ルアーを頭上から振り抜きポイントに投げ込む「オーバーヘッドキャスト」はダイナミックで、バス釣りを始めた人ならまず、「これがスタンダードなキャスティング」と思い描く姿ではないでしょうか。しかし、たとえば野池でオカッパリからバスをねらうケースでは、キャスティングにさまざまな制約を感じた方も少なくないと思います。
野池の周囲には立ち木などの障害物が多く、オーバーヘッドキャストが難しい場面も少なくありません。またオーバーヘッドキャストは遠くをねらうには適していますが、ハリの穴を通すような正確なポイントをねらうには少々不向きです。狭い野池であれば、距離を犠牲にしても正確なポイントをねらいたいと思うケースもあるでしょう。そんな場合に適したキャスティングが、「ピッチング」と呼ばれるキャスティング方法です。

今回はこのテクニックの習得方法を考えてみましょう。

立ち木だらけのポイントでも有効なキャスティング
「ピッチング」とは?

「ピッチング」はオーバーヘッドキャストとは異なり、ロッドの下からルアーを投げ込み、ルアーの自重を利用してポイントにキャストする方法です。
手順としては、まずロッドを寝かせて持ち、ルアーがリールのハンドルの位置にくるくらいのラインを出して、空いている手にルアーを持ちます。


ちょうど腰のあたりくらいでロッドは水平に構え、同じくらいの高さでルアーを持ち、構えます

次にリールをフリーにし(ベイトリールのクラッチを切った状態、もしくは、スピニングリールのスプールを起こした状態)ラインを指で押さえたままルアーをリリースし、そのタイミングに合わせてロッドを立てます。すると、ルアーは振り子の原理で前に押し出され、ロッドの動きによってさらに前に進んでいきます。


ルアーを手から離し、自重で前に落とします。ルアーが真下に落ちないようにロッドを立て、ルアーの軌道をコントロールします

このタイミングでルアーの軌道が上方に向かないよう、最下点あたりでラインを抑えた指を外し、ラインを送り出しつつ、ルアーをねらったポイントに落とします。このキャスト方法であれば、周囲の障害物をあまり気にすることなく、自身のちょうど前方に難なくキャストを行うことができるわけです。
またルアーの軌道をコントロールしやすいため、オーバーヘッドキャストに比べより精度の高いポイントにキャストすることができます。


グリップエンドを外側に向け、手首を中心にロッドコントロールするように構えます

この最初の構えで、よくバスプロの方などがロッドを下に向けたところで構えているのを動画サイトなどで見かけることがあります。こうするとロッドからルアーにかかる力が強くなり、ルアーを遠くに飛ばすことができます。
ただし、ロッドを下に向けるとルアーは最初から低い軌道を描いて飛んでいくため、足元に雑草などが多く茂っているとキャストすることができません。

ロッドを下に向けた姿勢、地面と平行に構えた姿勢の、どちらの構えからでもキャストができるのが理想ですが、まずはルアーが振り子の原理で飛んでいく感覚を習得する意味で「ロッドを地面と平行にして構える」方法からトライすることをおススメします。

使用するタックルについてですが、ロッドはあましなりが出ない硬めのものが行いやすいでしょう。また最初は、スピニングリールを使ってトライするのがおススメです。

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ピッチング習得の第一歩
「まずは正面に構え、ロッドを立てるタイミングを計る!」

まずはキャスティングを感覚的に覚えましょう。あまり遠くをねらわず、3~4m先のターゲットをねらう練習をし、徐々に距離を伸ばしていきます。

一番のポイントとしてルアーの軌道が自分のまっすぐ前に向かうことを意識してください。構えるロッドの角度が少々傾くのは構いませんが、ロッドの先と片手に持ったルアーを結ぶ直線が、自分のまっすぐ前(=自分の身体の前・ねらいたい方向)を向いていることを意識します。
慣れてくれば違う方向に投げることもできますが、まずはまっすぐに前をねらえるようになりましょう。


ラインはちょうどルアーがリールのハンドルの位置にくるあたりの長さまで伸ばしておきます。ロッドの頂点とラインを結ぶ線が、ちょうど自分の真正面にまっすぐ伸びていることを意識しましょう

次にルアーをリリースするタイミング、およびロッドを立てるタイミングですが、ルアーがちょうど最下点を通過する寸前くらいを意識します。タイミングがうまく合うと、イイ感じでねらったポイントにルアーが飛んでいきます。ロッドを立てるのが速すぎるとルアーは上方を向いてしまい、あらぬ方向へ飛んでいってしまいます。逆に遅すぎると、ルアーにロッドの力が伝わらず、ねらったポイントよりもずっと手前の足下に近いところにポロっと落ちてしまいます。
ルアーが上向きに飛んでしまう現象は私も時々やらかしてしまうのですが、とくに軽めのワームを使った際に、ロッドを振るスピードと力加減が合わず発生してしまいがち…。これが意外にも上の方によく飛びます。そして立ち木に巻き付いたルアーは根掛かりよりも回収率が低く、ひじょうにいたたまれない気分になりますのでご注意を…(涙)。

フィールドで練習するのもいいですが、キャスティングが練習できる4~5m程度の広場やスペースがあれば、ルアーのかわりにシンカーのみで練習も可能です。フィールドに出掛ける前に、余裕を持ってキャスティング練習を行なってみるのもよいでしょう。