免許の謎「暗証番号」何に使う? 忘れたらどうする? IC化で意外なメリットも 知られざる4桁数字の機能とは

運転免許証を新たに作る時や更新する時に暗証番号を設定しますが、この番号はいつ、どのような目的で使うのでしょうか。

一体何が違う? 「ICカード免許証」とは

 クルマの運転免許証には暗証番号が設定されていますが、この番号はどのような時に使うのでしょうか。また、暗証番号はどのような役割があるのでしょうか。

 クルマの運転免許証は、2007年からICカード化が始まり、2010年1月以降は、すべての都道府県でICカードの運転免許証が発行されています。

 この免許証には、顔写真の左あたりにICチップが埋め込まれています。免許証の大きさは以前とほぼ同じですが、ICチップが埋め込まれた分、やや厚みが増しています。

 ICカード化された背景には、主に免許証の偽造・変造防止の目的があります。

 かつて、精巧な偽造免許証が出回り、他人名義で銀行口座の開設や携帯電話の回線契約を行い、振り込め詐欺などに使われていました。

 しかしICカード化された現在は、こういった不正・犯罪行為が困難になっています。

 この、新たに加わったICチップには様々な情報が記録されています。氏名・本籍・免許種別などといった免許証に記載されている内容です。

 このうち本籍は、プライバシー保護の観点から免許証表面の記載欄が廃止され、ICチップのみに記録されています。

 しかし免許証がICカード化されたことで、データを意図しないタイミングで読み取られる「スキミング」のリスクが新たに生じることになります。

 そのため暗証番号を設定し、番号がないと記録内容を確認できないようにしています。

 暗証番号は、免許証を新しく作った時や更新時に、4桁の数字を自分で2つ設定します。

 1つ目の暗証番号で氏名、生年月日、運転免許証の交付日、有効期間、運転免許の種類、免許証番号が確認可能。2つ目の暗証番号でさらに本籍と顔写真を確認できます。

 ただ、この暗証番号を使う機会は、あるのでしょうか。

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暗証番号を使う機会は増えつつある

 暗証番号を利用する機会は、現状ではまだ多くないかもしれませんが、市町村や銀行などでの本人確認に用いられる機会が少しずつ増えています。

 例えば、三菱UFJ銀行では、スマートフォンを使って口座を開設する際、免許証のICチップを読み取ることで、本人確認書類の撮影や個人情報の入力の一部を省略できるといいます。

 キャッシュレス決済のPayPayも、免許証のICチップ読み取りとセルフィー撮影(いわゆる自撮り)で本人確認の手続きを可能としています。これにより従来3日から1週間程度かかっていた審査が、最短当日で完了するといったメリットがあります。

 そして、これらの手続きには暗証番号が必要になりますが、たまにしか使わない(もしくはまったく使わない)暗証番号を忘れてしまった場合は、どうすれば良いのでしょうか。

 ちなみに暗証番号が分からないからといって当てずっぽうで入力するのは禁物です。3回続けて間違えると、ICチップはロックされてしまいます。

 番号を忘れた場合の照会やロックの解除は、本人が免許証を持って、運転免許試験場や運転免許更新センター、警察署に出向く必要があります。

 なお、暗証番号の変更は、次回の免許証更新や再交付、各種免許取得時まで変更できません。設定時に発行される暗証番号を控えた小さな紙は、なくさないよう大切に保管しましょう。

※ ※ ※

 神奈川県警察は、免許証の暗証番号について、ウェブサイトで次のように説明しています。

「暗証番号1では運転免許証の券面に記載されている情報しか読み出せないので、券面に記載されている運転免許証番号を利用することが便利です」

「暗証番号2では顔画像と本籍をICチップから読み出せますので、本人しか知り得ない秘密番号を設定しましょう。推測されやすい生年月日、電話番号等から選び出すことは避け、キャッシュカードやクレジットカードの暗証番号とも異なる番号にしましょう」

 奈良県警察も、暗証番号1について「券面に記載されている情報しか読み出せないので、券面に記載されている運転免許証番号を利用することが便利です」と説明しており、例として赤い斜線が重なる真ん中の5~8桁目を挙げています。

 ちなみにこういったICチップに記録された情報は、NFC(近距離無線通信)機能のあるスマホがあれば自分でも確認できます。対応するアプリをインストールして暗証番号を入力し、スマホを免許証のICチップにかざすと、氏名や顔写真、本籍などの情報がスマホの画面に表示されます。