ウクライナに「冬将軍」もうすぐ到来 秋雨から泥濘→凍れる大地へ ロシア軍どうする?

力で押せなくなるため、エリート部隊の出番か?

 しかも酷寒の環境下では、赤外線暗視装置に代表される歩兵が携行できる軽便な視察機材で、車両類のエンジン熱やその排気、陣地内の暖房器具や焚火、はては人間の体温や煙草の火といった熱源を容易に見つけ出すことが可能です。

 そのため、「ジャベリン」対戦車ミサイルのような歩兵携行型火器を用いてのピンポイント攻撃を、車両だけでなく陣地などまで含め実施しやすくなるほか、スナイパーによる目標確認と狙撃も行いやすくなるでしょう。

 もちろん、戦車も戦闘に参加するでしょうが、酷寒の積雪中では「攻める戦車」よりも「守る戦車」のほうが圧倒的に有利です。

 ゆえに、もしかしたら積雪後の凍結したウクライナの大地での戦いは、従来の戦車をはじめとする戦闘車両主体ではなく、雪中を音もなく浸透して戦うハイテク装備を携行したエリート歩兵部隊の活躍の場となる可能性もあると筆者(白石 光:戦史研究家)は考えます。このような「人間力」主体の戦いがメインになると、個々の兵士の戦意が高い側が有利なのは当然といえるでしょう。

 とはいえ、大きな懸念もあります。将兵が防寒のため脆弱な仮設陣地にこもり、積雪の影響で車両部隊などが集中した状態になっていると、戦術核兵器がより効果的に使えるのです。ただ、筆者のこのような推察が杞憂で終わってくれることを祈っています。