「軽自動車は高齢者の必需品」「免許返納ムリ」 家族は言い出せない? “移動のジレンマ”浮彫りに

日本自動車工業会が2023年度「軽自動車の使用実態調査」の結果を公表。60歳以上の利用が多数を占め、これらの人々が「ほとんど毎日」使っていました。調査した自工会は「軽はライフライン」人口密度の低いところほど切実と分析します。

平均運転年齢高くても毎日運転、趣味レジャーの新利用が利用年齢を下げるか

 軽自動車を運転する人は、高齢者が多い。体感の予想を上回るような調査結果が、日本自動車工業会の2023年度「軽自動車の使用実態調査」で裏付けられました。

 軽自動車を用途別にファミリー層の移動手段である「軽乗用系」、宅配などに使われる「軽キャブバン」、農作業などで使われる「軽トラック」の3つに分類。主な運転者の年齢層を分析しました。訪問調査などから2574の有効回答を得た軽自動車の主な運転者の中で60代以上(60代、70代以上)と平均年齢が以下です。

・軽乗用系:21%・21%(平均55歳)

・軽キャブバン:21%・28%(平均59歳)

・軽トラック:30%・37%(平均63歳)

 60歳以上の利用が最も割合が低い軽乗用系でも約40%。軽トラックでは67%を占めています。「2021年度と比較すると、若干高齢者の割合が減少し、高齢化の進展にやや打ち止め感が見られる状況」と、軽自動車使用実態調査TFリーダーの村木政志氏は語ります。

 調査ではその利用実態も見えてきました。「ほとんど毎日乗られる方が中心ですが、その中で(今回の調査では)軽乗用系の月間平均走行距離が398km。これについては、どんどん減少している傾向が見受けられます」と指摘しました。

 市場動向調査は2年に1度。2015年度の平均走行距離は473km/月でした。今回の調査は前回2021年度より平均で1km短くなっています。

 軽乗用系よりさらに高齢者中心の軽トラックは、用途の46%が農作業ですが、そのほかの用途ではトラックなのに乗用用途が19%と増加しています。

「買物、趣味レジャーの用具の運搬、通勤通学といった使われ方が上昇しています。これは軽トラックで室内が広くて荷台が狭い、ビッグキャビンタイプの販売構成が増えているということが関連しているものと想像されます」(村木氏)

 車両購入の支出は販売価格の上昇を反映しているのでしょうか。新車購入者に限定すると、約60%が180万円以上の車両を購入し、その価格は2021年度の調査より20万円上昇しています。

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軽自動車はライフライン なくなっては困る

 軽自動車市場動向調査は、ずばり軽自動車の存在意義にも切り込んでいます。

 今や軽自動車が新車販売の4割を占めるなど、全国的に保有比率が高いことは知られていることですが、どこに偏在しているのか。調査では人口構成比で地域を低密度、低中密度、中密度、高密度に分けて、軽自動車の保有地域を数値化しています。

「低密度地域というのは人口密度で500人、そこに住む人は人口構成比で28%ですが、軽自動車の保有割合でいうと45%が集中しています。そこで重ねて、『軽より大きい車しか使えなくなった場合に困るか』という質問をすると、やはり低密度の地域、いわゆる地方圏に行けば行くほど、困るという回答が増える」(村木氏)

 軽自動車はライフラインだと思うか、という質問にも、軽を必需品だと思う気持ちが現れています。「軽自動車は人口密度が低い地域ほど、生活に必要なライフラインとなっており、(なくなったら困るという)困窮度が高まるということがわかりました」(同)

●軽自動車がライフラインであると思うか?――「そう思う」の回答率

・全国平均:46%

・低密度地域:54%

・低中密度地域:46%

・中密度地域:42%

・高密度地域:32%

安全は高くつく、というジレンマ

 しかし、軽自動車を必需品とする利用者にもジレンマがあります。先進安全技術や装備に対する安全意識です。調査では、こうした装備を具体的に複数、候補を上げて、装着したいかどうかを質問しました。

「各機能の名称と簡単な説明文を読んで、つけたいか、つけたくないかを回答する質問ですが、衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置の2つが、高い装着意向でした。その装備機能を『追加費用ありでも装着したいか』、すなわちこれをつけることで価格が上がってもいいかというような内容の質問になると、つけたいという意向は大きく割合が減っております」(同)