植田圭輔が信頼する仲間と作り上げる「はじまりのカーテンコール」稽古場レポート

根本正勝「圭輔は柔軟で熱い。彼の求めるオーダーに応えたい」

――本作はあらすじを拝見すると、とてもリアルな人間関係や心理描写が描かれる作品だと感じます。

根本正勝:僕たちが普段生きているこの世界と変わらない世界観のリアルな話です。友情、青春、親との対立、それから社会に出てぶつかるさまざまな大きな壁。誰にでもそういうことはあるのではないかと思うので、お客さまにも共感していただけるのではないかと。役者をやっている身としては、本作のキーワードにもなっている“役者”の部分にとても共感します。

――共感するところが多いリアルな世界線の作品と、エンタメ要素の強い作品とでは役作りは変わりますか?

どんな世界線であっても、その中で交わしている人と人との会話には嘘はつけないし、リアルなものだと思っています。もちろん表現の方法は違いますが、大枠は同じなんですよね。どんな役でもキャラクターでも、1人の生きている人間としてとらえれば。これからも、どちらも演じていければいいですね。

――7人という比較的少人数のキャストでの舞台です。稽古場の雰囲気はいかがですか?

無駄がなく、コミュニケーションも取りやすく、とてもいい現場ですよ。圭輔が考えてきてくれたプランをきちんと捉えて表現しようとしている人たちばかりです。稽古も、きちっとやるときと休むときのメリハリがきいていて、バランスがいいですね。

――植田さんと長い付き合いだからこそ感じる、演出面や稽古場作りでの「植田さんらしさ」はどこでしょうか。

柔軟さと熱さですね。舞台は、1カ月ほどの時間をかけて作っていくぜいたくなものですが、圭輔はそのずっと前から柔軟にスタッフの皆さんとコミュニケーションを取って、充分に準備してきてくれたのだと感じます。初日の立ち稽古で位置取りをしたのですが、すでに「圭輔はこうしたいんだ」と察するものがありましたし、迷いがなくてやりやすいです。

圭輔は稽古中に役者や周りをよく見ていて、自分が目指す方向に対して譲れない部分はしっかりと伝えてくれる一方で、僕ら役者の提示したものもどんどん取り入れてくれます。自分のやり方にこだわって枠を固めすぎてしまうこともなく、逆に、枠を突き破ったとしても「それおもしろいですね」と柔軟に対応できる。これは、圭輔がこれまで役者として得てきた経験値の高さによるものでしょうね、やりがいがあります。

柔軟にいろいろなことに対応している圭輔ですが、芯が熱い人なのは分かっているので、彼の求めるオーダーには応えたいと強く思っています。

――植田さんのように、第一線で活躍している俳優さんが脚本や演出を若いうちから手がけられることが増えてきたように感じます。根本さんはどのように感じられますか?

大賛成です! 僕も脚本・演出の経験があるのですが、その時にしか感じられないものや情熱というものがありますし、経験した人にしか分からない世界や見えない景色があります。これは脚本・演出に限らない話ですが、やると決めて行動した時点で7割くらいは成功していると僕は思っているんです。

やるからにはさまざまな挫折や苦労を経験すると思いますが、それは、動いた人だからこそ得られる勲章です。何かをやってみたいと思っている人は、その時の気持ちを大事にどんどん動いてほしいですね。僕は今回、そうやって動いてくれた圭輔の作品に参加できるのを嬉しく思っています。

――最後に、本作への意気込みとファンの皆さんへメッセージをお願いします。

圭輔のもとに集まった信頼できるキャストとスタッフで、今できる最高のものを作り上げていきます。今、わくわくしながら楽しみにしてくださっている方が、きてよかったと心から思ってくださるように。特別な空間である劇場という場所にくるのはやっぱりいいな…と感じて味わってもらえるものをお届けしたい気持ちでいっぱいです。ぜひ楽しみにしていてください。

取材・文・撮影:広瀬有希