アルミだらけで個性が薄くなったスーパースポーツに、スチールパイプの逞しい懐かしさを耐久レーサーに重ねる……

ン? GSX-Rに1200? それにSSって?……濃いスズキファンなら知っているGS1200SSの車名でも、一般的にはあまり記憶にないかも知れない。
そもそもGSXではなく敢えてGSと呼ばせても、搭載している油冷のDOHC4気筒はバンディット系の4バルブ。
2バルブだったGSを4バルブ化でGSXと呼び方を変えた歴史の推移を自ら壊し、GS1000時代を想起させるすべてはノスタルジックなイメージのためだ。

ヨシムラがスズキとタッグを組んで活躍した鈴鹿8時間耐久レース……空冷2バルブの時代は、まだレプリカ全盛より前で、アルミフレームもまだ見かけなかった。
そんな鉄の丸パイプで構成された懐かしくも逞しさを感じさせる、男気の強かった時代をアルミフレームを真っ先に採り入れたスズキ自身が懐かしむノスタルジーとしてリリースしたGS1200SS。

最新のSSが軟弱というワケではないのだろうが、最先端で最軽量を追求してきた陣営には、マシンというよりどこかオートバイらしさを湛えた、街中で「サーキット風」を楽しむ日本的なカフェレーサーというカルチャーへの挑戦といったところをコンセプトとしていた。

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アンチ派が多い社風の賛同を得てデビューしたものの機は熟さず!

果たしてそのような時流に竿を差すバイクに人気が集まるのか……マイノリティを自負するチャレンジングなスズキだったが、さすがに懐疑的な意見もあって社内で賛否を問うまでしたが、圧倒的に肯定する側が多数だったという。
とはいえ、デビューでアピールしたブラックな「男気」イメージだと、そもそもの耐久レーサーのイメージも伝わりにくく、スズキといえばレースでお馴染みのブルーをアレンジする戦法へと変わっていった。因みに燃料タンク形状も変わり、容量が20リットルから18リットルへと少なくなっている。

しかし企画から開発段階までは勢いがあったものの、実際にリリースされるとレプリカ時代の終焉とネイキッドブームも平坦化した状況で、カウルのついた’80年代を懐かしむ日本流カフェレーサーというポジションに飛びつく層を掘り起こせないままとなってしまった。
いかにも時期尚早なタイミングに、何と2シーズンで姿を消す短命なモデルだった。