日本で大人気のメルセデスAMG Gクラスの改良版に乗った!悪路も高速道路も快適にこなすレベルの高さを感じた

誰がその姿を見てもそれとわかるデザインアイデンティティを持つクルマはそう多くないが、Gクラスは例外である。さらに日本ではその特別感から異例の大ヒットを記録しており東京では見ない日はない。そんなGクラスのフェイスリフト版に早くも触れることができた。(Motor Magazine 2024年1月号より)

40年以上続くアイコニックなデザインで人気を博し続けるGクラス

アイコニックなデザインとは正確には伝統形式に基づいたデザインと理解すべきだが、一般的には誕生以来から長い間、基本的に変わることなく続く商品デザインとして認識される。たとえばコカ・コーラの瓶やコンバースのスニーカー、さらにはレイバンのウェイファーラーサングラスなどがある。自動車の世界ではポルシェ911やミニ、そしてメルセデスベンツのGクラスがそれにあたる。

このGクラスは1979年に軍用に設計されたオフロードモデルで、そのデザインは角ばった2ボックスボディに丸形のヘッドライトが付いた、まるで子供が描く自動車のようだった。そしてそれは変わることなく生産が続けられたが、2018年にはフルモデルチェンジ級の大改良が敢行された。その年の1月に開催されたデトロイトショーでアーノルド・シュワルツェネッガーによって紹介されたニューモデルはシャシやデジタルコクピットなどのアップデートは行われたが、外観はほとんど変わっていなかった。このGクラスはとくに日本で人気を博しており、輸出の出荷割り当てが整った2021年には5238台と記録的な販売成績を達成した。

しかし、ここ数年の電動化を急ぐメルセデスベンツの戦略下にあってGクラスも例外ではなく、同社はEQGと名付けられた電気自動車(BEV)のコンセプトモデルをジャパンモビリティショー2023で公開、翌24年には発売が予定されている。

それゆえに現行モデルの去就が注目されていたが、同社はBEVバージョンの発売後もしばらくエンジン車(ICE)を併売することを決定した。しかも同じディーラーに並ぶことが予想されるEQGに見劣りがしないようにフェイスリフトを行うことになった。いや正確に言えば24年に登場するICE搭載のGクラスのボディは、空力特性を考慮したEQGとほぼ同じデザインが与えられると予想されているのだ。

そして現在、ようやく完成に向けての最終開発を終えたGクラスの開発チームはこのICEモデルのプロトタイプを助手席から取材することを許してくれたのである。

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新しいG63はオフロード性能だけでなくオンロードも大きく進化

テストコースに現れた試乗車は全身にカムフラージュが施されていたが、半世紀近く経過した2ボックスの角ばったエクステリアデザインには大きな変化は見られなかった。ただしフロントグリルおよびヘッドライト周辺にはカムフラージュの厚化粧が施されており、このあたりにリファインメントが行われているようだ。同行した開発エンジニアも空力特性の向上が図られていると告白している。

Gクラスを象徴するドアグリップのオープナーボタンを押して助手席に乗り込むと、続いて目前に伝統の横一文字のアシストグリップが目に入る。しかしドライバー正面からの景色は一変しており、Sクラスから移植された大きな2枚のデジタルスクリーン、そしてマルチファンクションステアリングホイールが並び、MBUXインフォテインメントは音声入力も加わるなど大きく進化している。一方、振り返るとリアコンパートメントは明らかに居住性が改善され、リアシートのバックレストが分割式になるなど利便性も向上している。ちなみにインテリアの撮影は残念ながら許されなかった。

ところで、もっとも大きな変化はボンネットの下に見られる。すべてのエンジンには48Vのマイルドハイブリッドが装備され、V8エンジンは今回テストしたメルセデスAMGが手がけるG63専用となった。というのもV8をオーダーするオーナーのほとんどがAMGモデルを選択しているというからだ。

正確な数値は未発表だが、登坂路で体感した力強さから想像するに低速トルクの改善を含め若干のパワーアップは行われているはずだ。さらにオフロード走行で感銘したのは、新たにオプションで採用される油圧制御のダンパーを持ったアクティブライドコントロールである。

この最新のシャシによって各車輪のグリップと、トラクションが劇的に向上している。一方、アウトバーンでのクルージングはフラットで快適な乗り心地を提供している。フェイスリフト版のニューGクラスは、オフロードとオンロードでのパフォーマンスがどちらも高いレベルへ進化したのを感じた。

来年の夏以降には今回テストしたICE搭載のニューG63とBEVのEQGの両方がショールームに並ぶことになるが、オーナーにとっては非常に難しい選択を迫られることになりそうだ。


(文:木村好宏/写真:キムラ・オフィス)