期待の新型クロスオーバーSUV、アズテック!だったが…

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アズテックの開発背景には、1990年代に入って初代のトヨタ RAV4やホンダ CR-Vといった乗用車ベースSUV、レクサスRX(当時の日本では初代トヨタ ハリアー)のようなラグジュアリー系SUVの台頭がありました。

世界中で同種の新型車が次々に開発されつつあり、GMでもミニバン用プラットフォームをベースにSUVを開発し、「ポンティアック」ブランドでアズテック、「ビュイック」ブランドでランデヴーという2種の姉妹車をデザイン違いで開発します。

ランデヴーがどちらかといえばレクサスRXよりのラグジュアリー系だったのに対し、アズテックは「X世代(ジェネレーションX)」と呼ばれる新時代の若者像──今だと「Z世代」でしょうか──を対象にした、ポンティアックらしいスポーツイメージが特徴。

日本車でいえば観音開きドアが特徴的なホンダ エレメントのように、先例にとらわれない若者の自由な発想を助けるクルマ、というポジションだったようで、ボディサイズは現在のレクサスNX以上RX未満と、アメリカンSUVとしては小型の部類です。

SUVでありながら実用性よりスポーティなデザイン重視、広いガラスエリアで後方視界を広くとったテールゲートを思い切って寝かせたファストバックスタイルなど、最新の60プリウスを思わせるものがあります。

さらに、リアシートを脱着可能な広いラゲッジルーム直結のテントを設けられるアウトドア仕様のオプションや、上下2分割テールゲートの下面を倒したところへ引き出して使える収納ボックスなど、アイデア満載グルマではありました。

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使い勝手はいいのに!貼られてしまった「醜い車」のレッテル

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しかし、2000年にアズテックが発売されるやいなや、自動車関連か否かに関わらず各メディアは大ブーイング!

「史上最悪」「醜いクルマ」「こんなのポンティアックじゃない」とひどい叩かれようで、確かにバランスという面では多少難があったかもしれませんが、そこまで寄ってたかってイジメなくても…というくらい、容赦がありません。

これだけひどいネガティブキャンペーンを貼られればユーザーも寄り付かず、採算ラインは3万台だったらしいのですが、ピークとなった2002年でも2万8,000台足らずと目標へは届かず、名誉回復の機会もないまま2005年に生産を終えてしまいました。

唯一の慰めは、コンサルティング企業のJDパワーが行った顧客満足度が2001年に行った調査で、小型SUV部門の1位に輝いたことですが、いくら購入したユーザーの満足度が高くとも、新規ユーザーが増えなければ、失敗作とされても仕方がありません。

原因はどうも伝統ある「ポンティアック」ブランドにあったようで、当時の評価を総合すると、「歴史と伝統あるブランドでこんなクルマを売るとはケシカラン!」と、識者の怒りを買っていたように思えます。

中央の太い柱で2つにバッサリと分ける大型フロントグリルなど、いかにもポンティアックらしいアイコンすら酷評されていますが、同時期のポンティアック ヴァイブ(日本ではトヨタ ヴォルツとして販売)のような顔にすれば満足だったのでしょうか?

ヘッドライト上のウインカーも「二階建て」などと酷評されましたが、後の日産 ジュークなどの先を行く先進的デザインを許さないほど、「ポンティアック」ブランドは保守派の牙城だったようです。

ならば古き良き名車をを作れば買ってくれるわけでもなく、GMがポンティアックを廃止したのも、そのブランド自体というより、古い価値観にばかりしがみつくユーザー層を見限った、ということなのでしょう。

アズテックは、そういう「将来の発展を阻害する要因」をあぶり出したという意味で存在意義のあったクルマですが、先進的なデザインや使い勝手の良さを考えると、それだけで済ませるには実にもったいない、「生まれるのが早すぎた名車」でした。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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