オーバーハングとは?
オーバーハングは車両最前部と前輪車軸中心部の間の距離、及び車両最後部と後輪車軸中心部の間の距離を表すものです。前者ならフロントオーバーハング、後者ならリアオーバーハングとなります。
オーバーハングの長短は外観や車両の運動性能に影響します。どちらもメリットとデメリットがあり、一長一短といったところです。
オーバーハングが短いとコンパクトな印象に
オーバーハングは外観へ影響します。オーバーハングの長い車両は全長が長い印象を、反対にオーバーハングが短いとコンパクトな印象を感じさせられます。
これに関連して、フロントオーバーハングが短ければ運転席から感覚を掴みやすいですし、単純に障害物と接触しにくくなります。反対にフロントオーバーハングが長いと位置関係を掴みにくいです。
リアオーバーハングが長いほどリアが振られやすい
ロール、ヨーイング、ピッチは走行中の自動車に発生する代表的な物理運動です。オーバーハングはこのうち、ヨーイングとピッチに影響します。
例えば、リアオーバーハングが長い自動車Aと短い自動車Bがカーブを曲がる時、自動車Aは自動車Bよりもリアが振られやすくなると考えられます。てこの原理が働き、オーバーハングが長いことで後方の重量が増すからです。
オーバーハングの長い自動車Cと短い自動車Dでピッチの例、具体的には直進状態でブレーキを踏んだ場合を考えると、CはDよりも大きく沈み込みます(大きい力がかかる)。こちらも、てこの原理と同じ仕組みです。
フロントオーバーハングが長いとクラッシャブルゾーンも多くなる
オーバーハングが長いということは、車両前端部とキャビンの間の距離が長いと考えることができます。これをフロントオーバーハングで考えると、クラッシャブルゾーンが多いということになり、それは正面衝突事故時の被害がキャビンまで及ぶ可能性を低減すると解釈できるでしょう。
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オーバーハングとホイールベースの関係
オーバーハングとホイールベースは車両の方向性を決めるうえで関係があります。
例えば、車内の空間をできるだけ広くしたい場合、キャビンの大きさに余裕を持たせるためにホイールベースを長くします。しかしホイールベースを長くすると車両全長も長くなります。
ホイールベースを長くしたうえにオーバーハングが長くなれば、車両の運動性能的にもあまりよろしくありません。ホイールベースを長くした分、オーバーハングを切り詰めると考えるのは、至って当然な帰結です。
FR車がまさにこれにあたります。フロントにあるエンジンの動力で後輪を駆動させなければならないので、縦置きトランスミッションにプロペラシャフト、リアデフなど、パワートレインの部品点数はFF車よりも多くなり、その結果車内が狭くなりがちです。