宮崎県の名産といえば宮崎牛や餃子、マンゴーなどが有名ですが、春と秋に旬を迎えるカツオも見逃せません。実は1994年から連続で「近海カツオ一本釣り漁獲量日本一」を誇る一大産地であり、カツオを使った郷土料理や独自のお土産などもたくさんあります。
では、なぜ宮崎はカツオ漁が盛んなのか。そしてどんなご当地グルメが味わえるのか。これらを知るべく現地に飛び、人気店などを取材。カツオのまちの最前線をレポートします。

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農業遺産にも登録。宮崎の近海カツオ一本釣り漁業とは

カツオ一本釣り漁業は、読んで字のごとくカツオを竿一本で釣り上げる漁のこと。効率的に大漁を狙えるまき網漁ではなく、一本釣りを採用する大きな理由は品質を落とさずにカツオを獲れるから。

2023年に、近海カツオ一本釣り漁業の漁獲高で日本一になった竜喜丸(たつよしまる)

カツオは一網打尽に獲ると網の中で暴れてぶつかり合い、体温上昇による身焼けなどを起こして味が劣化しやすい魚です。その点一本釣りであれば干渉がなく、傷もつきません。

また、カツオだけを狙うので他魚種の混獲がなく、乱獲になりにくいこともポイント。海洋環境にやさしいサステナブルなこのカツオ漁法を、日本で最も盛んに行っているのが宮崎県です。

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宮崎で獲れるカツオの歴史とおいしさ

宮崎におけるカツオ漁の歴史は古く、平安時代中期に編さんされた書物『延喜式』には「堅魚(カツオ)の貢納地に日向(ひゅうが)」との記載が。また、一本釣り漁は江戸時代中~後期に紀州藩(和歌山県)から飫肥(おび)藩(宮崎市中南部~日南市)に伝わったといわれ、現在最もカツオ漁の盛んな地域が日南(にちなん)市です。

日南の海岸線。ヤシの木が並ぶ「日南海岸ロードパーク」は、日南フェニックスロードの別名でも有名です

日南市は、沖合の日向灘やその近海に黒潮が流れ、カツオをはじめとした魚の名漁場となっています。漁師はこの恵まれた環境下で長年一本釣りを行い、さらにその漁船造りのため、地域では船材に適した飫肥杉の人工造林が取り組まれてきました。

日南市にある油津(あぶらつ)港。漁港として栄え、江戸時代以降は飫肥杉の積出港としても発展していきました

林業を活用した伝統漁業は農林水産省によって評価され、2021年に「日南かつお一本釣り漁業」は日本農業遺産に認定。地元ではこうした称賛を受けて、カツオによるまちおこしにも積極的に。

特製のタレに漬けたカツオの刺身をご飯にのせてダシやお茶をかけて味わう郷土料理「かつおめし」や、漬けカツオを自分で炙って食べる新ご当地グルメ「日南一本釣りカツオ炙り重」といった料理のメニュー化を励行したり、各地で消費をPRするイベントを開催したりと、宮崎県のカツオ熱は年々高まっています。

なお、日南におけるカツオ料理はそのまま刺身で食べるのがポピュラー。一方で、表面を炙るカツオたたきはそこまで食べません。理由は、漁港が近くカツオの鮮度が良いため炙る工程が不要だったからです。

一般的にカツオはアシ(鮮度の劣化)が早いといわれますが、一本釣りの新鮮なカツオを味わえる日南ではたたきが浸透しなかったともいえるでしょう。この記事ではあえてひと手間加えたカツオの地元グルメを紹介していますが、もし現地でカツオを味わう際は、刺身でもご賞味を。