長~い連節バスも電動化! メルセデス・ベンツの最新電気バス 延びる航続距離 日本導入も視野か

ドイツの国際商用車ショー「IAA 2022」では、メルセデス・ベンツのEV仕様の新型路線バスも披露されました。同社のバスは車体を2台つないだ巨大な連節タイプが日本でも走っていますが、それも“電動化”します。

路線バスの電動化進めるメルセデス・ベンツ「eシターロ」

 2022年9月にドイツ・ハノーバーで開催された国際商用車ショー「IAA Transportation 2022」に出展され、注目を集めたバスがあります。メルセデス・ベンツから初公開された低床式電気バス「eCitaro(eシターロ)」です。

 eシターロのベースモデルとなる「シターロ」は、今年で誕生25周年を迎え、世界43か国の主要都市で走る路線バス車両です。日本では、車体を2台つなげた全長18m超の連節タイプ「シターロG」が導入されており、千葉県の幕張新都心で京成バスが10台以上運行しているほか、神奈中バスや西鉄バスなども走らせています。

 シターロと日本の一般的な路線バス車両と比べたとき、違いのひとつになるのが大きさです。日本の路線バスは大型でも車幅2500mmを超えませんが、シターロは2550mmのため、前出した日本のバス会社が運行する車両は、規制緩和の適用を受けています。なお、シターロは全長も約10mから最大15m、連節タイプでは約18mから21mに及ぶモデルもあり、だいぶ異なります。ただ、大きい分、車内スペースは広く、乗降しやすいように低床ノンステップ設計が標準採用されているなど、乗客の快適性は最大限、考慮されています。

 さて、今回登場したeシターロは、従来と同じく路線バスとしての活用をメインに開発されましたが、今後、国都市間輸送も視野に入れた長距離走行を実現するための各種工夫も施されていました。たとば、従来型よりもさらに多くの人を乗せるために車両の重量配分を改めたほか、モデルによってはバッテリー駆動走行(EV)と、燃料電池駆動走行(水素)を適宜切り替えられるようにしています。このように独自設計を採り入れ、さらに耐久性の高いコンポーネントも採用したことで、導入企業が運行開始後のランニングコストを比較的低く抑えられるよう、改良したそうです。

 これを実現するコア技術が、eシターロに搭載される「NMC 3」という次世代バッテリーです。

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航続距離は300km超えか

 NMC 3とは、「ニッケル・マンガン・コバルト酸・リチウム」の頭文字を採った略称です。ドイツのリチウムイオン電池製造企業であるアカソル社が手掛けます。

 従来の文庫本サイズの角型電池セルではなく、超小型の円筒形電池(直径21mm、高さ70mm)を採用し、セルの改良と電池パックの最適化、そして電池パック全体の重量エネルギー密度と体積エネルギー密度を向上させているのが特徴とのこと。これにより電池セル1個あたりの容量は4.93Ahとなり、同じ重量で約50%ものバッテリー容量増加につながっているといいます。

 そして、各バッテリーモジュール内には600個のバッテリーセルが搭載され、冷却回路に組み込まれたうえ、バッテリーの最適温度である約25℃にて格納されています。この温度管理は、最大限の寿命と効率的な充電を実現するのに重要とされており、最後に9つのバッテリーモジュールを組み合わせてバッテリーパックを形成するそうです。

 このバッテリーを搭載したeシターロは、単車(ソロバス)で最小4個、最大6個のバッテリーパックを搭載し、合計容量は最大588kWh。3~4個をルーフに、1~2個をエンジンルームに分散して設置します。

 連節車(アーティキュレートバス)なら、最小4個、最大7個のバッテリーパックを搭載し、合計容量は最大686kWh。フロントセクションに最大5個、構成によってはリアセクションとエンジンルームにそれぞれ1個を設置するそうです。

 平均的な条件下で、最大限の装備を有した車両の場合、単車・連節車とも220kmの走行距離が確保され、都市バスの日常的な走行距離を充分にまかなえるそうです。さらに良好な条件下では、航続距離は300kmを超えるといいます。