熱気バサラがジャケットに描かれる、FIRE BOMBERのベストアルバム『「マクロス7」ULTRA FIRE!!』(JVCエンタテインメント)

【画像】ガンダムファイトをカレーで再現

「勝利はあたしのためにあるっ!」&「俺の歌を聴けぇっ!」

 1990年代に放送されたTVアニメには、数多くの個性的なキャラクターが登場し作品を盛り上げました。なかでも1994年から1995年にかけて登場した、特に際立った個性を持つ3人のキャラクターを紹介します。

リナ・インバース(スレイヤーズ)

 1995年に放送された『スレイヤーズ』の主人公リナ・インバースは、「悪人に人権はない!」をモットーに生きる天才美少女魔法使いです。「竜破斬(ドラグ・スレイブ)」をはじめとする強力な攻撃魔法で壊滅させた盗賊団は数知れず。盗賊から奪ったお宝で懐を温め、魔法で森や山を吹き飛ばし、何かあればすぐにケンカを売る凶悪さから「ドラゴンもまたいで通る」ともささやかれ、「ドラまた」の異名でも呼ばれ恐れられています。

 しかし傍若無人な性格ながら通すべき筋はきっちり通す義理堅さも持ち合わせており、親しい仲間たちからの信用は絶大。特に相方のガウリイとは作中でしばしば丁々発止の掛け合いを見せており、良いパートナー関係を築き上げています。

 まだ「努力・友情・勝利」といった「ジャンプ」的な価値観が色濃かった1990年代において、最初からとてつもなく強く性格的にもぶっとんでいる女性主人公は極めて珍しい存在で、その後のライトノベルやアニメのキャラクター造詣にも大きな影響を及ぼしています。CVを担当した林原めぐみ氏にとっても代表的なキャラクターであり、数多くの楽曲も担当。1期オープニング「Get along」、2期オープニング「Give a reason」、3期オープニング「Breeze」のいずれもが名曲として知られています。

熱気バサラ(マクロス7)

 1994年、久しぶりの『超時空要塞マクロス』のTVシリーズが果たしてどのような作品になるのか期待に胸躍らせていたファンの前に姿を現したのが、ロックバンド「FIRE BOMBER」のメインボーカルとリードギターを務める熱気バサラという想像をはるかに超えたキャラクターでした。

 人類とプロトデビルンが死闘を演じているど真ん中に真っ赤な専用バルキリーで突っ込んで、「戦争なんかくだらねぇ、俺の歌を聴けぇ!」と叫んで歌い出す光景は、ファンをあぜんとさせたものです。当初はなぜ主人公が戦わないのかと厳しい声もありましたが、バサラが戦いを歌で終わらせる覚悟を見せ続けるにつれファンの声も徐々に変化してゆき、最終的には熱烈な支持を受けるに至りました。作中でもガムリン木崎を始めとする軍人たちからは疎んじられたものの、熱意で徐々に信用を勝ち取り最終的には歌うバサラを軍人たちが「歌えバサラ!」と援護する場面もみられるようになりました。

 ミュージシャンとしての力量も超一級品ですがパイロットとしての能力も高く、戦場のど真ん中で歌いながらアコースティックギターをかき鳴らし、バルキリーで飛び回っているにも関わらず、ほとんど被弾したことがないほどの操縦スキルを保有しています。しかしバサラ自身に過去の記憶がほとんどなく、どこでこのような技術を身に付けたのかは不明のままです。本来であればストーリー上の重要なギミックとなりうる記憶喪失という要素を全く使わずに『マクロス7』という作品が1年間を完走できたことからも、熱気バサラというキャラクターが持つ熱量のすさまじさをうかがい知ることができます。

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「この馬鹿弟子がっ!」

東方不敗マスター・アジア(機動武闘伝Gガンダム)

 1994年から95年にかけて放送された『機動武闘伝Gガンダム』に登場した東方不敗マスター・アジア(以下、東方不敗)こそが、90年代アニメを彩る最強のサブキャラクターでしょう。流派「東方不敗」を極めた武道の達人で、主人公のドモン・カッシュの師匠にして生身で巨大なデスアーミー軍団を手玉に取る圧倒的な実力者。第12話「その名は東方不敗!マスター・アジア見参」で初登場した際には機銃弾を足場に飛び回り、手ぬぐい一本で頭部を破壊し、足場のコンクリートごとデスアーミーをひっくり返し、視聴者の度肝を抜きました。

 地球環境浄化のためにドモンと敵対してからはマスターガンダムを駆り何度も死闘を繰り広げますが、最終奥義「石破天驚拳」を伝授するなど師匠としてドモンを鍛える場面も見られました。

 そして第13回ガンダムファイト決勝大会のバトルロイヤルでドモンと対戦、互いに秘奥義を尽くす激闘のなか、石破天驚拳の打ち合いの果てに石破天驚ゴッドフィンガーを受け、安らかな顔でドモンを真のキング・オブ・ハートとして認め、敗北を受け入れました。最後、ドモンと共に夕日を眺めながら繰り広げられたふたりの別れはアニメ史上屈指の名場面であり、真の最終回とも呼ぶファンも少なからず存在しています。