タイヤは定期的な交換が必要ですが、凍結路面などで装着するタイヤチェーンには寿命はあるのでしょうか。
「タイヤ」は定期交換必要… タイヤチェーンはどうなの?
タイヤは日常的に使用されることで摩耗したり、経年劣化でひび割れが起きたりする消耗パーツです。
一方で冬期かつ積雪や凍結路などでしか使用しないタイヤチェーンも、定期的な交換が必要なのでしょうか。
最近はスタッドレスの普及や高性能化に伴って、以前ほどタイヤチェーンを使う場面は減ってきています。
しかし、凍結路ではスタッドレスタイヤだけでは走行できないことも多く、またトラックやバスなどでは駆動力などの違いで、現在でもタイヤチェーンが必要な場面も多いのです。
さらに、地域によっては1年中ノーマルタイヤ(夏タイヤ)で過ごせる場合も多く、「年に数回の降雪のためにスタッドレスに履き替えたくない」と考えるユーザーにとっては、あくまで応急用としてタイヤチェーンを持っておくということもあるようです。
2024年2月5日から6日にかけては、南岸低気圧の影響で太平洋側の広い地域でも大雪となり、東京都心でも大雪警報が発令されたことで、あわててタイヤチェーンを装着したという人もいるでしょう。
そんなタイヤチェーンにはいくつか種類があります。
一般的な金属製の鎖で出来ている金属チェーンや、ゴムや樹脂製のプレートに金属ピンを埋め込んだ非金属チェーンに加え、近年では布製チェーンも市販されています。
非金属チェーンは走行音が静かで衝撃を吸収できるため乗り心地が良いことが特徴で、布製チェーンはタイヤに履かせるだけのため脱着が極めて楽で、さらに折りたたんで収納できるため、かさばらないというメリットがあります。
では、いずれのチェーンもタイヤのように定期的に交換が必要なのでしょうか。栃木県のT整備士に聞いてみました。
「金属系タイヤチェーンに明確な寿命は規定されていないのですが、寿命は5〜10年程度と言われています。これは使用頻度や使用状況によっても大きく変わってきます。
たとえば金属系は雪道や凍結路では非常に高い効果が得られますが、乾燥した舗装路では金属そのものが摩耗し損傷が激しくなります。
またトラックなど積載物が重い場合はさらに摩耗や劣化が進行しやすく、走行中に切れてしまうこともあります。金属系は走行距離に応じて摩耗具合が変化する、使うほどに寿命が縮まると言えます」
その一方で、非金属チェーンはベース部分が樹脂製ということもあって、JASAA(日本自動車交通安全用品協会)の基準では5年の継続使用が寿命と言われています。
これも実際の使用状況によってはもう少し短い可能性も高いのだとか。というのも樹脂は経年でも劣化してしまうため、使わなくても劣化は進行するのだそうです。
「布製チェーンは使った経験が少ないのですが、100km程度の走行距離が寿命と言われています。
目安としては縫製部分がほつれたり、擦れて穴が空いてしまったら寿命ですので要交換。走行距離によっては1回の使用で寿命を迎えてしまう可能性もあります。
長く使いたい方は、布製を選ばないほうが無難ですね」(T整備士)
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せっかく用意したチェーン どう長持ちさせる?
それぞれのタイヤチェーンにはメリットがある一方で、長く使うのであればやはり金属製チェーンが最終的には安全策と言えそうです。
ではこの金属製チェーンを長持ちさせる方法はあるのでしょうか。先出のT整備士は以下のように話します。
「摩耗次第で要交換となる金属系なので、路面に雪がなくなったら外す。そして雪道走行をした後は水洗いしておくといいでしょう。というのも、降雪の際に路面に散布される融雪剤の影響によって錆が発生しやすいのです。
たいていの方は使用後すぐにケースにしまったままにされると思いますが、この雪に溶けた融雪剤の塩分を十分に落としておかないとチェーン本体が錆びるだけでなく、固定するためのチェーンバンドの劣化も進めてしまいます。
バンドが切れてしまうとチェーン自体も固定できなくなってしまうため、使い終わったあとに綺麗にしておくと多少は長持ちすると思います」
融雪剤が撒かれた道路を走行したあとに、クルマの下部を洗浄する人は多いでしょうが、タイヤチェーンに手入れが必要なことを知っている人は少ないかもしれません。
普段雪の降らない太平洋側の都市部に住んでいる人は、こうした手入れの方法も確認しておいたほうが良いでしょう。
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タイヤチェーン自体に損傷が少なそうでも、だいたい5年を目安に交換するほうが耐久性を考慮すると安心できそうです。
またウインタースポーツなどで積雪地域に出かける予定のある人は、事前に装着の予行演習をしておくと実際に装着するときにスムーズかつ短時間で装着できるそうです。
なお、タイヤチェーンには大きな注意点があります。あくまで雪道や凍結路を無事に走行するための装備で、決して速度に強い構造になっていないことに留意が必要です。
時速40km程度までを目安に慎重に走行するのを心がけましょう。