巡航ミサイル「トマホーク」導入が意味するものは? その性能に見る日本の守りかた

「巡航ミサイル」とひと口に言いますが、そのなかでも「トマホーク」はいくつか格上のものでしよう。これを日本が導入することを検討しています。そこには、単なる装備の導入以上の意味合いを見て取ることができます。

「トマホーク」導入にざわめく報道とSNS

 2022年10月末、日本政府が巡航ミサイル「トマホーク」の導入を検討していることが相次いで報道されました。いわく、2020年代後半に予定されている「12式地対艦誘導弾能力向上型」の配備開始が行われるまでの間を埋めるものとして、とのことです。

 この報道に対し、SNS上では大きな反響が見られました。簡単に言うと、「トマホーク」は現状、世界各国が保持している巡航ミサイル類のなかでもかなり格上のもので、これを配備することには大きな意義がともなうからです。

 そもそも「トマホーク」とは、1970年代にアメリカで開発が始まり、1980年代から配備が開始された巡航ミサイルです。「巡航ミサイル」とは、内蔵する小型のジェットエンジンによって飛行するミサイルのことで、よく北朝鮮が発射している弾道ミサイルとは異なり、低高度を比較的自由に飛行することが可能という特徴があります。そして数ある巡航ミサイルのなかでも、現在アメリカとイギリスのみが運用している「トマホーク」は、非常に高い知名度を誇っています。

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射程1600km超をピンポイント攻撃可能な巡航ミサイル

「トマホーク」の射程は1600km超と非常に長大で、直線距離でいえば、たとえば東京からウラジオストクがおよそ1000km超、中国の大連が1600km超、同じく上海が1700km超であることを鑑みると、その射程に収める範囲の広さをイメージできるでしょうか。

 これまで、1991(平成3)年の湾岸戦争や2003(平成15)年のイラク戦争、さらに最近では2017(平成29)年および2018年のアメリカ軍(2018年は米英仏による共同軍事作戦)によるシリア空軍基地に対する攻撃など、実戦にも数多く投入されています。

 また、誘導方式も特徴的で、慣性航法装置やGPS誘導装置に加え、飛翔予定地域の等高線地図情報(デジタルマップ)とレーダー高度計で計測された数値とを照合する「地形等高線照合装置(TERCOM)」、さらにあらかじめインプットされている目標周辺の画像情報と、ミサイルの光学センサーがとらえた実際の風景とを照合して目標を狙う「デジタル風景照合装置(DSMAC)」を備えています。

 これらにより、「トマホーク」は非常に高い精度のピンポイント攻撃を実施することが可能となっています。さらに、「トマホーク」の現行バージョンである「ブロック4(タクティカル・トマホーク)」では、データリンクにより飛行中に目標を変更したり、あるいは飛行ルートを即座に変更したりすることを可能にしたほか、位置が判明している目標に対してはGPS誘導による攻撃も可能となりました。加えて、目標上空を旋回することで、搭載する光学センサーが捉えた画像をデータリンクで司令部などに送信し、目標に与えた損害の程度を確認することもできます。

 そして、2021年にアメリカ海軍への納入が行われたばかりの最新バージョンである「ブロック5」では、航法装置やデータリンクが強化されているほか、その発展型である「ブロック5a」では、洋上の移動目標を攻撃するためのセンサーが追加され、艦艇などへの攻撃にも対応できるようになります。

 こうして簡単に特徴を並べただけでも、いかに「トマホーク」が一線級の装備であるかが見て取れるでしょう。