちの忠誠を疑っていたからだと思うわけです(選抜していたとしてもギュネイのように、忠誠度が微妙な面子がいますが……)。

「アクシズ落としでの地球寒冷化」は、ネオ・ジオン側でも土壇場でアムロに賛同して、アクシズ落としを防ごうとするパイロットが出るくらいですから、ネオ・ジオン内でも賛同が得られにくい作戦だったと考えられます。

 つまり、忠誠度が高い選抜した面々のみが出撃を許される作戦であり、作戦参加者の証として、新鋭機ギラ・ドーガが配備されたのではないでしょうか。

 しかし、もしクェスが味方にならなかったら、ギュネイがαアジールに乗り、ナナイがヤクト・ドーガで出撃したのかもしれません。