艦も乗組員もヘロヘロ…!? 原子力潜水艦「長すぎる任務期間」に批判の声 ずーっと海底、「そりゃミス起こる」指摘も 英

あわや核弾頭ごと沈む 実際起きたヤバいトラブル

 そうした精神的にも肉体的に過酷な職場であるため、イギリス国内メディアでは、150日超えの長期間任務に関して「破滅的な危険性をはらんでいる」と批判する動きもあります。

 実際に2023年11月19日には、艦名は明かされていないものの、ヴァンガード級の1隻が、計器の異常で誤って最大深度として設定されている約500mに近い深度まで潜ってしまうというトラブルが発生。このときは、船体後部で任務についていたエンジニアが別の計器を見て異常を発見し、警報を鳴らしたことで、乗員140名の命を救い核弾頭48発を海に沈める危機を回避しました。

 直接的な原因は機械トラブルなものの、このとき乗組員の殆どは同艦が潜航せずに水平航行をしていると勘違いしていたそうです。そのため長期間任務も原因にあるのではないかと、批判の的となりました。

 冷戦終了の1990年頃から2024年現在に至るまで、イギリスは地上や空中で使用する核兵器を保有しておらず、核戦力は原子力潜水艦のみが担っています。戦略型原潜は、1960年代後半から必ず1隻を外洋に派遣しその核抑止力を維持していますが、度重なる予算削減により、その運用は年々厳しいものになっていました。

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降は防衛に関する考えも変化しつつありますが、ヴァンガード級が4隻しかないことには変わりありません。後継艦として建造中のドレッドノート級は、就役が2030年頃になるとみられています。状況の根本的な改善が図られるのは、同級が就役して以降になる可能性もあります。