クルマに備わる「謎のNシフト」って何のため? AT車のDは前進、Rは後進だけど…Nは何?

クルマのシフトには「P(パーキング)」や「D(ドライブ)」「R(リバース)」などありますが、「N(ニュートラル)」にはどのような意味があるのでしょうか。

シフトの「N(ニュートラル)」ってなんのため?

クルマのエンジンからタイヤへと動力を伝えるためにトランスミッションは大切な役割を持っています。
 
 主にATとMTで構造が分けられますが、巷では「AT車のN(ニュートラル)はいつ使うの?」という声が聞かれます。
 
 実際にどのような場面で使われることが想定されるのでしょうか。

 ATとMTの違いは、ATは「オートマチックトランスミッション」というように機械が自動的にシフトチェンジをします。

 一方のMTは「マニュアルトランスミッション」となり、運転手が速度や路面状況に応じてシフトチェンジをするという部分が大きく異なります。

 またシフト操作でもATではレバー式、ボタン式、ダイヤル式と様々なパターンが存在。基本的には「P」「R」「N」「D」「L/B」という配列で構成されています。

「P(パーキング)」は駐車時に使用するものであり、クルマに乗っていない時やエンジンは掛けているけれど誰かを待っているなど、クルマを動かさない時に使用することが一般的です。

「N(ニュートラル)」は動力がどこにもつながっていない状態なので、アクセルを踏んでもエンジンからの動力がクルマには伝わりません。

「D(ドライブ)」はクルマを前進させるときに使用するもので、車種によっては「2/L/B」などセカンド、ローなどと呼ばれエンジンブレーキを強めにかけたい時などに使用します。

「R(リバース)」はクルマを後進させる際に使用するものです。

 一方MTでは基本的にレバー式となり、配列は6速の場合中央に「N(ニュートラル)」が存在し、「1-2-3-4-5-6」と「R」というカタチになっています。

 なおMTでシフトチェンジする際に、一度Nを通過する必要があり、1速と2速の間、3速と4速の間、5速と6速の間など中間位置にあります。

 これはスムーズにシフトチェンジを行うために、ショック(負担)を軽減する役割があります。

 ではATの場合、N(ニュートラル)は何のために必要なのでしょうか。

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ATに「N」が存在するワケとは…めちゃ重要だった!

 そんなATにおけるニュートラルですが、どのような役割があるのでしょうか。とある自動車整備士は次のように話します。

「AT車のニュートラルは、MT車ほど使用頻度が高くなく、日常的には気にも留めないかもしれません。

 しかし、シフトチェンジを行う際に、クルマに負担をかけないためにニュートラルは設定されています。

 配列の順番として、NはDとRの間に設定されていることが一般的です。

 前進する際に使用するDと後進する際のRを直接繋いでしまうと、ギアボックスに大きく負担がかかります。

 そうさせないためにも、必ず一度ニュートラルを経由するという仕組みになっています」

 このように、ギアに負担をかけないためというのは、マニュアルにおけるニュートラルと同じ意味合いとなります。

 また、ATのニュートラルにはもう1つの役割があり、故障時のけん引用の際に用いられます。

 けん引を行う際に、シフトをDやRに入れたままとなると、万が一誤作動を起こすと大きな事故につながる恐れがあります。

 しかし、ニュートラルはどこにも動力がつながっていないので、誤作動でエンジンが動いたとしても前にも後ろにも進みません。

※ ※ ※

 ATのニュートラルは、ほかにも役割があり、走行中に腕や肘などがシフトレバーに当たってしまった際にも、DとRの間にNがあることで、前進からいきなりバックに切り替わるなどのリスクを抑えられます。