ディアボロのもう一つの人格・ヴィネガー・ドッピオの存在もストーリーを複雑化させている。画像は『ジョジョの奇妙な冒険 第5部』第7巻(集英社)

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「時間を止める」と「時間を消し去る」の違いは?

 人気マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』は第3部からスタンド能力による戦いが始まりました。当初、登場するスタンドはバトルに直結した能力が多く、わかりやすいものが多かったのですが、部が進むにつれ、難解・複雑・独創的な能力が増えていきました。それもまたストーリーに厚みが出て楽しいのですが、一読では理解が難しい場合もあります。そこで、今回は特に難解な第4部と5部のスタンド4体について解説します。

「ありのまま 今 読んだことを書くぜ」

ディアボロ「キング・クリムゾン」

 第5部の主人公ジョルノ・ジョバァーナらが所属するギャング「パッショーネ」のボス・ディアボロのスタンドが「キング・クリムゾン」(以下:K・クリムゾン)です。このスタンドの能力は「時間を消し去る」というものでした。原作では消し去れる時間を十数秒としています。この難解な能力によって起きていることを少しだけわかりやすく描写しているシーンの例を挙げます。

1.フーゴがジョルノにカバンに入った水のペットボトルを取ってくれと頼む
2.ジョルノがカバンから水を取り出す
3.フーゴが水を飲む

 2と3の間には本来「ジョルノがフーゴに水を渡す」「フーゴがペットボトルの蓋を開ける」といった工程があるはずですが、別場所でK・クリムゾンが能力を使ったため、上記の工程分の「時間」が消し去られました。なおかつジョルノもフーゴも消し去られた工程の意識がなく、唐突に「フーゴが水を飲む」という結果に結びついているため、不思議がるしかありませんでした。

 これをバトルに使うとします。たとえば、「ゴールド・エクスペリエンス」(以下:ゴールド・E)が「K・クリムゾン」に殴りかかるという行動をとろうとしたとき……

1.ゴールド・Eが殴り掛かるという軌跡は存在する
2.ただし、K・クリムゾンはゴールド・Eが拳を振り上げコンタクトするまでの「時間」を消し去ることができるうえ、その時間内、ある程度動けるので回避が可能(接触は不可能なよう)。
3.ゴールド・E(ジョルノ)には「消し去られた時間」の意識はなく、意識を取り戻した時に拳はコンタクトしたものと思い込む
4.しかしコンタクトしたと思った場所にK・クリムゾンはおらず、消し去った時間内にK・クリムゾンはゴールド・Eの背後などに回り攻撃する

 こうやって見ると、「DIOの『ザ・ワールド』の『時間停止』と何が違うのか?」 となりますが、上記の例でいうとザ・ワールドは「時を止める」のでジョルノの殴りかかる軌跡を途中で止めることができ、止めている時間内に回避し、時間が動き出したらジョルノを攻撃できる、ということになります。ザ・ワールドとK・クリムゾンのどちらが強いかは、能力発動のタイミング次第になりそうです。

 この他、K・クリムゾンには「エピタフ(墓碑銘)」という「未来予知」能力もありますが、長くなりそうなので次の機会にします。



岸辺露伴が川尻早人のことを探ろうとしたため、バイツァ・ダストの恐ろしい能力が発動する『ジョジョの奇妙な冒険 第4部』第11巻(集英社)

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吉良吉影の「バイツァ・ダスト」の縛りが多すぎる!?

2体の『レクイエム』

 第5部終盤の「K・クリムゾン」戦で誕生する「シルバー・チャリオッツ・レクイエム」と「ゴールド・E・レクイエム」。第5部のクライマックスなので詳細は伏せますが、まず「チャリオッツ・レクイエム」は本体であるポルナレフの意思ではどうすることもできない暴走したスタンド能力です。このスタンドは、近くいた者の魂を入れ替えて、「映画『転校生』状態」にする能力を持っています。これによって、「見た目がナランチャで魂はジョルノ」というような状態になり、ストーリーがさらに複雑化しました。

 そしてクライマックスで出てくるジョルノの「ゴールド・E・レクイエム」もまた難解です。コミックスでは「攻撃してくるものの動作や意志の力を全てゼロに戻す」などと解説されており、このスタンドの力によりディアボロは第2部のラスボス、カーズを超える悲惨な結末を迎えます。

吉良吉影の「バイツァ・ダスト」

 第4部のラスボス・吉良吉影のスタンド「キラークイーン」には、3つの能力があります。ひとつめは、触ったものを爆弾にし、自分の意思で起爆できるという「第一の爆弾」。そして「第二の爆弾」と呼ばれる能力「シアーハートアタック」は、スタンドの左手から分離した爆弾戦車が熱感知で対象を自動追尾し爆発させます。そして問題なのは「第三の爆弾」である「バイツァ・ダスト」で、この能力はとにかく複雑でわかりづらいのです。

1.自分(吉良)以外の人物に、バイツァ・ダストを仕掛ける
2.仕掛けられた人物に、他者が吉良についての質問をしたり、仕掛けられた人物が吉良のことを話したりすると、聞いた側、知った側の瞳にスタンドが乗り移り爆発
3.爆発後、1時間ほど時間が戻り、同じ運命が繰り返される。2周目以降の運命で仕掛けられた側が起爆のきっかけに気づき1周目と違う行動をとったとしても1周目で殺された者が「爆死する」という結末は回避できない
4.繰り返される運命の記憶はバイツァ・ダストを仕掛けられた者のみ認識しており、吉良を含む他者はその記憶はない
5.爆発を回避するには「爆発する前」に吉良がバイツァ・ダストを解除する以外にない
6.バイツァ・ダスト起動中は、吉良のそばにキラークイーンはいない(近接戦はできない)

 これは吉良を捜索している東方仗助らから身を守るために、手がかりとなる少年、川尻早人に仕掛けられました。極めて複雑ですが仕掛ければ勝手に自分を守ってくれるという便利な能力です。しかし、早人の機転や吉良自身の油断などの要素が重なり破られています。「バイツァ・ダストの存在意義よ……」と考えさせられるスタンドでした。

『ジョジョ』の難解スタンドを4体紹介しましたが、難しすぎてこのコラム自体がきちんと伝わっているかが心配です。