女性ならではの登山の持ち物を解説|日帰り・宿泊登山を快適にするコツとは【山道具の選び方・使い方】

山に入れば、性別に関係なく、自分のことは自己責任。しかし、生理や体調面のトラブルなど、女性ならではの悩みは、状況に関係なくいつでも起こりうることです。

女性が快適な登山をするためには、適切な準備が必要。

登山ガイドの宮本佐知恵(みやもとさちえ)さんに監修いただき、女性ならではの悩みに焦点をあて、対処法と必要な持ち物を解説。

日帰り・宿泊と楽しみ方の幅広い登山シーンを考慮して、それぞれの観点から登山を快適に楽しむコツをお伝えします。

女性ならではの悩みといえば、やっぱり「生理」

『楽しみにしていた予定に生理が重なってしまった……』

そんな残念な出来事は、女性なら誰でも一度や二度は経験があるはず。生理中は体調を崩しやすい時期なので無理は禁物ですが、前々から決まっていたグループでの登山など、急に予定を変更できない場合もあります。

生理中に登山をする場合は、準備をしっかり整えて出かけましょう。山ではトイレが少なく、あったとしても水が使えない場合が多いため、生理に対して普段よりも万全な持ち物の準備が必要です。

生理中の登山では、タンポンや吸水ショーツを賢く取り入れよう

登る、降りる、しゃがむなど、下半身の動作が多い登山では、普段用のナプキンではズレやすく、擦れによるかぶれなどの心配があります。

特に山の中ではトイレが少なく、頻繁にナプキンを変えることもできないため、長時間の装着が可能なタンポンをナプキンと併用し、できるだけ経血が外に出ることを防ぐ、という対処法がおすすめです。

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アンダーウェアを、生理の時も履ける吸水ショーツに置き換えることで、登山中の動作の中でもズレや擦れを心配することなく、長時間快適に行動することができます。

持ち帰らなくてはいけない使用済みナプキンの量も減らすことができ、洗って繰り返し使えることも考慮すると経済的にもメリットがあります。

衛生面を考慮してウェットティッシュを持っていくと快適

デリケートゾーンの不快感は精神的なストレスだけでなく、痒みやかぶれの原因にもなります。山のトイレにウォシュレット機能などがついている可能性は限りなく低いため、デリケートゾーンの清潔を保つために、ウェットティッシュを携行するのがおすすめです。

デリケートゾーン専用の拭き取りシートもありますが、ノンアルコールのウェットティッシュや赤ちゃん向けおしりふきなどでも代用が可能です。

ただし、アルコール成分が含まれていたり、香りのついているものは注意が必要。使いすぎは逆効果になるため多用は避け、必要のあるときにのみ使用しましょう。

ウェットティッシュはデリケートゾーンだけでなく全身に使えるため、入浴できないテント泊や山小屋泊で身体を拭いたり、食事前に手を拭くなどにも応用できます。できるだけ持ち物を減らしたい登山時は、ひとつのアイテムにいくつかの役割を担ってもらいましょう。

ゴミは持ち帰ろう

山の上のトイレでは、使用済みのタンポンやナプキンは原則持ち帰りがルール。

ひとつひとつをナイロン袋に入れていくと持ち物もゴミの量も増えてしまうため、開け閉めが可能な大きめのジップロックに収納するのがおすすめです。密閉性が高いため匂いが気にならず、複数のゴミをひとつの袋に収納できるため管理がしやすくなります。

宿泊山行のときはどうするの?

ときには、宿泊を伴う登山に生理が重なってしまうことも。日をまたぐ山行の際には、必ず替えのショーツを持っていきましょう。1日につき1枚、予備でもう1枚あると安心です。日帰り登山であっても、下山後の着替えとして1枚持参しておくことがおすすめです。

「山×女性のカラダ」がテーマの対談記事もぜひ参考にされてみてください。経験談や対処法について、リアルな声を知ることができます。

YAMAP STORE記事を読む:吸水ショーツで登山に革命を!女性ハイカー&ランナーが語る『山×女性カラダ』のリアル

エマージェンシーキットの中に加えると◎

生理は体調次第で早まることもあります。予期せぬタイミングに備え、登山時に必ず携帯するエマージェンシーキットのなかに、ナプキンや吸水ショーツを入れておくと安心です。ナプキンは、非常時には怪我などの流血を抑えるガーゼの役割も果たしてくれます。

薬局で購入できる鎮痛剤は、頭痛だけでなく生理痛にも役立ちます。こちらも、生理かどうかに関わらず携帯しておくとよいでしょう。

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気になるアウトドア環境でのスキンケアとメイク

山は標高が高いため平地より紫外線が強く、稜線などの景色のよい場所に出れば強い風が吹くこともしばしば。肌は平地にいるよりもダメージを受けやすく、日焼けや乾燥による肌荒れに注意が必要です。

肌に塗布する化粧品やケア製品だけでなく、ウェアや小物などの身につける物も含めて、普段以上に念入りにケアを行いましょう。

化粧品は「紫外線対策」と「保湿」を念入りに

前述の通り、登山では日常生活よりも紫外線対策が重要です。日焼け止めは登山の必携品と考えて、忘れずに持って行きましょう。日焼け止めは、汗などで気付かぬうちに流れ落ちてしまうことがあるため、こまめに塗りなおすことも忘れずに。

顔や腕はもちろんですが、つい塗り忘れてしまいがちなのが「首」と「手の甲」。特に首は太陽光を浴びやすく、汗もかきやすい部位のため注意が必要です。

気温が低く乾燥しやすい山の上では、保湿に関しても平地より念入りに行う必要があります。保湿用のクリームや唇など局所に使えるワセリン等は小さい容器で持っていくと役に立ちます。

携行しやすさも考慮しよう

化粧品などを携行する場合には、持ち運びに適した量とサイズを意識しましょう。日常生活用のものはかさばりやすいため、小さめの別容器などに入れ替えてコンパクトにすると◎。

アウトドア環境下では、何ステップもある化粧やケアは面倒、せっかく持っていったとしても結局使わなかった、という経験者の声も。持っていく物はなるべく厳選して、最低限に抑えましょう。UPF付きのBBクリームと色付きのリップクリーム、アイブロウ程度でも十分です。

最近では、環境保護や携行性に配慮した「アウトドアコスメ」と呼ばれる専門のものもあるのでぜひチェックしてみてください。

宿泊山行でメイクをするならクレンジングシートを忘れずに

山の上での水は大変貴重なうえ、環境保護の観点から、水場で石鹸などの使用は控えるのが基本のマナー。液体系のクレンジング製品は漏れの不安もあるため、山でのメイク落としにはクレンジングシートがおすすめです。

翌日をさっぱりとした気分で迎えるためにも、持ち物リストに加えてみてください。

帽子やアームカバーで物理的な紫外線ケアを

日焼け止めクリームなども重要ですが、山でのもっともシンプルな日焼け対策は、肌の露出を減らし紫外線が肌に届くのを防ぐことです。衣類や小物で物理的に日陰の状態を作ることで、紫外線の影響を抑えることができ、体力の消耗を防ぐことにも役立ちます。

夏山などの湿度が高い環境で、どうしても長袖や長ズボンがつらいと感じるときには、半袖・半ズボンにアームカバーやタイツをあわせるスタイルもおすすめです。

登山では、帽子も必携品のひとつ。キャップやハットなど種類が豊富ですが、紫外線対策の観点ではハットが優勢。耳や首裏などの日頃意識しない部位をしっかりカバーできます。

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目の紫外線ケアも重要

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瞳の色が濃い日本人は、欧米人と比べると眩しさへの耐性が高いため、サングラスをかける習慣を怠りがちです。しかし、標高の高い場所は平地より紫外線が強いため、皮膚だけでなく目にもダメージを受けやすい特性があります。

紫外線を浴び続けてしまうことで角膜の炎症が起きてしまった場合、目の充血や乾燥などのトラブルが起きる可能性があるため、サングラスを装着することがおすすめです。