のどかな山の “おやき村” で、具だくさんの縄文おやきを
村内各所から北アルプスを望む小川村にある「小川の庄 おやき村」。赤いポストも現役です
長野市と白馬村のほぼ中間に位置する小川村。細い峠道を上って到着するのは、標高約600mの山の上に立つ「小川の庄(おがわのしょう)おやき村」です。四方を山に囲まれたこの辺りは稲作に不向きな地域で、米にかわり栽培していた小麦を使っておやきが作られ、日々の食事として食べられてきました。
実はおやきの歴史は古く、ルーツは縄文時代にさかのぼるとか。小川村には縄文時代中期の大遺跡があり、木の実や雑穀を粉にして練って焼いた跡が発見されていて、それがおやきの原型だったといわれています。おやき村では、そんな長い歴史を持つおやきを「縄文おやき」と名付け、郷土の食文化を今に伝えています。
囲炉裏で焼いた昔ながらのおやきを提供しています。具材は毎日3種類
おやき村には、食堂やお土産売り場のほかに、竪穴式住居を模した「囲炉裏の館」があります。縄文時代に思いを馳せて作られた空間で、おやき作り体験も楽しめると聞き、早速行ってみました。
長い間、囲炉裏の煙で黒くいぶされた柱が趣を感じさせてくれます
「囲炉裏の館」では、離れのようになったほの暗い部屋の中央に、大きな囲炉裏が鎮座しています。現在では熱源や調理器具の変遷によってさまざまな製法が生まれたおやきですが、かつてこの地域で作られていたのは、囲炉裏で焼いた「焼きおやき」。ここでは、その昔ながらのおやきを焼く風景を見ることができます。焼きおやきの定番は「あずき」と「野沢菜」。季節限定で「うの花」や「ふきみそ」「なす」「青菜」などが登場します。
大きなほうろく鍋は、38年前の創業当時から使っているものだとか
具を包んで丸めたおやきは生地がやわらかいため、まずは囲炉裏に掛けた「ほうろく」とよばれる平たい鍋で焼き固めていきます。昔はその後、囲炉裏の灰の中におやきを入れて蒸し焼きにしていたことから、「灰焼きおやき」とよばれていたそう。現在では灰には入れず、鍋のまわりに配した「渡し」の上に置いて、じっくりと火を通していきます。
薄皮に具がたっぷり。あずき、野沢菜各1個300円、うの花(季節限定)1個350円
はみ出るほどたっぷりの具が入った、薄皮生地の焼きおやき。焼き目がパリッと香ばしいのが魅力です。おやき村では蒸したおやきも販売していて、焼きおやきと食べ比べすることもできます。どちらも温めて提供してくれます。
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囲炉裏端で焼きおやき作りを体験!
生地は耳たぶほどのやわらかさ
いよいよ、おやき作りに挑戦です! 作るのは、野沢菜とあずきを1つずつ。おやき村で長年おやき作りに携わっている地域のお母さんが教えてくれるので、初めてでも安心です。まずは、生地を丸く広げるところから。生地は、中力粉に水、塩、砂糖などを加えて練ったものを前もって用意しておいてくれます。手にくっつかないよう粉をつけながら、ほどよい大きさに広げていきます。
定番の野沢菜はうま味がたっぷり!
具材の野沢菜は、乳酸発酵してうま味が増した野沢菜漬けを使用。刻んで炒め、手作りの味噌で味付けしてあります。先ほど広げた生地に、スプーン2〜3杯ほどのせて、包んでいきます。
具があふれてしまいそうで、包むのはなかなか難しい!
指で生地をつまんで持ち上げ、口を閉じる。ここだけ薄くならないようにしましょう
両手で軽く丸めたら完成!
あずきも同様に包んでいく。粒あんも手作りで甘さ控えめ
鍋が大きくて、おやきがミニサイズに見えるほど
包んだおやきは、職人さんが囲炉裏で焼いてくれます。熱したほうろくの上にのせ、ひっくり返しながら10分ほど。焼き色を付けると同時に、やわらかい生地を焼き固める工程です。
渡しの上で焼いていきます。囲炉裏は冬でもかなりの暑さです
焼き固まったら渡しにのせて、さらに10分ほど。熾火(おきび)でゆっくり火を通します。体験スタートから焼き上がりまで30〜40分。ついに、おやきの完成です。
形は少しいびつだけれど、おいしいおやきが焼き上がりました
写真が体験で実際に作ったおやきです。こんがりと香ばしい焼き目をご覧あれ!あんこがはみ出しているのもご愛嬌。「あんこは水分が多いのでいいんです、上出来ですよ」と職人さんがやさしく話してくれました。
できたて、焼きたてを味わってみると、生地がパリッと歯切れよく、小麦粉のうま味が口の中に広がっていきます。この香ばしさは、思わず、焼きたてのナポリピッツァが脳裏に浮かびました。具を包んでいるからカルツォーネでしょうか?うま味満載の野沢菜や、あんこの素朴な甘さが薄皮の生地と調和して、本当においしい!囲炉裏の火の力は偉大です!
◾️おやき作り体験
時間:10時〜11時30分、13〜14時
料金:1人1200円(あずき、野沢菜各1つ。持ち帰りも可)
所要時間:焼き上がりまで30〜40分
予約方法:1週間前までに電話で要予約