2023年にスタートした「日本水中フォトコンテスト」。この連載では第1回の上位入賞者の皆さんに、フォトコンへの思いや水中写真上達の秘訣などをインタビュー。第六弾は、清水淳賞に輝いた河田啓奨氏をご紹介。

清水淳賞「弾けるギンガメ玉」 撮影/河田啓奨氏

「作品の中で気に入っている部分を、評価していただけて光栄だった」

オーシャナ編集部(以下――)

第1回「日本水中フォトコンテスト(以下、JUPC)」にて、清水淳賞を見事受賞されました。受賞されたとき、どのように感じられましたか?

河田啓奨氏(以下、河田氏)

とても光栄だと思いました。

――フォトコンテストには、以前から作品を出されていたのでしょうか? またJUPCに応募しようと思ったきっかけは何かありますか?

河田氏

以前、マリンダイビングのフォトコンテストに作品を出したことはありました。日本水中フォトコンテストはそれをさらにスケールアップしたコンテストだと思い、魅力を感じて応募しました。

――審査員の水中写真家の先生たちから、ご自身の作品の評価を聞かれて、いかがでしたか?

河田氏

ストロボの光量や、カメラの設定による写真の出来を評価していただいたように思いました。この写真は、青空と雲がきちんと写っているというのが、僕の中ではすごい好きな部分なんですが、そういったところを評価していただけたのがとても嬉しかったです。

――ところで河田さんは、沖縄でダイビングショップ「DIVE JOURNEY」を経営されていますが、沖縄にはダイビングの仕事をするために移住されたのですか?

河田氏

ダイビングの仕事をするために来たわけではありません。以前からダイビングは趣味程度にやっていましたが、移住してからダイビングを本格的に始めたという感じです。すぐにインストラクターコースまで取得して今の店を立ち上げたので、どこかで下積みを積んだわけではないんです。

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ダイナミックに形が変わっていく魚群を撮るのが好き

―河田さんが水中写真を始めたきっかけがあれば、教えてください。

河田氏

SNSが広まってきて、水中写真を撮りたくなりました。今はインスタグラムから来るお客様が多いのですが、店のほうでもきちんと撮影した水中写真をあげるように頑張ったということはありますね。

――そうなんですね。「DIVE JOURNEY」のインスタグラムを拝見しましたが、たくさん水中写真がアップされていますよね。河田さん以外にも水中写真を撮るスタッフの方がいらっしゃるんですか?

河田氏

基本的にはメインガイドとして僕がいて、水中写真も撮っていますが、ほかの2名のスタッフも撮影して、インスタに写真を上げるときもあります。

――ショップでよく行かれているのは、どの辺りの海ですか?

河田氏

よく潜りに行っているのは、慶良間諸島や粟国島です。

――入賞作品も撮影地は粟国島でしたね。ギンガメアジの二つの群れが迫力満点に撮られている作品ですが、やはりギンガメアジなどの魚群が、お好きな被写体なんでしょうか?

河田氏

ギンガメアジの群れだったり、マンタだったり、ワイドの写真が好きです。魚群の形がダイナミックに変わっていく様子だったり、また魚群には周囲にたいてい捕食者がいるので、群れに近づいてきたり。そういう動きがある被写体が好きです。

マンタも河田氏が好きな被写体の一つ(写真/河田啓奨氏)

――入賞作品に対して、粟国島でよく撮影されている審査員の清水淳先生から「こんなチャンスはなかなかありません」とコメントがありました。この作品のように撮れるときは珍しいのですね。

河田氏

ギンガメアジの群れとロウニンアジのコラボレーションなどが撮れると嬉しいんですが、この写真はギンガメアジの群れがいて、そこからちょっと離れたところにもう一つの群れがいて。ギンガメアジの群れのコラボが撮れるなと思ってポジショニングして撮影していたら、一斉に向こう側にいた大きな魚群がバッと動いた瞬間を撮影しました。確かにこのシーンには、いつでも出会えるわけではないと思います。

――河田さんが水中写真を撮るうえで、心がけていらっしゃることは何かありますか?

河田氏

群れの向きが揃う一瞬、動きのある一瞬、人の動きがきれいに映る一瞬にシャッターを切れるように努力しています。追いかけて撮るのは難しいので、魚の動きを先読みして、撮影することが多いですね。

――ギンガメアジなどの光りモノはライティングも難しいと思うのですが、何か工夫されていることはありますか?

河田氏

海の中の明るさも関わってくるので、その都度カメラの設定を変えたりはしています。余裕があるときだったら、撮りながらストロボの左右の光量を変えることもあります。例えば奥行きのある群れで、一番近いところには左側のストロボがちょうどいい具合に合っているけれど、奥まった部分の群れを照らすには右側を少し強くするなど、左右のストロボの光量は必ずしも一緒ではありませんね。

――現像されるときに、こだわっていることがあれば教えてください。

河田氏

一見青被りで青みがかって見える景色ですが、ストロボ撮影と現像で、魚やイソバナなど、生き物本来の色を青い海の中に出したいと思っています。撮影時に完璧な一枚を撮ろうとは、正直思っていません。今はLightroomなどで手軽に現像ができますから。