ヴァニラウェア渾身の1作となった『ユニコーンオーバーロード』に、ユーザーの反応は……?

【画像】えっ、ビジュアルすごつ! これが「職人集団ヴァニラウェアの歴代タイトル」です(7枚)

大作に負けない『ユニコーンオーバーロード』の躍進

 ゲーム業界の勢いは2024年に入っても留まるところを知らず、年明けから春にかけ、さまざまな大作や話題作が登場しました。

 まず2月は、『ペルソナ』ファン待望のリメイク作『ペルソナ3 リロード』が登場したほか、『ファイナルファンタジー』シリーズ屈指の名作を現代に蘇らせる『ファイナルファンタジーVII リバース』がリリースされており、ゲーマーたちのプレイ時間を軒並み奪います。

 また3月に入ると、世界的に知られたヒロインが主人公を務めた『プリンセスピーチ Showtime!』や、前作のネックだったフィールドサイズを大きく改善した『ドラゴンズドグマ 2』、19世紀の日本を舞台とするオープンワールド・アクションRPG『Rise of the Ronin』など、こちらもビッグタイトルが並びました。

 こうした大作や話題作にちょうど挟まれた形になった3月8日、ヴァニラウェア開発の最新作『ユニコーンオーバーロード』が発売されました。

 ヴァニラウェアは、『オーディンスフィア』や『朧村正』、『ドラゴンズクラウン』などゲームファンに好まれやすい作品を手がけており、根強い支持を集めています。しかし一方で、その知名度はコアなユーザー層に広まる傾向にあり、カジュアル層への広がりはまだ一歩譲る面がありました。

 しかも今回リリースした『ユニコーンオーバーロード』は、遊ぶ人を選ぶシミュレーションRPG。好むユーザーは一定数いますが、未経験の人は手を出しにくいジャンルです。そのうえ、前述の通り発売日が大作や話題作に挟まれており、苦戦は免(まぬが)れないのでは……といった見方もありました。

 そのような『ユニコーンオーバーロード』が「異変」と言っても過言ではないような事態を迎えているのです。

仕入れの予想を上回る人気ぶり!? パッケージ通常版すら品切れに

『ユニコーンオーバーロード』は、通常のパッケージ版のほかに、さまざまな特典が付属する限定版「モナークエディション」もラインナップされました。ヴァニラウェアは熱心なファンが多いため、限定版の予約率は基本的に高め。今回も、早々に売り切れるだろうと思われていました。

 そして迎えた発売日、案の定「モナークエディション」の人気は高く、各通販サイトは予約分だけで締め切られ、当日販売はほとんどありません。また実店舗の販売も、早い時間から「限定版が買えなかった」との報告がX(旧:Twitter)に飛び交いました。

 一般的に、ゲームの限定版が売り切れることはそう珍しい話ではありません。しかし、話が違ってくるのはここからでした。X(旧:Twitter)には、「通常版(パッケージ)」の売り切れ報告も続々と舞い込んできたのです。

 一部の店舗で通常版が売り切れた程度では、その報告はさほど目立ちません。ですが、「ハシゴしたけど見つからない」「3店目でようやく買えた」「PS5版を諦めてPS4版を買ってきた」といった投稿が矢継ぎ早に届き、売り切れるほどの人気ぶりが広域に及んでいることがうかがえたのです。

「声が大きい人の意見が目立っていただけでは」と考える人もいるかもしれません。しかし、発売日から数日経過した3月12日、発売元のアトラスが「『ユニコーンオーバーロード』品薄のお詫びとお知らせ」を発表し、多くの店舗で品切れや品薄の状況にあると報告します。

 発売日早々から、限定版だけでなく通常版も品切れが相次いだ『ユニコーンオーバーロード』、本作に起きた「異変」はまだ始まったばかりでした。



『ユニコーンオーバーロード』Nintendo Switch版パッケージ

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売り上げにも「異変」の兆しが

品切れが1ヶ月近く続いた『ユニコーンオーバーロード』

『ユニコーンオーバーロード』は発売後すぐに、通常版の入手が困難になります。そうしたなかアトラスは「パッケージ通常版は順次出荷を行っております」と報告しており、ほどなく品切れは解消されると思われていました。

 しかし、通常版の品切れは即時解消されるどころか、発売から3週間を過ぎてもなお、店頭では「品切れ中です」の文字を見かけました。入手難に戸惑う声はX(旧:Twitter)を遡っても聞こえてきますし、筆者が個人的に見かけた範囲だけでも、3月28日には「ゲオ」で、4月2日には「古本市場」で、Nintendo Switch向け通常版の品切れを確認しています。

 再生産にいくらかの時間がかかるとはいえ、3週間も入荷がなかったとは考えにくいところです。「順次出荷」という言葉を踏まえると、各店舗に随時、入荷したうえで、その分もまた売れて品切れになったと見るのが順当でしょう。

 発売直後に通常版が売り切れるだけならまだしも、約1か月にわたって入荷と品切れを繰り返したと思われる『ユニコーンオーバーロード』の勢いは、大作と比較しても遜色ないほど。カジュアル層にリーチしにくいヴァニラウェアの作品としては、まさしく「異例」の展開です。

発売から1か月で、ヴァニラウェア史上最速の出足を見せる

 ヴァニラウェアのヒット作といえば、2019年11月に発売された『十三機兵防衛圏』を思い出す人もいるでしょう。こちらの作品は、全世界累計販売本数が100万本を超えており、見事ミリオンヒットを果たしました。ADV+SLGというジャンルでこの売り上げは、特筆すべきものといえます。

 ちなみに『ユニコーンオーバーロード』は、発売から1か月ほどで販売本数が50万本を突破(全世界累計)。この記録を記念する「アコレードトレーラー」も公開され、その躍進ぶりが広く知られました。

 単純にこの数字だけ取り上げると、『十三機兵防衛圏』の方が上回っているように思えます。ただ、『十三機兵防衛圏』が売上100万本を記録したとの発表は、2023年8月31日に行われたものです。発売日から4年近くの時間をかけて到達した数字でした。

 プラットフォームの展開先が少なく、しかもスイッチ版は時間差での発売となった『十三機兵防衛圏』と、スイッチ/PS5/PS4/Xbox Series X|Sに向けて同時発売した『ユニコーンオーバーロード』とでは、出足の速さが異なるのは当然でしょう。それを加味した上でも、1か月で50万本達成という駆け上がり具合は、ヴァニラウェア史上「異例」と称するほかありません。

「異例」づくしの『ユニコーンオーバーロード』は、ゲーム性も見事の一言

 本作はダウンロード版も配信されているなか、通常のパッケージ版も長く売り切れが続きました。その人気は売り上げにも反映され、大作と肩を並べる販売本数を早くも達成しましたが、その成功を支えた理由はいくつか考えられます。

 ヴァニラウェア自体がもともと人気が高く、固定ファンが多かったこと。『十三機兵防衛圏』の成功で、知名度が上がったこと。大作に挟まれつつも、ジャンルが異なっており、ユーザーを上手く掴んだこと。そうした状況も、追い風となりました。

 ですが何より重要なのは、『ユニコーンオーバーロード』が高く評価されるに値するゲームだったことです。本作は一般的なSRPGと全く異なり、1戦1戦が非常に短く、このジャンルでは珍しいほどテンポ良くサクサクと進みます。

 反面、ユニット同士の相性が非常に重要で、そこから有用な組み合わせを見つける戦略的な醍醐味は、まさにシミュレーションゲーム本来の面白さ。バトルの時間を極力「時短」しつつ、SRPGの手応えを両立させた『ユニコーンオーバーロード』の大胆なゲームシステムこそ、「異例」と呼ぶべきかもしれません。

『ユニコーンオーバーロード』
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