昭和初期から小樽・花銀界隈を見守る、北海道洋菓子界の先駆け

JR小樽駅から徒歩13分ほど、小樽随一の繁華街「花薗」エリアのメインストリート・花銀通り沿いにあり、地元の人たちに長年愛されている洋菓子店が「洋菓子の館(ようがしのやかた)」です。
洋菓子の館、通称「館」のルーツは昭和11年(1936)に開業した喫茶室「ダリア」。現在地に移ったのはその4年後のことだったそう。

売り場のショーケースに並ぶのは常時20種類以上のケーキ。四季折々の季節限定品も登場します。喫茶室利用の場合は、着席前に食べたいケーキを決めて会計を済ませるのが「館」スタイルです。

売り場から喫茶室を覗き込んだだけで、もう素敵空間への期待が高まります

シャンデリアとステンドグラスは「館」のシンボル的存在

シャンデリアとステンドグラス、赤いビロード張りの椅子が印象的な「館」の喫茶室は、開業以来90年近くにわたり多くの地元の人たちの憩いと交流の場となってきました。

パーツには気品ある陶磁器も使われるなど、見れば見るほど美しいシャンデリア

喫茶室内には小樽生まれの彫刻家・國松明日香さんの彫刻作品も。「館」という名前を命名したのは明日香氏の父で洋画家の國松登氏だそう

昭和初期の時代にはまさに「ハイカラ」という言葉がピッタリの空間で、瞬く間に小樽っ子憧れの存在となったであろう様子が想像できます。

店内あちこちに飾られる、品とレトロ感のあるインテリア

当時の小樽は喫茶店もまだ少なく、お菓子と言えば和菓子が中心だった時代です。生クリームを利用した洋菓子づくりでは、北海道の先駆けとも言えるお店なのです。


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小樽スタイルの「モンブラン」は削りチョコがのったチョコレートケーキ!?

「モンブラン」480円。プラス400円でコーヒーまたは紅茶がセットになります(コーヒー、紅茶は単品各470円)

モンブランといえば、丸いタルトやスポンジの上にマロンクリームを絞り出したケーキを想像するのが一般的ですよね。

けれど小樽の老舗洋菓子店では、モンブランと言ったらココアスポンジに生クリーム、削りチョコがのったチョコレートケーキ。その理由には諸説があり、昭和初期に「東京でモンブランというものが流行っているらしい」と聞いた洋菓子職人が「モンブランと言えばスイスの名峰。その名前をつけたケーキとはいったいどんなものだろう」と想像しながら作ったのがこのスタイルだったという説や、当時の小樽では良質の栗が手に入らなかったことからある洋菓子職人が苦肉の策で考え出したなどの説があるそうですよ。

そう聞いて改めてこのモンブランをよく眺めれば、ココアスポンジと削りチョコレートは岩肌に、生クリームは万年雪に見えてきませんか?

奥から「苺ショート」540円、「館モンブラン」480円、「ブルーベリータルト」540円

モンブラン以外にも、イチゴショートやブルーベリータルトも根強いファンが多い人気のケーキです。約50年にわたり館の味を守り続けてきた職人の武田孝信さんにおいしさの秘密を尋ねると、返ってきたのはこんな答えでした。

「北海道産の乳製品をはじめ、常に良質の素材のみを使うことを心がけています。当店のお客様は地元の方を中心に、親子3代、4代と長く通ってくださる方がたくさんいらっしゃいます。万が一わずかでも味を落とせばすぐに見抜かれてしまいますから、どんな時でも決して手を抜かず、ただ誠心誠意、誠実なお菓子作りを続けています」

「クリームあんみつ」850円

喫茶室ではあんみつやみつまめ、クリームぜんざいも人気。昭和情緒漂う落ち着きある空間で、ゆっくりと優雅にいただく和スイーツの味わいは格別です。


スタッフの接客も真心のこもって温かく、北海道弁の「あずましい」と言う言葉がしっくりくる「館」の喫茶室。一人でもグループでも心地よい時間過ごすことができます。