セルゲームではギャグキャラだったハズが……終盤に世界を救うファインプレーを見せるミスター・サタン 『ドラゴンボール改 人造人間・セル編 11』DVD(Happinet(SB)(D))

【画像】脇役だったクセに!「出世した」ジャンプキャラを見る(6枚)

強さ以外が右肩上がりの脇役たち3人

 少年マンガには、シリアスなシーンで場を和ませる、主役そっちのけで成り上がる脇役たち=コメディリリーフの存在が重要です。初登場時には小物だったものの、のちに活躍して読者から再評価された3人を、ビッグタイトルからそれぞれ集めてきました。

『ドラゴンボール』ミスター・サタン

 インフレした『ドラゴンボール』の中盤に、“格闘技のチャンピオン”という最序盤のステータスで迷い込んでしまった場違い感あふれるおじさん、それがミスター・サタンという男です。星をも壊せる悟空たちの間に割り込んで、瓦割りやマイクパフォーマンスを決める、セルにワンパンでふっ飛ばされても強がりを続けるなど、その道化っぷりにはベジータさえもが一周回って「バ バカの世界チャンピオンだ………!」と驚くほどです。

 そんなギャグキャラとして登場したサタンですが、強くて優しいヒーローだったことが魔人ブウ編で判明。サタンと魔人ブウに懐いた犬がチンピラたちに銃で撃たれた時に、バズーカ相手に素手で立ち向かって勝利しています。

 また、魔人ブウを倒すことしか考えていなかった悟空たちに対して、ブウと友だちになって平和的に解決しようとした功績も立派です。その姿を見ていたピッコロは、サタンの娘であるビーデルへ語ります。「力はオレたちにはかなわんかもしれんが やはりおまえの父は誇り高い世界チャンピオンだ……」

 サタンは物語のクライマックスでも、世界中の人たちに元気玉への協力を呼びかけて、動けなくなったベジータをとっさに救い出す活躍を見せました。その勇姿に、悟空からも讃えられることになるのです。「おめえはホントに世界の救世主かもな!」

『ONE PIECE』道化のバギー



再登場するたびに大物へ大出世するバギー 『ONE PIECE インペルダウン編』DVD2巻(エイベックス・ピクチャーズ)

「おれは後に”グランドライン”を制し!! 全世界のハデに輝く財宝を全て手中に収める男だ!!!」

 これはルフィの「“海賊王”に!!! おれはなるっ!!!!」に並ぶ、”道化のバギー”が放った事実上の海賊王宣言です。単行本2巻でルフィとバギーが出会って以降、たびたび再登場してはルフィとの因縁を強く印象づけられたライバルでもあります。

 それから幾つもの冒険を経て成長したルフィは、海底大監獄に収監されていたバギーと再会します。ルフィ同様、バギーも強くなっているのでしょうか……弱ーい! 全然小物のままだったーっ!

 ……と、ここでオチていればただのお笑いキャラですが、ここからがバギーのすごいところ。「てめェらに自由を与えた男の名を言ってみろ!!」と脱獄囚たちに恩を売って“海賊派遣組織・バギーズデリバリー”の下地を作ります。そのまま世界政府らの思惑に乗せられる形で、政府公認海賊の“王下七武海”、次にはグランドラインを支配する“四皇”の一角と、「自分以外の力」でのし上がっていきました。

 同じ“四皇”にまで上り詰めたルフィの激闘の歴史とは全く違う、夢の実現への裏街道を大爆走していく“千両道化のバギー”。武力では劣っても、的確な判断、強運、人心掌握術こそがバギーの本物の実力ということでしょう。

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実写版のおかげで人気があがった?

『るろうに剣心』の武田観柳



武田観柳を怪演した香川照之が、全面に映し出された実写映画『るろうに剣心』のポスター (C)和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

 その男、通称「ガトリング斎」……これは緋村剣心の異名「人斬り抜刀斎」に対して、身も蓋もなく飛び道具のガトリング砲をぶっ放す悪徳商人・武田観柳の尖りっぷりがネタとしてイジられて、インターネットで面白がってつけられたあだ名です。

 武田観柳は忍者集団「御庭番衆」を雇うも、悪事が剣心たちにバレて追い詰められると、彼らごとガトリング砲で皆殺しにしようとする最低の小悪党でした。動機は“お金”で、一片の同情の余地もありません。

 しかし、ここで終わらないのが令和の『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚・北海道編』です。その続編で、まさかの武田観柳・再登場!

「金で買えないものは差別を生みます」の名言と信念を引っ提げて、もちろん代名詞のガトリング砲への愛着も健在。偽名も雅桐倫具(がとうりんぐ)、ガトリング砲を手に「ガトガトガトガト」と、実写版映画のセリフを逆輸入して吼えまくります。

 金こそ全ての商人キャラが、実は悲惨な生い立ちから信念を育てていた、というのは定番の設定です。その悲惨な過去に対して剣心から共感を寄せられてもなお、彼を認めない武田観柳。確固たる信念の持ち主として、観柳は続編で一皮剥けたキャラクターとなりました。

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 今回挙げた3人の人生には、世間的な成功の目安である「名誉」や「お金」が共通点としてあります。主役級キャラクターの壮大な夢やテーマと比較すると、身近でわかりやすい価値観です。だからこそ彼らが実力以上に活躍するシーンは、我々読者が感情移入しやすく、応援したくなるのでしょう。