「ケサランパサラン」の回が収録された『地獄先生ぬ〜べ〜』9巻(集英社)

【画像】『ぬ〜べ〜』では珍しい?恐怖回の合間に楽しめる「ほのぼのエピソード」たち(4枚)

幸せを呼ぶ妖怪たちのハートフルエピソード

「週刊少年ジャンプ」で連載されていた『地獄先生ぬ〜べ〜』では、読者の子供たちがトラウマを植え付けられるような恐ろしい回もあれば、妖怪は出てくるけど心が温まるエピソードの回もありました。今回は特におすすめな、4つのほのぼの回を振り返ります。

幸せを運ぶ少女の巻……ぬ〜べ〜と座敷童子の心温まる交流

 ある休日、鬼の手パワーを悪用してパチンコで大当たりを出しまくり、罰が当たってケガをしたぬ〜べ〜。そんな彼を見て笑う着物姿の少女がいました。彼女は幸福をもたらす妖怪・座敷童子で、ぬ〜べ〜は座敷童子にせんべいをあげて仲良くなります。
 翌朝、ぬ〜べ〜が教室にやってくると、そこにはぬ〜べ〜を気に入った座敷童子の姿がありました。すると、ぬ〜べ〜のクラスの生徒たちは、座敷童子の力で抜き打ちテストでいい点数を取ったり、たまたま窃盗犯を捕まえたり、体育でスーパープレーを成功させたりと、ツキまくるようになります。そして、生徒たちはだんだんと調子に乗るようになっていきました。そんな様子を見て、ぬ〜べ〜は「幸運に恵まれすぎるのもよくない」と思い始めるのですが……。

 座敷童子のビジュアルのかわいさ、人びとの幸福のために自分のすべてをかける健気さに癒され、泣けてしまうエピソードです。幸運続きで調子に乗った広が事故に巻き込まれ、生徒たちが「幸運に頼ってちゃだめだ」と気づく教訓話としてもよくできています。また、みんなを助けるために妖力を使い果たして消えたと思われた座敷童子が、ぬ〜べ〜たちに見せる初雪の美しさも心に残ります。この座敷童子はその後もたびたび登場する人気キャラとなりました。

幸福のケサランパサランの巻……美樹がみんなにプレゼントした最高のクリスマス

 クリスマス間近のある日、ぬ〜べ〜は美樹の髪の毛に「ケサランパサラン」がついているのを発見します。ケサランパサランは勝手に動く白い毛玉状の謎の生物で、持ち主に幸運を呼ぶというのです。それを聞いた美樹は、せっかく手に入ったケサランパサランを使って、幸せになろうと画策。

 ケサランパサランはおしろいと一緒に瓶に入れておくと増殖する特性もあり、翌朝に美樹が一気に増えたケサランパサランを持ち歩きながら願いごとをすると、小銭を手に入れたり、キムタクに出会ってサインをもらったり、レストランで間違えて作られた豪華料理をタダでごちそうになったりと、散々いい思いをします。そして、登校した美樹は、ケサランパサランが増えたことをぬ〜べ〜たちに隠して、幸運を独り占めしようとするのですが……。

 美樹がいつも通りのがめつさを見せつつ、最後はみんなを救うための利他的な目的で「ケサランパサラン」を使う感動回です。デパートでガス漏れにより大爆発が起きるなど、起きている惨劇自体は『ぬ〜べ〜』のなかでも大きめですが、美樹の願いでケサランパサランが増殖してぬ〜べ〜たちもケガ人も救われ、町中にケサランパサランが降り注いでみんなへの素敵なクリスマスプレゼントとなるのでした。その後、ケサランパサランは最強の妖怪「ヤマタノオロチ」との戦いでも、みんなを救う重要な役割を果たしています。



濡れ女子とオタクの恋が描かれた『地獄先生ぬ〜べ〜』10巻(集英社)

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ぬ〜べ〜にも希望を与えた妖怪と人間の恋物語

濡れ女子に恋した男の巻……妖怪と人間の純愛ストーリー

 雨の日に水辺に現れ、笑いかけて笑い返してきた男に取り憑き、じわじわと死に至らしめる恐ろしい妖怪・濡れ女子。しかし、濡れ女子が取り憑いたある男は、もともと不潔で陰気で、濡れ女子の能力で家じゅうをジメジメさせても全く気にせず、病気にもならないというさらに恐ろしい引きこもりオタクでした。

 おまけに、変なコスプレまでさせられるようになった濡れ女子は、自分とその男を引きはがしてくれと、ぬ〜べ〜にお願いにやってくるのです。しかし、妖怪の特性ゆえにその男に取りついている彼女を引きはがすことはぬ〜べ〜にもできず、濡れ女子はやけになって男を車道に突き飛ばして殺そうとするのですが……。

 この回では濡れ女子のかわいさと、自分を殺そうとした濡れ女子がピンチに陥っているのを見て、怪我をおして「君のためなら…死ねる」と全力で助けようとするオタクの男気が大きな見どころです。世間からはずれていた男にとっては、妖怪でもそばにいてくれる人は大事であり、妖怪と人間の垣根など関係なかったのでした。濡れ女子も彼の優しさに惚れ、ハッピーエンドとなります。

 ぬ〜べ〜自身もこの回の数話前に、一度死んで記憶を失った雪女の恋人・ゆきめと再会しており、彼自身も人間と妖怪の恋に対して前向きになれた重要なエピソードです。

種まき妖怪・たんころりんの巻……まことが見つけたエコ妖怪

 ぬ〜べ〜クラスで一番見た目が幼い男子・まことはある日、工事中の空き地に種をまき、粉を振りかけてあっという間に植物を咲かす奇妙な妖怪を見ます。その妖怪はいたるところに緑を増やす、古い柿の木の精霊「たんころりん」でした。たんころりんが寝てしまったので、まことは彼が持っていた不思議な粉の入った袋をこっそり持ち帰ります。

 まことがその粉を使ってみると、メダカが一気に繁殖したり、カイワレ大根が立派な大根に急成長したりと、とんでもない効果を発揮。クラスのみんなが粉の効果を知った後は、広の髪や美樹の鼻毛が異常に成長、ぬ〜べ〜の眉毛もびろびろに伸びるなど大騒動となってしまい、まことは叱られてたんころりんに袋を返しに行きます。たんころりんがいた空き地はアスファルトで固められてしまっていましたが、まことが袋を返すと、たんころりんはあたりに粉をまき、植物たちはアスファルトを突き破って急成長を遂げるのでした。

 自然の生命力のすさまじさ、人間の環境破壊の問題などを描いた回ですが、まことが主人公ということもあって、全体的に牧歌的な雰囲気のエピソードです。袋を奪われたとわかっても全く怒らないたんころりんの懐の深さや、有害物質「六価クロム」がしみ込んだ土地でも緑を復活させる能力の高さも凄すぎます。