Nシステムは実際役に立っているの?

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このように便利なシステムですが、設置しているだけで実際に世のため人のためになっているのかどうか気になるところです。

車検切れの走行車両が交通事故を引き起こす前に突き止めて捕まえるという点は評価できますが、盗難車両の発見に役割を果たしているのかどうかという点と、常に自動車を監視するプライバシーの側面で懸念点があります。

車検切れで走行している車両の発見に貢献している

平成29年度から国土交通省は街頭検査に可搬式のNシステムの導入を試験的に始めました。

この試行運転では計3,696台の車両ナンバーを読み取り、その結果うち7台が車検切れであったことが判明。公道走行が法律(道路運送車両法)で禁止されている車検切れ自動車を効率的に突き止める手段として期待が高まったと想像するのは容易いでしょう。

平成30年9月から平成31年3月の期間には全国35都道府県にて街頭検査が実施されました。43箇所で46回行われた結果、読取台数37,403台のうち43台の車検切れ走行車両を発見しています。

日本の法律では公道で運用されるすべての自動車は車検を取得しているという前提です。違反すると違反点数6点(つまり免許停止)、及び6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

行政処分・刑事処分のダブルパンチです。ましてや交通事故を起こせば莫大な賠償金が発生しますので、そのような事故を未然に防ぐことに貢献していると言えるでしょう。

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自動車盗難を防ぐのにも活躍した?

ウェブ上で公開されている「平成29年度行政事業レビューシート(警察庁)」というものを読みますと、事業(ここでは「自動車ナンバー自動読取装置の整備」)の概要や目的、予算額・執行額などについて言及されていて、事業目的の欄にも「自動車盗や自動車を利用した犯罪を検挙する」と掲げられています。

そこで、警察庁が公開している「犯罪統計資料 令和2年1~12月分【確定値】」を見てみましょう。2016年から2020年にかけての重要窃盗犯認知件数と重要窃盗犯検挙件数を表にすると次の通りとなりました。

認知件数 検挙件数
2016年(平成28年) 11,655 5,713
2017年 10,213 5,357
2018年 8,628 4,248
2019年 7,143 3,845
2020年 5,210 3,006

Nシステム導入(2018年)以前から自動車盗の認知件数は減少傾向にありました。

これを見る限りではシステムの導入が窃盗削減に貢献したと断定することは難しいでしょう。コロナウイルスの流行で窃盗団も自身の活動を控えたのか、2020年の自動車盗認知件数は2016年の半分以下でした。

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プライバシー保護の側面での懸念点

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盗難車両や車検切れの車両を発見できる点でNシステムは意義のあるものですが、各地に設置されているNシステムを通じて自分が今どこを走っているのかを常に監視されているとも解釈できます。

ナンバープレートの読み込みだけでなく顔認証システムと併用されれば(すでに運用されている可能性も)、車両の走行場所とそれを運転する人物・乗車している人物の監視も可能となるわけです。

Nシステムを使った速度取り締まりは今のところ行われていない

今のところ、Nシステムを使った速度取り締まりは行われていません。しかし今後、取り締まりを強化する等の理由で、私たちの知らないところで速度取り締まりに使われる可能性がないとは断定できないでしょう。

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Nシステムで捕まるケース

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Nシステムによって捕まる代表的な事例は、車検切れ車両(道路運送車両法違反)と盗難車両です。実際に、Nシステムが車検切れで一般道を走行していた車両を発見し、検挙へ導いた事例があります。

Nシステムがナンバープレートの情報を読み取ることができるのであれば、盗難車両の行方を探すことができるのではないかと思い浮かべますが、Nシステムを利用して盗難車両

を発見した事例を耳にすることは少なく、どちらかといえば最近ではSNSでの情報共有による有志による車両捜索のケースを見かけます。

違法・犯罪車両を発見するのに効果があるとされるNシステムですが、ナンバープレート情報を常に監視することになり、それがプライバシーの侵害にあたるのではないかという声も上がっています。