OPで歴史的建造物を燃やしたのは後にも先にも『大魔法峠』だけ? 画像は『大魔法峠』DVD(ジェネオン・ユニバーサル)

【金閣寺がッ!】『大魔法峠』のオープニングで重要建築物が燃えまくっている衝撃の光景を見る

大御所声優発の奇抜なソング

 アニメのオープニング映像には、その作品の魅力がこれでもかと詰まっているものです。尖った作風のアニメの場合には、大抵オープニングも奇抜な方向性になっているのではないでしょうか。今回はそのなかでも多くの視聴者たちを驚愕させた、「トンデモ」と形容するほかないオープニング映像の数々を紹介していきましょう。

 印象的なアニメのオープニングといえば、2000年代屈指の怪作『大魔法峠』が筆頭に挙げられます。同作は『ガールズ&パンツァー』や『SHIROBAKO』、『監獄学園』などを手掛けた鬼才・水島努氏による監督作品です。魔法の国から地上の学校に転校してきた田中ぷにえが、関節技を駆使して天下布武を目指していく物語で、ハチャメチャな内容によって話題を呼びました。

 その混沌とした作風は、オープニングから発揮されており、映像内ではありとあらゆる日本の歴史的建造物が炎上させられています。サビに入ると、ぷにえが笑顔でステップを刻んで踊り始めるのですが、その背景にはなぜか燃え盛る金閣寺がありました。

 さらにそこから法隆寺や国会議事堂、東京タワーなど、日本を象徴する建造物が次々燃やされていきます。比較的コンプライアンスがゆるい時代だったとはいえ、一種の衝撃映像だったことはいうまでもありません。

 暴挙に及んだ理由は水島監督のみぞ知るところですが、皇居を燃やす許可が下りなかったため、代わりに国会議事堂を火だるまにしたという逸話はファンのあいだでも有名です。いまなおネット上で語り草となっており、「何度聞いても草しか生えない」「なんで国会議事堂を燃やす許可が取れてんだよ(笑)」「大魔法峠のOPはもはや伝説」といった声が見受けられました。

 またハチャメチャさ加減で引けを取らないのが、『絶体絶命 でんぢゃらすじーさん』第2期のオープニングです。じーさんが迷路に仕立て上げられたタイトルロゴをひたすら走り続けるだけの映像もさることながら、バックで流れる「ててててーてて」のフレーズが、今でも耳に残っている人も多いことでしょう。

 この楽曲は「お願いだからうたわないで」というタイトルで、第1話から第26話までを孫(洋助)役で作中の効果音も担当した声優・恒松あゆみさんが歌唱していました。なぜ歌詞のほとんどが「て」で構成されているのか、そこに至った経緯については恒松さんが自身のブログ「Aeolian Sound」で明かしています。

 いわく第1話の収録時に音響監督を務めていた声優・千葉繁さんから「オープニングの歌も歌ってもらいます」と命じられ、音楽を聴いたものの、肝心の歌詞がなかったそうです。そこで「あの、千葉さん、歌詞は……」と尋ねてみたところ、「ん~、そうだねぇ。じゃあ『て』で」というまさかの答えが返ってきたのでした。どんな思考回路で「て」に行き着いたのかはわかりませんが、千葉さんの思いつきがなければ、この電波ソングは生まれていなかったのかもしれません。



TVアニメ『魔法騎士レイアース』ビジュアル (C)CLAMP・ST/講談社・TMS

(広告の後にも続きます)

衝撃のクオリティによって伝説となったオープニング

 最後は少し路線を変えて、王道の内容ながらクオリティが高すぎたため、「トンデモ」要素が生まれてしまったオープニングを紹介しましょう。それは1995年に放送された『魔法騎士レイアース』第2章の後期オープニングです。

 その映像は女性アーティスト・田村直美さんが歌唱する「光と影を抱きしめたまま」に乗せ、「魔法騎士」たちの変身シーンや戦闘を描くものでした。これだけ聞くと普通の映像だと思われるかもしれませんが、異常なほどに作画がよく、ヌルヌルとした動きになっていたため、「鳥肌もの」「神作画中の神作画」と評されています。

 しかも当時のアニメはCG技術などが使われておらず、ほとんどが手書きのセル画で制作されていました。そんななか、同オープニングに使用されたセル画の枚数は驚愕の約6000枚とのことです。これはアニメの約2話分に相当する数であり、たった90秒の映像としては異例中の異例といえるでしょう。

 ちなみに当初はさらに枚数を増やして動かす予定だったようで、設定資料集に掲載されている絵コンテを見ると、ランティスとイーグルが背中合わせに映る場面には、髪やマントをなびかせるよう指示が書き込まれていました。もし本当にそこまで動かしていたら、アニメーターの方々は限界を超えていたかもしれません。そう考えると、6000枚という異常な枚数ですら英断といえそうです。

 意外な発想や血の滲むような努力も相まって、視聴者に強烈なインパクトを残したオープニング映像の数々は今もファンの心に残っています。その歴史は、未来のアニメファンへと語り継がれていくことでしょう。