時代に翻弄されたか、何となく影の薄い4代目S12シルビア

FJ20ETからCA18DETへとエンジンを更新した、S12シルビア後期クーペ1800ツインカムターボRS-X…この次が「アートフォース・シルビア」S13とは思えないが、1980年代半ばの日産デザインはおおむねこんな感じだった

かつては名車フェアレディの姉妹車で高級スポーツクーペ、次にロータリーを積みそこねたサニーベースのスペシャリティクーペ、3代目でようやくスポーツクーペとしてモータースポーツでも使われるようになった日産 シルビア。

MOBY編集部がAIに聞いた「30~50代のクルマ好きが気になる名車」にも歴代モデルがノミネートされるシルビアですが、1980年代半ばの4代目は、それなりにカッコよくてモータースポーツでも活躍した割に、なんとくなく記憶が薄い不遇なモデルでした。

円高ドル安の進行で、輸出される日本車の価格が跳ね上がった時期に登場したモデルに共通することですが、その逆境に奮起して5代目S13のヒットに繋がったと言えるかもしれません。

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リトラクタブルヘッドライトのカッコいいクーペ!のはずが

姉妹車ガゼールも2代目となるが、1986年のマイナーチェンジでシルビアへ統合(画像はFJ20ETを積むターボRS-X)

1983年8月にシルビアは姉妹車のガゼールともども4代目へとモデルチェンジ、先代S110よりややダウンサイジングしますが、ホイールベースやトレッドは拡大して走行性能を強化、ルーフは少し上がって居住性も向上させています。

リトラクタブルヘッドライトを採用し、ボディタイプはノッチバックの2ドアクーペと3ドアハッチバックの2種類でということから、同時期に登場したトヨタ スプリンタートレノ(AE85/86・1983年5月)の日産版とも言えますが、ベースはブルーバードで車格は上。

エンジンも環境対策では優れていたものの、動力性能の物足りなさやツインプラグによる経済性や静粛性の問題があったZ型に代わって1.8リッターSOHCのCA18系を中心に、ホットモデルのRS系グレードにはスカイラインと同じFJ20EとターボのFJ20ETを搭載(※)。

(※スカイラインRSターボCのインタークーラー付きFJ20ETは載せず、ガゼールにFJ20E搭載車はなし)

つまり「1980年代に流行ったスポーツカースタイル」そのものでしたが、大ヒットしたホンダ プレリュード(2代目)や、カローラレビンに次ぐスプリンタートレノ(AE85/86)に比べてファッションとしての魅力は薄かったらしく、人気は今ひとつでした。

また、時期的にプラザ合意(1985年)以降の円高ドル安体制で日本から輸出する自動車の価格高騰が直撃、安価な通勤用クーペ(セクレタリーカー)というより、価格とともに車格アップしたZカー(フェアレディZ)後継といえるポジションへ収まっています。

そのため、「ニッサン200SX」として販売した北米ではZ31フェアレディZと同じ3リッターV6のVG30E搭載車を追加するなど、車格を超えた過大な役割まで担いました。

当初の思惑と異なる方向性が求められ、販売も低迷したためか姉妹車のガゼールは1986年のマイナーチェンジで廃止、ガゼールを販売していた日産モーター店でも、日産サニー店同様にシルビアを販売しています。

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