「XKR-S」は、ジャガー史上最速で、しかもラグジュアリーなビッグキャットだった【10年ひと昔の新車】

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、ジャガー XKR-Sだ。

ジャガー XKR-S(2012年:車種追加)

昨年(編集部註:2011年)の東京モーターショーに出展された、ジャガー史上最速のモデルと呼ばれる、「XKR-S」。モーターショーの後に日本導入が発表されていたが、ようやく試乗する機会を得た。端正なクーペであるXKをベースに、スーパーチャージャーを装着したV8エンジンを搭載し、内外装とも専用パーツでドレスアップされている。

2006年に2代目にフルモデルチェンジされたジャガーの2+2クーペのXKは、2009年のフェイスリフトでジャガーのオリジナル開発となる5LのV8 直噴エンジンが搭載され、内外装に手が加えられた。とくに、インテリアではXFやXJに採用されたダイヤル式シフトセレクターに変更され、一層ラグジュアリー感を増している。XKにはフェイスリフト前の2007年からスーパーチャージャーを装着したXKR(これにはコンバーチブルも設定)がラインナップされていたが、2011年のジュネーブ モーターショーで今回試乗したXKR-Sが登場した。

XKRですらオーバースペックではないかといわれていたのだが、そのXKRをベースにしたXKR-Sは、さらにその上を行くパフォーマンスを誇ることになる。より低く、そしてスポーティながらもお洒落な空力パーツで武装されたエクステリアが目をひく。フロントまわりではカーボン製のスプリッターや縦長のサイドインテーク、リアまわりではカーボン製のウイングやバンパー下のディフューザーといった専用パーツを装着。

ソフトグレインレザーで覆われたインテリアはジャガーらしく上質な雰囲気だが、16ウエイの電動アジャストを備えたハイパフォーマンスシートを装着し、そのハイパフォーマンスぶりを感じさせてくれる。

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ワインディングロードでもハイウエイでも楽しめる

エンジンは、XKR用のものをさらにチューンアップして、パワースペックはXKRの510ps/625Nmに対して、XKR-Sは550ps/680Nmという驚異的な数値を達成している。このハイパワーに対応させるため足まわりもチューンされ、車高はXKRより10mm低められている。ちなみに、公称の最高速は300km/h、0→100km/h加速はわずか4.4秒とアナウンスされている。

走り出してみると、まず図太いけれども回転の上昇ともに甲高くなる排気音が感動的だ。しかも、このパワーユニットは「もっとアクセルを踏みつけろ!」と誘いかけてくるかのように感じさせる。もちろん、それほど踏まなくても十分以上に速いのだが。

乗り心地はスーパースポーツ特有の高速域を意識した締まりのあるものだが、突き上げ感の角がマイルドで拍子抜けするほどコンフォートなもの。これなら日常使いでもOKと感じた。ボディ剛性も高い。ワインディングロードで少しハードなコーナリングを試みても、またハイウエイをクルージングしても、ファン to ドライブが味わえるだろう。

それでも、スタビリティコントロールのダイナミックモードであるトラックDSCのソフトウエアを変更するなど、XKR-Sは公道よりもサーキットで走らせたほうが、より楽しめるクルマであることは間違いないだろう。しかし、そのパフォーマンスの片鱗を一般道でもしっかりと予感させてくれる乗り味には、脱帽するしかないなと感じさせてくれた。

●全長×全幅×全高:4795×1915×1310mm


●ホイールベース:2750mm


●車両重量:1810kg


●エンジン:V8 DOHC+S/C


●総排気量:4999cc


●最高出力:405kW(550ps)/6500rpm


●最大トルク:680Nm(69.3kgm)/3500rpm


●トランスミッション:6速AT


●駆動方式:FR


●燃料・タンク容量:プレミアム・71L


●JC08モード燃費:6.6km/L


●タイヤサイズ:前255/35ZR20、後295/30ZR20


●当時の車両価格(税込):1750万円