レクサス GSは、意のままの走りと他を圧倒するスタビリティを身につけていた【10年ひと昔の新車】

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、レクサス GSだ。

レクサス GS(2012年:4代目フルモデルチェンジ)

今年(編集部註:2012年)1月に発表されたGSだが、ハイブリッド車が3月に発売されてラインナップが完成した。今回試乗したのは、ハイブリッドのGS450h Fスポーツ。前:235/40R19、後:265/35R19という前後異サイズのタイヤを履き、Fスポーツ専用に設定されているLDH(レクサス ダイナミック ハンドリングシステム)を装備する。

新型のGSハイブリッドは、これまでのパワー志向から、より燃費を重視した方向にシフトした。JC08モード燃費では18.2km/Lと、このクラスのトップを行く。フーガ ハイブリッドの登場を意識したのか、HVHVリーディングカンパニーの威信をかけて、飛躍的に燃費を向上させた。

パワートレーンのシステムは、これまでと基本的には同じとはいうもののソフトウエアも含めてかなりが改良されている。ドライバビリティ、パフォーマンスともにGSシリーズのトップエンドにふさわしい。特徴的なのは手ごたえ感のある走りで、それは分厚いトルクの塊のような450hでも共通だ。バッテリー残量が十分であれば(日常使用でエンプティになっていることはない)、電気モーターだけの粛々した走りが可能で、生来の遮音性の高さと相まって極めて静かな走行ができる。

速度が上がるとエンジンが始動するが、モーター走行からの切り替えにまったくショックを感じない。さすがにコンフォート性能でナンバーワンを目指すレクサスだけある。加速性能は従来型GSハイブリッドの持っていたジェット機の離陸のような力感はない。むしろググッと力強い加速でいつの間にか高いスピードに達しているという感じだ。

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新型GSの真打ちと言えるハイブリッドの走り

実用燃費も従来型のGSハイブリッドと比較すると驚くほど良かった。特にエネルギー回生が早く、バッテリーのチャージも間髪入れず、効率の高さを伺わせる。得意とする市街地での燃費もかなり向上しているし、高速クルージングでも常に回生することでエネルギーを得ている。燃費の向上代は大きい。

乗り心地は腰のある柔らかさで、上下ダンピングにも優れており快適だ。直進はどっしりとした走り。ステアリングセンターがそれほど窮屈に絞められた感じもなく、ハンドルの座りが良いだけでなく、意識して左右に切ったときのスッキリと切れる感覚も清々しくて快適だ。操舵力はどちらかといえば重めの設定だが、これよりも重いクルマも数々あり、まず妥当というところだ。

またハイブリッド用バッテリーを縦積みにしたことで、ラゲッジルームが広くなり、ゴルフバッグが4個積めるようになった。それ以外にも重心位置を車体中心に近づけることで、旋回時の軽快感が高まっている。ハイブリッド化されても、新GSの持っているクルマとドライバーの一体感の高さは少しも損なわれていない。

車体剛性の高さ、シャシ バランスの良さ、それに加えてLDHのライントレース性の高さ、さらにハイブリッドの燃費とパフォーマンス。GSの魅力は、限りなく高まっていた。

●全長×全幅×全高:4850×1840×1455mm


●ホイールベース:2850mm


●車両重量:1860kg


●エンジン:V6 DOHC+モーター


●総排気量:3456cc


●最高出力:217kW(295ps)/6000rpm


●最大トルク:356Nm(36.3kgm)/4500rpm


●モーター最高出力:147kW(200ps)


●モーター最大トルク:275Nm(28.0kgm)


●トランスミッション:電気式無段変速機


●駆動方式:FR


●燃料・タンク容量:プレミアム・66L


●JC08モード燃費:18.2km/L


●タイヤサイズ:前235/40R19、後265/35R19


●当時の車両価格(税込):800万円